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➁#じゃない方のサポーターに迫る! FC徳島の魅力は!?

 徳島県吉野川市をホームタウンに、サッカーの地域リーグ・四国リーグで戦う「FC徳島」。サッカー知識ほぼゼロながらファンとなった記者が、チームの魅力や話題を紹介します。

 日本フットボールリーグ(JFL)昇格を目指して奮闘するチームにとって大きな力となるのが、サポーターたちの存在だ。その中で、スタンドからひときわ大きな声援を送っている男性が、「FC徳島コールリーダー」の尾池昌治さん(48)=吉野川市。2022年シーズンから太鼓をたたき、チャント(応援歌)で盛り上げる。

太鼓を叩き、選手を鼓舞する尾池さん=高知市の高知県立春野総合運動公園球技場

 22年4月17日に鳴市で行われたリーグ第3節で、選手として出場する職場の後輩の写真を撮りに行ったのが応援を始めたきっかけだった。FC徳島の試合を初めてスタンドで観戦し、「どんどん点が入って面白いのに、拍手もなく、誰も応援していなくてもったいないと感じた」と言う。

 同24日には鳴門市で天皇杯徳島県代表決定戦が控えていた。新型コロナウイルス禍で声を出しての応援ができないため、試合の帰りにリサイクルショップに寄り、観客の手拍子を促すために中古の太鼓を購入。もともとは黒色だったがFC徳島カラーの水色で塗ったそう。代表決定戦で太鼓デビューを果たし、今ではサポーターの象徴的な存在になっている。

FC徳島のイメージカラーの水色に塗られた太鼓

 現在は十数人のサポーターが試合に訪れている。会場で顔を合わせる中で自然とつながりが広がり、応援も太鼓が3台と鉦が1つに増えた。全国大会もあるため、「やはり徳島という地域色を出したい」と考え、阿波踊りで指揮者の役割も担う鉦を加えた。コロナ禍の前にもサポーターがいたものの、来られなくなった人が多いそうだ。そんな中で、17年の天皇杯から応援している人も、尾池さんとともに太鼓を叩いて選手に声を届けている。フラッグを振って応援する人もいる。

 チャントは11種ほど用意する中から、尾池さんが試合の状況に合わせ、歌詞を考えて選ぶ。例えばゴールを決めたり、ゴールチャンスをつくったりした選手には「選手コール」を、ゴールが決まれば「勝利を掴み取れ」を必ず歌い、さらに盛り上げる。前半戦終了の少し前からハーフタイムにかけてもチームを鼓舞する。

 23年6月に広島県福山市で行われた天皇杯2回戦の対戦相手は、J1のサンフレッチェ広島。向こうは約3000人のサポーターであるにも関わらず、FC徳島のサポーターがゴール裏から送るコールが選手の耳に届いていたという。

サポーターがイメージカラーの水色と藍色で使った水引

 サポーターの年代は幅広く、下は幼児から上は60代までおり、声援を送る以外にもさまざまな形でチームを支えている。スタンドで選手の写真をメインに撮影している人は、専用のSNSアカウントを作り、試合に出場した全員を1人ずつ投稿している。水色と藍色のイメージカラーで水引や観戦グッズを製作して販売している人も。それぞれに「FC徳島のことを知ってもらいたい」という思いから発信している。

 サポーターたちに「FC徳島の魅力は?」とずばり聞いてみると、口をそろえて「選手との距離の近さ!」と返ってきた。普通は試合で観るだけの存在の選手が、向こうから「こんにちは」とあいさつをしてくれ、試合後に「お疲れさま」と声を掛けられる。ゴールを決めると、選手がハイタッチをしに来てくれたり、試合勝利後にタオル回しをしたり、サポーターと共に喜びを分かち合ってくれる。選手とのバスツアー&BBQも開かれる。

選手の姿を写真に収めるサポーターたち=高知市の高知県立春野総合運動公園球技場

 この距離の近さが地域リーグの良さでもある。FC徳島の理念にも「世界一を目指し、ファンに愛されるチームとなる」を掲げている。地域のイベントや行事にも積極的に参加し、交流を深めている。

 さらにFC徳島には、ホームタウンである吉野川市内やスポンサーの企業などで働いている選手が多い。職場が同じだったり、仕事で選手とつながりがあったり、サッカー以外の場所でも選手との関わりがあるサポーターもいる。普段の様子とサッカーをしている時のギャップにひかれ、仕事をしながら目標に向かってサッカーをしている姿に心を動かされるのだそう。

試合後、選手たちを見送るサポーター

 「応援してもらえたら楽しさが分かる」と尾池さんは笑顔を浮かべる。最初は勇気を絞って1人で太鼓を叩き始めたが、長年のサポーターやちびっ子、それぞれに思いを持つ仲間が増えている。自分の住む街に選手もいて、身近な存在として定着しつつある。尾池さんは「映画ロッキーで名曲が流れる朝のランニングシーンのように、選手が街を走ればいろんな人から声を掛けられ、応援してもらえるようなチームになっていけば」と願う。

《一緒に応援しました!》
 サッカー知識ほぼゼロの記者も一緒に応援に参加させてもらった。鉦を任せてもらえたけれど、自分はまあまあのリズム音痴。応援したい気持ちは大いにあっても、申し訳ない気持ちが勝っていた。それでも、数あるチャントを覚えてくると、体が勝手にリズムを刻むようになっていた。最初は声を出すのも少し緊張したものの、もともと声出しは好きだったこともあって次第に慣れ、常連のサポーターの方にも「いい感じになってきたね」と言ってもらえるようになった。

 気づいたら元いた位置よりも、前に出ていた。応援したい気持ちから体が前のめりになり、みんなで声を出して応援することが病みつきになってきて、どうして応援したくなるのか身を持って体感できた。帰りは試合の余韻に浸って、車の中で思わずチャントを口ずさんでいた(笑)。

記者もサポーターと一緒に応援した=高知市の高知県立春野総合運動公園球技場


徳島新聞デジタル版でFC徳島の活動や選手を特集しています