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或る夜の物語

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梶井基次郎 著『Kの昇天 ――或はKの溺死』 二次創作シリーズ
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読まれることの無かった手紙 (絶筆)

拝啓

その後体調はどうだい。元気に過ごしているかな。
君が退院した日、僕は悪夢の中にいて、最後の別れを言えなかったことをずっと後悔しているんだ。君に寂しい思いをさせてしまったことを申し訳なく思う。
僕はね、かなり参ってしまっている。頭痛は酷いし、咳が何分も止まらなくなることが増えた。
だけど、死ぬことについて暗い気持ちは不思議とないんだ。

君が現像してくれたフィルムを見たよ。
身体は高熱でいつ

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手紙A

拝啓
お手紙を読んで、やっぱり、と思いました。そして、「K君は月へ還った」と思いました。
あなたが、K君の溺死について、強い疑問を持っているように私には見えましたので、その解決の手がかりとして、また、K君の短い生涯の記録として、K君と私が出会った、あの不可思議な夜の出来事と、それに関する、私のやや突飛ともいえる考察についてお話しようと思います。
 
その頃、私は肺を悪くして、海沿いのA町の療養所に

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