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【編集後記】なぜそこで買うのかについて(表参道ヒルズの配信を終えて)

 大学生の頃だっただろうか、初めて表参道ヒルズを訪れたとき、どこか海外の百貨店を思わせる雰囲気に、明らかに身の丈に合わないファッションブランドをつい手に取ってしまった。その時は難を逃れたが、もう少しアルバイトでお金を稼いでいたら、きっと今それは家宝となっていたことだろう。

 私の場合は購入に至らなかったが、人はある程度生活に余裕が出てくると、「どこで何を買ったか」ということにこだわり出すように思う。同じハイブランドであっても、銀座店で買うのと表参道ヒルズ店で買うのには差があるのだろう。もし大学生の私が、銀座で同じ店に出会っていたら、きっと入店すらしなかった(できなかった…)のではないかと思う。銀座が持つ緊張感がそうさせたに違いない。ただ、表参道の場合、特に表参道ヒルズの場合は、多少緊張感はあるが、それ以上に店を覗いてみたいという気持ちが湧いてくる。もちろん銀座の路面店と商業施設の1テナントとでは、入り易さも変わってくるが、それだけではないと思う。

 本編でも話した通り、表参道は個店と共に成長してきた。ハイブランドだけでなく、ビームスをはじめ、今もなお人々を魅了するセレクトショップが群雄割拠し、売れる店もあれば撤退する店もある。それが街の面白さとなっている。高級なだけでない、商売の原点とも言えるそんな活気が表参道の魅力の1つなのだ。

 表参道ヒルズはそんな街の面白さを継承する施設だ。スロープの傾きは、参道と同じに傾斜で設計され、1店1店のテナントが控えめなのも、前述した街の特徴に沿っているからなのだと思う。今思えば、その面白さに反応してしまったのは当然だったのかもしれない。今日も表参道ヒルズでは、誰かの財布の紐が、自然と緩んでいることだろう。 (T.Y)

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