0章 はじめに―東京都構想とは―

我々は、商業や東京を考えることが大好きだ。
商業とは、生産と消費の間に立ち利益を出す業態のことを指す。両者のコミュニケーションを円滑にし、その価値を最大化する場が、商業施設だ。これまで多くの商業施設が栄枯盛衰を繰り返してきた。その時代、その場所によって、その存在価値は変化し続けている。我々は、商業施設が担う役割を考えることで、東京のあり方を惟みている。

東京五輪まで半年をきった今、高度経済成長期をなぞるかのように、間違いなく東京という都市は変化している。そこに住み、暮らしているとその変容に敏感になる。都市とは、人が集まり政治や経済、文化の中心となる場所のことだ。商業施設も常に人を集め、消費の中心地となり、都市に変化をもたらしてきた。すなわち、商業施設の役割を考えるとは変容する都市について考えることだ。

我々は小売の”王様”、百貨店に就職した。自社他社問わず商業施設をまわり、これからの商業施設はどこへ向かえばいいのか考え、居酒屋で数少ない仲間と語ってきた。いつしかそれだけではなく、思いを整理し、考えを表明し、行動を起こしたいと感じるようになった。

商業施設を通して変容する都市、東京とは何であるか。そして、これからどうなっていきたいか。これを問うていき続けるのだ。

我々はこれを『東京都構想』と名付けた。

我々は、何者でもない。しかし社会とは、文化とは、名もなき人々による行為の総体である。名もなき人々が考え行動し続けることで、歴史が紡がれてきたのだ。「東京都構想とは何か。」そう問われたら、我々は「それはまだ完成していない。そしてこれからも完成するものではない。」と答えるであろう。

これからの東京の歴史を我々も紡いでいきたい。


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