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大学研究者が事業を提案する仕組み=大学提案!事業化された方へインタビューしました。

こんにちは!「大学の知見を都政課題の解決につなげる」大学提案担当です。

大学提案のインタビュー企画、第1回をお送りします。
ご登場いただくのは、東京都立大学の山添 誠司(やまぞえ せいじ)教授です。


世界が注目!脱炭素に向けた「DAC」とは

山添教授からは、「DACによるカーボンステーション開発事業」をご提案いただきました。

東京都は、2050年までの「ゼロエミッション東京」実現を目指しています。今回の山添教授のご提案は、その先駆けとなる技術を開発するものです。
事業名にあるDAC(Direct Air Capture)とは、大気から直接、二酸化炭素を吸収・回収する技術のこと。その技術を活用し、大気中にある二酸化炭素からエタノールなどの炭素資源を合成・供給する装置、「カーボンステーション」を開発することが、今回の事業です。

<ご提案いただいた事業の概要>

世界最速級のCO2吸収効率を達成するDACシステムの開発に成功されている山添教授。DACの研究のきっかけや事業への想い、今後の展望…などなど、たくさんのお話をお伺いしました!

世界最速級のCO2回収技術

―今回、提案いただいた事業のもととなる研究について教えてください。

山添 教授:もともと触媒を研究していて、その過程で空気中のCO2の吸着について興味を持ち、2019年からDACの研究をスタートしました。NEDOのプロジェクトをきっかけに、色々と基礎研究を進め、2020年にDACの分野で既存技術を大きく上回るCO2吸収効率を達成するシステムの開発に成功したところです。

基礎研究の成果を社会課題の解決に

―なぜ東京都の大学提案へ応募されたのでしょうか?

山添 教授:基礎研究だけでなく、研究した技術を世の中で活用していくには、その出口を考えないといけません。日本の政策として、2050年の「カーボンニュートラル」の実現を掲げている中で、DACは社会的意義はありますが、大気中から集めたCO2を何に使うのかなど、まだシステムが構築されていません。コストがかかる反面、利益が生まれるには10数年かかるかもしれません。東京は人口が多く、土地が限られているため、新たな技術により未来型の都市社会を構築していく必要があると思い、提案しました。

<インタビューの様子@東京都立大学>

10年、20年先の将来を見据えて

―この事業に込めた想いを教えてください。

山添 教授:CO2の削減に向けては、まずは工場などの排気ガス中のCO2をゼロにする必要があります。これまでの技術を応用し、しっかりと対応していく必要があります。そして、近い将来、必ず必要になるDAC。10年先、20年先を先取りして、有用なものが開発できれば、東京都や世の中の役に立てるのではないかと思っています。

<都知事から感謝状を贈呈される様子(令和6年2月)>

ブレイクタイム☕

―大切にされている言葉はありますか?

山添 教授:“習うより慣れろ”という言葉です。ある程度の知識がないと研究はできないので、勉強や調べることは大切ですが、知識がありすぎると、頭の中で結果を想像して、逆に挑戦できなくなってしまいます。固定観念を打ち破って、思い切ったアイデア・思いがけない成果を生み出すためには、「まずはチャレンジしてみる」ことが大事だと思っています。

今後に向けて

―今後、目指したいことは何かありますか?

山添 教授:DACでいえば、この10年くらいでDACの将来が決まると思っています。今後はDACに加え、触媒開発や二酸化炭素変換技術開発など、総合的に研究を進めていきたいと思っています。10年たてば、きっとまた新たな社会的な問題や課題が必ず出てくるはずなので、そうした新しい問題にもチャレンジしていきたいと思います。

<大切な研究装置をご紹介いただきました>

―10年後の東京をどのように展望されていますか?

山添 教授:エネルギーや環境問題を解決している東京になっていたいですね。今、東京都でも太陽光発電設備の設置などに力を入れていると思います。太陽光発電やDACなど、既存技術と新たな技術が融合し、うまく循環できるような世の中になればいいな、と期待しています。

―この事業により、その絵姿に向かって着実に歩みを進めることが期待できます。ありがとうございました!
 山添教授の今後のご活躍をお祈りしています!

都では、今年度も「大学研究者による事業提案制度」を実施中です。
事前相談は5/8まで、提案応募は5/31まで受付中です。
詳細は以下のページをご覧ください。ご応募お待ちしています!