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働き方改革?:燕三条の町工場の一例

「働き方改革」の掛け声のもと、ものづくり企業でも長時間労働が問題視されるようになっています。
トクニ工業では、昨年、労働基準監督署の立ち入り検査があり、監督官から長時間労働に対する是正勧告がありました。
36協定を結んでいる企業は、所定労働時間(8時間)を超える残業時間の上限が設定されています。
・1日4時間
・1か月42時間
・1年320時間
上記を超える場合は、労働基準法に抵触するため、罰則の対象となります。

以前、燕三条地域には「産業カレンダー」という双方の商工会議所が調整し、稼働日の調整を図るものがありました。(近年三条市は撤退し、燕市は依然継続しています。)時代の変遷に合わせて休日日数は徐々に増え、2024年は110日になっています。

トクニ工業では2024年より、土曜日、日曜日休み(月曜日から金曜日の祝日は稼働日とする)の週休二日制を採用しています。5日間働いて、2日間休む。以前は産業カレンダーに倣って、祝日を休んだ代わりに土曜を稼働日とする勤務体制を採っていました。完全週休二日制にすることで働くリズムが安定し、作業の効率化にもつながっていると思われます。

基本、ものづくり企業は1個作ったものが単価として加算されていくため、多く作ればその分売り上げが上がってきます。産業機械を使って作業者がついて行うものづくりは、1個当たりの生産時間がおのずと決まってきます。1時間で60個できるものは、
8時間作業すると480個
9時間作業すると540個
10時間作業すると600個
と労働時間に比例して生産量が増加していきます。
仮に単価が100円であれば、
480個×100円=48,000円
540個×100円=54,000円
600個×100円=60,000円
となり、8時間働いた場合と10時間働いた場合では25%の売上増になります。
全てが利益となるわけではありませんが、利益も連動して増えますし、スタッフは残業手当を加算することができます。
賃金が上がらないと報道されていますが、単価が設定されているものづくり企業にとっては、生産量が企業の売上、労働者の賃金に直結してきます。
そのような労働条件下の中でのものづくり企業の「働き方改革」は以下のような可能性があります。
・残業手当が減った分の賃金を甘んじて受け入れる
・単価を上げるべく交渉する
・作業の効率化を図る
・利益率の高い仕事に仕事内容をシフトする
・協力会社に仕事を依頼し管理費で利益を上げる

・残業手当が減った分の賃金を甘んじて受け入れる
  嫌ですよね。理由がどうであれ賃金が減るのは納得できません。どうにかして、賃金減少を避けるべく何らかの対策を行う必要があります。

・単価を上げるべく交渉する
  取引企業との値上げ交渉。材料費の高騰や電気代の高騰などを理由に交渉する場合は、わりとスムーズに交渉は進み、値上げ希望が通ることがあります。ところが、人件費を上げたいという理由だけでの交渉は、何故か上手くいく場合が少ないようです。取引企業も人件費を上げているはずなのに。

・作業の効率化を図る
現行で1時間で60個できるものを、どのようにして65個、70個と増やすことができるか。手を早く動かすだけではなく、ワークを機械にセットする時間を短縮することが肝要です。また加工前のワーク、加工後のワークをどのように配置し次の工程に渡すか。次の工程の作業者が取り出しやすいワークの入れ方を考慮できているか。作業者間同士のコミュニケーションも必要になってきます。
同じように肝要となるのが、不良の発生を抑えること。不良0とはなりませんが、いかに早く不良を発見するか、不良対策・代替品の作成を迅速に進める事が出来るか。いたちごっこになってしまうのですが、不良対策の取り組みも必要になります。

・利益率の高い仕事に仕事内容をシフトする
  いきなり新規の案件に飛び移ることは、リスクが高いため日常的に新規案件への取り組み姿勢が重要になります。また、欲しいときに新しい仕事が見つかるとは限りません。往々にして、仕事量が空いた時に新規の仕事を探しても見つからず、一定期間が経ち仕事量が戻ってきたころに、以前アプローチしていた企業から新規の引き合いがきたりするものです。

・協力会社に仕事を依頼し管理費で利益を上げる
  一時的に協力会社に社内でやっていた仕事を出すことは、効果があるでしょう。しかし、それが慢性化してしまうと、社内人材の余剰が目につくようになり、人員整理に繋がりかねません。また、協力会社に仕事を依頼した管理費が、労働者の賃金アップに繋がるわけもなく、ただ会社の売上・利益に貢献するだけで終わってしまいます。

やはり、ものづくり企業にとっての「働き方改革」は、作業の効率化になるでしょう。一つ一つの工夫の積み重ね、スタッフ同士のコミュニケーションの円滑化が、成果を押し上げることになるでしょう。

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