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大学研究者が事業を提案する仕組み=大学提案!事業化された方へインタビューしました。

こんにちは!「大学の知見を東京都というフィールドで実証できる」大学提案担当です。

大学提案のインタビュー企画、第2回をお送りします。
ご登場いただくのは、早稲田大学の所 千晴(ところ ちはる)教授です。


資源循環と経済活動の両立に向けて

所教授からは、「小型リチウムイオン電池の安全・安心な処理フロー構築」事業をご提案いただきました。
リチウムイオン電池は、携帯、イヤホン、デジカメ、電動歯ブラシなどに活用される、とても便利なものです。しかし、資源循環(サーキュラーエコノミー)に向けた安全・安心な処理スキームが確立されておらず、使用後のごみ処理で、リチウムイオン電池を原因とした火災事故が発生するなどしています。そんな状況を打破し、資源循環システムを構築する事業となります。

<ご提案いただいた事業の概要>

東京都は、他の地域にはない特性や特徴をもっており、そのフィールドを活用することが大事と、東京出身の所教授。ご自身の研究内容や思い、今後の展望…などなど、たくさんのお話をお伺いしました!

今はまさに“資源循環”の時代

―この分野に興味を持たれた理由を教えてください。

所 教授:もともと環境工学に興味があり、資源循環という分野に出会いました。新型コロナの感染拡大以降、サプライチェーンの見直し、供給網の維持が注目を集めましたが、回収できる部品や材料を国内で循環させることができれば、資源の一定量を確保することが可能です。東京は、まさに“都市鉱山”ともいうべき、一大消費地であり、多くの人が暮らしています。そんな東京だからこそ、資源循環のポテンシャルを大いに秘めていると考えています。

大学提案は、東京都のフィールドを活かす絶好の機会

―なぜ東京都の大学提案への応募という選択をされたのでしょうか?

所 教授:研究開発費として、さまざまな競争的資金がありますが、企業等による実証事業を研究者がサポートする形は多いものの、研究者自身が実証事業を提案できる場はなかなかありません。その分、提案者側でチームを組み、しっかりと対応できる体制が必要ですが、東京という特別・特殊な実証フィールドで事業を進めることができるこの制度は、とても有意義なものだと感じています。

<インタビューの様子@早稲田大学>

「能動的な資源循環」ともいうべき社会

―この事業を進めていくうえで、大切にしたいことはありますか?

所 教授: 資源循環への意識です。これまでの企業活動は、安くていいものを届けることが重要視され、使用済となったものの処理は、その都度、対応してきたという状況でした。しかし、昨今のSDGsへの意識の高まりや、コロナ禍での経済安全保障の考え方などを背景に、製品の製造時から、処理方法などの資源循環をコンセプトとして取り入れる企業が増えてきています。環境施策が一段、ギアチェンジしたのだと思います。ゴミになった後の対策から、ゴミになる前の対策にシフトしていて、とてもおもしろいと思っています。

ー人々の意識変革も大事ですか?

所 教授:リチウムイオン電池がいったい何に使われているのか、知らない方も多いと思います。どのように捨てなければいけないのか、まずは理解するところから。丁寧に使う、使い終わったら回収する、そういったことが大切です。資源循環は、人々の意識無くして決して実現しません。そうした普及啓発にも力を入れて取り組んでいきたいと考えています。

<都知事から感謝状を贈呈される様子(令和6年2月)>

ブレイクタイム☕

―好きな言葉はありますか?

所 教授:以前、言われた好きな言葉として、“幸運の女神は 準備している者にしか 微笑まない”という言葉があります。私自信、常に準備をしておくことが大事だと考えており、とても気に入っています。

ー将来に訪れるであろう危機を予測し、しっかり準備する。まさに今の研究にも通じていることですね。

<大切な研究装置をご紹介いただきました>

Well-beingな社会に向けて

―10年後の東京をどのように展望されていますか?

所 教授:自分にとって何が幸せかを、考え直す必要があると思います。地球環境への負荷や、資源の枯渇を意識しなければいけない時代です。どういう生活がウェルビーイングなのか、我慢ではなく、環境にいいものを進んで生活に取り入れていく、そんな社会になっていることを期待しています。

―この事業により、その展望に向かって着実に歩みを進めることが期待できます。ありがとうございました!
 所教授の今後のご活躍をお祈りしています!

都では、今年度も「大学研究者による事業提案制度」を実施中です。
事前相談は5/8まで、提案応募は5/31まで受付中です。
詳細は以下のページをご覧ください。ご応募お待ちしています!