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大人は新しいモノが怖い?ーVOCALOIDは「異質」だった

VOCALOIDと聞いて、何を思い浮かべますか?あるいは、どんな印象がありますか?

初音ミク・可不・書籍・音楽プロデューサー・HoneyWorks・さっぽろ雪まつり……様々な関連情報が溢れる現代ですが、数年前と今ではVOCALOIDというもののイメージはどのように変わったのでしょうか。

今回は、10年前の中学生事情と、現在の比較をしつつ、新しい物を受け入れる姿勢について考えていきます。

同世代の人には懐かしい話題も多いかもしれませんよ。

お昼の放送・放送曲のリクエスト

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小学生から高校生くらいまでの間、お昼の休み時間に校内放送があった人は多いのではないでしょうか?
各委員会のお知らせや部活の表彰通知、先生からの話……様々な内容と、定番の楽曲放送。
生徒や先生からのリクエストであったり、放送委員の選曲であったり、色々な楽曲が流れる時間でもありました。

放送曲のリクエスト

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放送する曲のリクエストは様々で、流行りのJ-popから洋楽、インディーズバンドなど、基本的に特に規制などはありませんでした。
しかし、10年ほど前に中学生だった人の中にはリクエストが却下された人もいると思います。筆者の中学校では特に厳しく規制されていたものがあります。

それが【VOCALOID楽曲】でした。

「VOCALOIDはダメ」理解と反抗

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どうして先生は「VOCALOID楽曲は全部放送できません」と言ったのか?
当時VOCALOID界隈で流行っていた楽曲の中には、作品公開の自由度から「くたばれPTA」「え?ああ、そう。」「パラジクロロベンゼン」など、多少刺激が強いと判断されても理解できるものもありました。
歌詞があまりにストレートなヘイトであったり、暴言であったり、あるいは性的な表現である場合や、ピー音が使われているものもありました。

「腐れ外道とチョコレゐト」のピノキオピーなど、作風が風刺的なボカロPも多かったですしね。

ただ、大人の言う「刺激が強い」「お昼の放送に適さない」という判断を理解できる一方で、「会いたい」「メルト」「天ノ弱」などの恋愛ソングまで適さないと言われているのがわからなくて悔しかった記憶があります。

楽譜に起こしたら、西野カナの曲だって、ryoの曲だって、同じくくりの恋愛ソングじゃないのか?と、VOCALOID好きの生徒で集まっては悶々としていました。

同時に、他校で「今日の放送でボカロ流れた!」という話も時々耳に入り、余計に疑問でした。

初音ミクが歌う「Tell Your World」がGoogleのCMに起用

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VOCALOID好きの中学生たちが悶々とする中、2011年の年末に大きなニュースが飛び込んできます。

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これは非常に大きな「きっかけ」でした。
子どもだけの主張や解釈ではなく、世界規模で認められたのだという大きな武器のように感じたのを覚えています。

とはいえ、結局学校側は私の学年の卒業まで「VOCALOIDはダメ」を撤回することはなかったのですが、それ以上に世間一般でのVOCALOIDに対する印象は、この出来事をきっかけに大きく変わっていきました。

VOCALOID音楽を作品として受け入れる時代

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(出典:MIKU EXPO 2021 ONLINE

Google ChromeのCMをきっかけに、VOCALOIDは日本国内のオタクの趣味という範囲から大きく飛躍し、2022年現在までに世界で認められる日本の技術・文化・クリエイティブ作品として認められていきました。

VOCALOIDは音声合成ソフトとしてだけでなく、「キャラクター・ボーカル・シリーズ」として、外見的な特徴やキャラクタープロフィールなどのある「個」として成立しています。
AIではないものの「意思を持った機械(というキャラクター)」はかなり異質で新しい物でした。
だから、「肯定的な人」「否定的な人」「関わりたくない人」が現れやすかった。

今にして思えば、学校側は「関わりたくない」だったのでしょうね。

よくわからない新しいモノは、前例からの予測などができず何があるかわからない。何かあっても、対応できる自信がない。ならば、関わらないでおこうというのは大人として賢明な判断ではあります。

ただ、それをそうと説明してくれていれば……と、今でも思ってしまうのも本音です。

当時の私たちには、「好きなものを理由もあいまいなままに否定された」としか受け止められなかったのです。

だから反抗したし、怒ったし、自分たちの好きなものをわかってほしかった。

「大人の事情」による、子どもたちの不安や不満とは多くが「関わりたくない大人側」と「説明が欲しい子ども側」の2つから成り立っているのかもしれませんね。

受け入れられていく文化

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10年前から大きく変わってきたVOCALOIDに対する世間の目。

世界的に認められる文化として浸透したVOCALOIDは、もはや否定的な人の方が少ないほどです。
音楽だけに留まらず、イラスト・立体造形・トーク・3Dライブパフォーマンス・プログラミング・グッズなどに広く展開し、優れた文化として受け入れられてきました。

今となっては、米津玄師やHoneyWorks、SuperCellなどの多くのメジャーアーティストがVOCALOID出身です。
メジャーデビューを夢見てVOCALOIDでの楽曲制作を始める人も増えました。

今はもうVOCALOIDは「関わりたくない新しいモノ」ではありません。実績のある、世界に通用する日本の文化の一つとなりました。

それゆえか、VOCALOID楽曲がお昼の放送で流れることも珍しくないようですね。

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「なぜ」を説明すること

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今回はVOCALOIDを学校のお昼の放送に紐づけて例として「新しいモノ」の受け入れについて書いてきましたが、これはいつの時代も、これからも同じような場面があり続けます。

AIを筆頭に新しいものを作ることが得意な日本。しかし一方で、学校や社会では「新しいモノ」に対する怖いという感情がありがちです。

そんな大人とは逆に、子どもたちは新しいモノにも興味をもち、好きになることもあります。

子どもが好きなものを曖昧に否定したり避けたりするのではなく、「新しいモノには慎重にならないといけないんだ」などと、きちんと言葉で説明することもまた、ルールを担う大人の責任なのではないでしょうか。

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