見出し画像

〈夏休み企画 もしもフランス語が読めたなら〉  アルセーヌ・ルパン 強盗紳士 Arsène Lupin, le gentleman-cambrioleur

「 事においてもっともむずかしいことは 」とアルセーヌ・ルパンは言った 、「 たいていの場合、解決するのではなくてまず始めることなんだ 」

 Arsène Lupin, le gentleman-cambrioleur
アルセーヌ・ルパン 強盗紳士
( the gentleman burglar)
公敵ナンバーワン

『 Le bouchon de cristal ( The crystal stopper 水晶栓 ) 長編 
モーリス•ルブラン ( M.LeBlanc)作 
1912 リヴル・ド・ポシュ版  』


 英国のシャーロック・ホームズに対抗する形でパリの空の下
にあらわれた
じっさい、小説のなかでホームズと闘うようになった

日本人の心情、
たとえばヤクザの心情は傍から見る外国人からとらえがたく、歴史の風土も重なって、
フランスもそのようにルパンが現われ支持されたのも、フランス警察が国民の弾圧によく出動されたからかもしれない

フランス警察といえばジョセフ・フーシェ
フランス革命のとき、
王朝、共和国、ナポレオン帝政と世渡りをうまく立ち回り、
変わり身の早い冷血さで身の保全を守り
常に警察上層部で実権をにぎって、平穏なままに若い女性と余生を過ごしたジョセフ•フーシェ

ジョセフ•フーシェといえば、
日本のジョセフ•フーシェと言われた後藤田正晴
全共闘や過激派鎮圧で名を上げ、
キャリア官僚の権力争いのなかでトップに立ち、
カミソリ後藤田ともいわれた風貌から悪代官ともささやかれ、後に政治家に転身した

警察官なのに選挙違反者をたくさん出して、
人生最大の汚点ともいい官僚らしい言葉を残して、
警察の仕事しか知らない世間知らずのじぶんを返りみて、
反省しながらも議員になり、田中角栄の知恵袋として側近に連なっていた

記者の質問にビートたけしのことをビート君と言って、失笑も買った
後にテレビのなかで田中角栄のことを、
言葉をかみしめながらこう評していた
「角栄さんの娘さんは生まれたときからお姫様だったけど、あの人は地べたからはい上がって来たんだよ、分かるかねキミ」

その後藤田正晴の風貌から、
同じ体制側からの火盗改メ鬼平が連想され、
小説のなかでは捕り物の敵である犯罪者、雲霧仁左衛門はルパンを連想させて
明智小五郎の敵、怪人二十面相も頭に浮かんだ

( ちなみにカメレオンではなくてイグアナ芸でタレントを始めたタモリさんは処世術のうまさから、芸能界のジョセフ•フーシェともっぱらささやかれているらしい。ハ虫類は無駄な動きをしない、怒られるぞ、だからこの話はここだけにしてね )



 犯罪者ありながら探偵もするルパン、
犯罪者でなくても

公安の公敵ナンバーワンである
江戸幕府からみれば指名手配の坂本龍馬、
われわれからみたら痛快に思えて
戦前の軍部からみたらとても危険人物である大杉栄、
でもわかってみると愉快な人物だった

いろんな視点や人物がどこに立って
しゃべっているかでさまざまに感じられ
同じ冒険でもホームズは事件の謎を解く愉しみな冒険であり
いっぽうルパンはルパンの冒険のなかに事件の謎があり、
ホームズのように安心した身の上でなく、
犯罪者のなかに身を置いて明日がどうなるかわからない人生の冒険者だった

同じ世間からうとまれ、
体制から公敵扱いにされる革命家や過激派でなくとも、
単なるヤクザやマフィアと同じじゃないかとも分別ある大人から言われてもして
あたかもロマン主義があれば
現実主義が続いて現われるように推理小説でもリアルさを求めたがった
ルパンからメグレ警部へ、
明智小五郎から松本清張の社会派に移行していった

でも文学のなかの一部門、小説
その一要素ロマンは
小説のロマン、人生のロマンをなんだか魅惑的に感じさせた


話は変わるけど、
フランス語で、冒険は英語と同じく Aventure でも発音はちがって、アヴァンテュール と言う
フランス人にとって恋は冒険みたい

The woman with two smiles  二つの微笑みをもつ女 1932








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?