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残業は利益を生むか:燕三条の町工場の一例

働き方改革によって残業時間が制限されるようになってきましたが、残業は利益を生むのでしょうか?

残業とは、所定労働時間(8時間)を超えて働くことを指します。
36協定を結んでいる企業は、所定労働時間(8時間)を超える残業時間の上限が設定されています。
・1日4時間
・1か月42時間
・1年320時間
上記を超える場合は、労働基準法に抵触するため、罰則の対象となります。
所定労働時間は週40時間(8時間×5日)×52週-最低5日間の週休休暇取得義務(40時間)で、年間2040時間になります。
残業時間の上限まで働くと2040時間+320時間=2360時間となります。
つまり働き方改革下での残業時間の割合は、多くても全労働時間の13.5%程度ということです。
一般的に製造業にとって労働時間は、その過多により生産量が比例していきますので、労働時間が多い方が生産量が増加し売り上げが増えていくことになります。半面、労働時間が少なければ、生産量は減少して売り上げも減少してしまいます。
トクニ工業の場合も働き方改革以前は、平均10時間労働で予定を立てていました。

利益とは、売り上げから製造原価を引いたものです。製造原価には材料費、労務費、外注加工費、経費(電気代・運賃など)があります。
今回は労務費、製造に携わるスタッフの賃金について分析します。
所定労働時間は、基本給で定められた賃金が支払われます。
残業時間は、基本給で定められた賃金の時間当たり25%の割増を支払わなければなりません。(1か月60時間以内の残業の場合)
つまり残業時間で製造するものは、人件費割り増し分製造原価が上昇し、利益は圧縮されることになります。
では通常、仕事の案件を見積もる場合、割増賃金分を見越して見積もっているわけではなく、通常の人件費を製造原価とみなして一定の利益を見越して見積もっていることになります。割増賃金分が出ないほど薄利な仕事をしていれば別ですが、利益の範囲内でさばいていることがほとんどです。

残業には2種類あります。
・毎日一定の時間行う残業
・特注案件などで急に忙しくなってやる残業

毎日一定の時間行う残業
残業が習慣化してしまうと残業しているという意識がなくなり、定時より1時間経過したから、今日の仕事は終わりにしよう、などと言うことになります。仕事の忙しい・暇の区別なく、時間を基準として行う残業ですから、暇なときはあえて生産能力を落として、定刻の残業時間まで仕事が途切れないように調整してしまいます。また、忙しくともそれ以上残業時間を増やすことができないため、納期遅れを出してしまったりもします。

特注案件などで急に忙しくなってやる残業
通常の仕事とは別案件で、納期的にタイトでボリュームある仕事を受ける場合もあります。通常の仕事量をはみ出すわけですから、残業時間を捻出し対応せざるをえません。但し、そのような仕事の案件を受ける際、当然忙しくなるのは分かっているのだから、見積もる際にも残業時間を含めた割増の製造原価で対応する事が出来ます。また、特注案件は一定の期間だけの対応なので、先が見えるところも通常の案件とは異なります。一定の期間だけ(例えば2か月限定)などの場合、その案件が終了しても取り立てて仕事のやりくりに悩む必要もありません。逆に一定の期間だけにもかかわらず、通常の仕事のように当てにしてしまうと、終了した際の対応に苦労してしまいます。

このように考えると、働き方改革下の製造業では、所定労働時間で一定の収益を上げ、特注案件などの対応に残業時間を割くように方向づけることが賢明だとおもいました。
このように仕事の案件を、スパッと二つに分けてとらえられるわけではありませんが、通常の仕事とイレギュラーな仕事の割合を大まかに定めておいた方が、柔軟に対応できるでしょう。
結局、労働時間が減った分は、スタッフの生産効率のアップと産業機械の生産能力向上に頼ることになります。長時間かけて、薄利な仕事から撤退し、利益を出すことのできる仕事に移っていくことも必要でしょう。

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