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Netflixの実写版「ワンピース」は、「ドラゴンボールの悪夢」を振り払うことができるか

いよいよ、実写版「ONE PIECE」のティザー映像が公開され、世界中で大きな注目が集まっています。

このティザー映像が公開されたのは、日本時間の早朝に開催されたNetflixのグローバルイベントである「TUDUM」の会場。
登壇者に、アーノルド・シュワルツェネッガーや、ガル・ガドットなど世界的な映画俳優がずらりと並ぶ豪華な世界イベントになります。

実写版「ONE PIECE」は錚々たる作品群が並ぶ中で、最後から3つ目という順番で発表。

世界に2億人以上の会員がいるNetflixのイベントならではで、世界中のファンが注目していたようで、発表直後にはイベントが開催されたブラジルだけでなく、フランスやスペインなど世界中でツイッターのトレンド1位や2位に入る結果になっていたようです。


映画「ONE PIECE FILM RED」も、フランスをはじめとして海外で話題になっていたように、世界中に「ONE PIECE」のファンがいることが良く分かる出来事と言えるでしょう。


「ドラゴンボールの悪夢」を振り払えるか

ただ、日本の漫画「ONE PIECE」のファンとして、気になるのは、やはり実写版「ONE PIECE」が漫画の世界観を破壊するような展開にならないかどうかという点でしょう。

実際に、今回の予告動画を紹介するメディアのツイートのコメント欄などを見て回ると、期待の声も多い一方で、批判的なコメントも多数見つけることができます。

特にハリウッドによる日本の漫画の実写映画化の歴史は、何度も日本の漫画ファンの期待を裏切る展開になっていることが、そうした批判コメントの背景にあるはずです。

何と言っても象徴的なのは、世界的にファンが多い漫画「ドラゴンボール」の実写映画である「DRAGONBALL EVOLUTION」でしょう。

この作品は、2009年に公開された「ドラゴンボール」のハリウッド版実写映画ですが、実写化する上で主人公の孫悟空が高校生という、原作とはまったく異なる世界設定が行われ、ファンから大きな批判を受けた上に、興行的にも大失敗。

映画の脚本家が7年経ってからファンに謝罪することも話題になるという、日本の漫画のハリウッド実写化に対するトラウマの源泉となっています。

今回の「ONE PIECE」の実写化においても、「ドラゴンボールの悪夢」をもとに否定的な記事を書いているメディアが少なくありません。


現在も悪夢の事例は続いている?

特にそうした批判的な意見の背景に証拠として横たわるのが、現在も日本の漫画の実写化においては、失敗事例が複数存在している点です。

直近で象徴的なのは、今回の実写版「ONE PIECE」にもゾロ役で出演する新田真剣佑氏が主役を務めた実写版「聖闘士星矢」である「聖闘士星矢 The Beginning」が興行的には失敗に終わってしまっている点でしょう。

また、今回実写版「ONE PIECE」を独占配信するNetflixでも、過去に実写版「カウボーイビバップ」を配信したものの、シーズン1であっさり打ち切りを発表し、ファンからの批判を集めた歴史があります。

こうした失敗事例の積み重ねが、日本の漫画やアニメファンの、ハリウッド実写化に対する本能的な嫌悪感につながっているというのが実態でしょう。


実写版「ONE PIECE」は映画「スーパーマリオ」に続けるか

ただ、過去に失敗しているからといって、永遠に成功できないということはもちろんありません。

象徴的なのは、今年映画「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が、30年前の実写映画の大失敗を乗り越えて、大成功を成し遂げている点です。

もちろん、この映画は実写ではなくCGアニメですので、今回の実写版「ONE PIECE」とは文脈が異なります。

ただ、今回成功した映画「スーパーマリオ」と実写版「ONE PIECE」の共通点と言えるのは、映画「スーパーマリオ」にゲーム開発者である宮本茂さんや任天堂がコミットしていたように、今回の実写版「ONE PIECE」には漫画原作者の尾田栄一郎さんがコミットしている点です。

特に、尾田栄一郎さんの「僕の寿命を計算してもONE PIECEが世界に向けて大きく踏み出せるチャンスはこれが最後だと思います。」というコメントが、非常に印象的です。
 

漫画やアニメと、実写版は違う作品として受け止めるべき?

もちろん、漫画「ONE PIECE」のファンからすると、当然漫画やアニメと実写はキャラクターが実際の人間という意味で、表情や動作などがまったく異なる形となり、違和感を感じる方は少なくないと思います。

ただ、現在世界中にファンをひろげ、映画の興行収入でトップランクに入る作品を連発している「マーベル」の「アベンジャーズ」などの作品群も、元々はアメリカの漫画を元にした作品が題材で、映画化に対してコアファンから否定的な意見もあった過程を乗り越えて現在の地位を築いています。

尾田栄一郎さんのコメントにもあるように、実写版「ONE PIECE」には相当な制作費が投入されているそうで、予告編もそれが十分伝わってくる作りになっています。

実写版「ONE PIECE」がNetflixを通じて世界に配信されることで、漫画やアニメにまったく興味を持たなかった層の人たちが、「ONE PIECE」の世界に触れてファンになってくれる可能性は十分あります。

実写版「ONE PIECE」が成功すれば、それがきっかけになって、日本の漫画コンテンツが、「マーベル」のように世界中にファンをもつ映像コンテンツ群になる可能性もあるはずです。

ある意味、私たち漫画やアニメのファンは、実写版「ONE PIECE」は世界の実写ファン向けの別作品として受け止めるべきなのかもしれません。

とにもかくにも、8月31日の配信スタートをドキドキしながら待ちたいと思います。

この記事は2023年6月18日Yahooニュース個人寄稿記事の全文転載です。


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