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町工場の棚卸し

一年に一回、決算の際に棚卸しをします。
主な項目としては、材料在庫と仕掛品になります。
数年おきに行われる税務調査の度に、実施項目が細かくなっていきます。
私どものような町工場にとっての棚卸しとは、決算書の貸借対照表に載せる棚卸資産の金額を算定するためのものです。個別項目として棚卸資産の計算内訳もあります。

まず材料在庫ですが、工場内にある材料在庫を材質・板厚・寸法に分け、数量を記入していきます。今回はおよそ110項目ありました。そして仕入伝票を基に購入価格を調べていきます。年間の仕入れ額のおよそ60%を材料費が占めるため、棚卸資産でも主要な部分となります。

近年、様々な物価の高騰に連動し鋼材の価格も順調に値上がりしています。製品の価格も原材料費の値上げに伴い上昇します。そして棚卸資産で計上される材料費も割高になっていきます。

次に仕掛品の計算になります。決算日に受注している案件がどれくらい進行しているか、それぞれの進行具合により資産価格を定め、棚卸表を作成していきます。一つの製品を作るのに複数の工程を通る必要があります。完成まで行きついていれば問題ないのですが、都合よく完成品ばかりではありません。加工の途中で決算を迎える製品が複数あります。それらをリストアップし進捗状況に応じて棚卸価格を決定していきます。

材料在庫、仕掛品、貯蔵品を合算し、棚卸資産としています。
例年、棚卸資産は年間の売上の1か月分くらいになります。
売上に占める棚卸資産の額が1か月ということは、材料を仕入れてから製品に加工し取引顧客に納品するまでおよそ2か月かかるということです。そして月締めで請求書を発行し、翌月回収できたとすると、現金化するまで3か月はかかるということです。120日の手形で集金した際には、さらに3か月現金化まで先送りされてしまいます。最も手形は廻して支払いに充てる場合がほとんどですので、廻っているうちに期日に近づいていくでしょう。

業種にもよると思いますが、棚卸資産・在庫が少ないにこしたことはありません。ジャストインタイムに代表されるように、製造業においても在庫を極力持たないことを是とする風潮はあります。きめられた製品を安定したペースで生産するような業種は、在庫を持たないことは良いことでしょうが、特注品や急ぎの案件の対応などを受け入れる場合、一定の材料在庫をストックしておく必要があります。
表面処理など協力工場での加工を必要とする場合、加工日数はかかってしまいますが、ステンレスで生地上がりの場合など、短納期対応が可能となります。また、材料在庫を抱えることで加工スタートを早めることもできます。
納期・品質・価格と製品の主要項目の一つ、迅速な納期対応をする上でも材料在庫は必要になります。

その他、決算期の処理では、スクラップ費用なども課題として挙がってきます。
継続して事業を進めていくかで、一年に一回区切りをつけてその時の会社の状態をチェックする意味でも、棚卸し作業は有意義なのかもしれません。

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