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東京都廃棄物埋立処分場におけるガス有効利用施設

[本稿は、令和3年2月、都庁内に配信したブログ内容です]

 環境局では、昭和62 年1 月から廃棄物埋立処分場で発生したメタンガスを回収し、ガス有効利用施設において発電を行っています。これにより二酸化炭素の25 倍の温室効果のあるメタンガスの排出を抑制するとともに、当事業所の受電電力量を低減させ地球温暖化防止に貢献しています。

 東京2020 オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う処分場周辺の各種工事により、平成29 年1 月から一時的に発電を休止していました。周辺工事が完了し、令和2 年11 月から発電を再開しましたので、当事業所のガス有効利用施設について紹介します。

1 中央防波堤外側処分場及び新海面処分場の概要

 環境局では、東京都廃棄物埋立処分場において、23 区及び東京二十三区清掃一部事務組合から委託を受けた廃棄物や都内の中小事業者が排出する廃棄物の埋立処分を行っています。都では、昭和2年から東京港内において廃棄物の埋立を行っており、現在の処分場は中央防波堤外側処分場及び新海面処分場です。
 中央防波堤外側処分場(その2)は、広さ199ha の処分場で昭和52 年10 月より埋立を開始し、令和元年度末現在、約5512 万トンを埋立処分しています。新海面処分場は、広さ319ha の処分場で平成10 年12 月より埋立を開始し、令和元年度末現在、約870 万トンを埋立処分しています。
この新海面処分場が東京港内最後の処分場となると考えられることから、今後は貴重な最終処分場としてできる限り⾧期間有効利用していくことが重要になっています。

2 処分場からのメタンガス発生と発電利用

 廃棄物処分場では、地中で生ごみ等が土壌微生物の働きにより腐敗する過程でメタンガス等の温室効果ガスが発生します。このメタンガスを地中から引き抜くことで、浸出水に溶ける地中のメタンガス量を減らし、埋立処分場の安定化を促進しています。

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    図 土壌微生物による埋立廃棄物の安定化の過程

 昭和62年1月からは、メタンガスを大気中に放出するだけでなく、一部を地中から引き抜き、貯留しガス有効利用施設で燃焼して発電を行っています(バイオマス発電)。その結果、大気に放出されるメタンガスが減り、地球温暖化防止にも貢献しています。また、発電した電力は処分場で発生した浸出水処理に利用しています。

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図 ガス発電フロー

 埋立処分された廃棄物中の有機分が分解され無機化していく過程で発生するメタンガスが原因となり火災や爆発が発生することを防ぐために、ガス抜き管を設置し大気放散して空気中に拡散しています(写真 ガス抜き管)。
 処分場内には100本以上のガス抜き管が設置されていますが、ガス発生量及び発生メタン濃度の高いガス抜き管10本を抽出し、集ガス配管(集ガスライン)に接続してガス有効利用施設までメタンガスを誘引し、発電機の燃料として使用しています。

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 マイクロガスタービンのシステムを簡単に説明すると、
①吸気した空気をコンプレッサで加圧し、燃焼室でその加圧空気を用いて燃料ガス(処分場由来のメタンガス!)を完全に燃やす
②その高温・高圧のガスでガスタービンの羽根(動翼)を回す
③その動翼と同軸に接続した発電機に回転力を与え電力を得る
 というメカニズムで構成されています。
 マイクロガスタービンは、コンパクトであり、シンプルな構造により設置スペースの最小化と保守性の向上が図られています。

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図 マイクロガスタービン発電機の構造

3 東京2020大会に伴う関連工事による休止と設備整備について

 ガス井戸のある中央防波堤外側埋立処分場と発電設備のあるガス有効利用施設とは、中央防波堤東西水路を隔てて設置されており、水路を横断する橋梁に添架された集ガス配管を通って送ガスしています。
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会会場となる「海の森水上競技場」の整備に伴い、中央防波堤東西水路の横断橋工事及び集ガス配管の一時撤去のため、平成29年1月から一時的に発電を休止していました。この休止期間を活用し、ガス有効利用施設における関連設備の点検整備や試運転調整を行いました。

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 埋立処分場において発生したメタンガスを誘引ブロアによりガス有効利用施設まで誘引しています。誘引したメタンガスはガスホルダー(1,000㎥)に貯め、発電機の燃料として活用しています。

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 設置から23年が経過していたガスホルダーは、ガス有効利用施設の稼働中に内部の状態を確認することは困難でした。埋立処分場で発生する硫化水素を含んだガスや結露に長期間さらされ、内面塗装の劣化や底板の発錆が想定されていました。また、東京湾に隣接する重塩害地域に位置しているため、外部の屋根歩廊や回り階段は発錆・腐食していました。
 そのため、底板の当て板補修、ドレンノズルの取り換え及びルーフベントの取り換え等を行い、機能回復を図りました。併せて、屋根歩廊等の取り換えを実施するなど、ガス貯留設備の大規模な改修工事を行いました。

 マイクロガスタービンについても、分解、点検、消耗部品の交換等の整備工事を行い、再稼働に向けて機器調整を行いました。令和3年2月1日現在、95kW・1台が稼働しています。残りの発電機は再開に向け、機器調整を行っています。

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4 おわりに

 近年、気候変動がもたらす影響は深刻さを増しており、かつてない変革が求められる歴史的転換点「パラダイムシフト」を迎えています。
東京都は令和元年12月、世界の平均気温上昇を1.5℃に抑えることを追及し、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現に向け、そのビジョンと具体的な取組、ロードマップをまとめた「ゼロエミッション東京戦略」を策定しました。
 本戦略では、①CO2排出量を削減する緩和策と、気候変動の影響を回避・軽減する適応策の総合的な展開、②資源利用に伴う都内外のCO2削減の本格的な着手、③これまで進めてきた省エネ・再エネ拡大施策や自動車環境対策をはじめ、あらゆる分野における施策の進化・加速という3つの視点を基本的な考えとしています。
 今回は環境局で実施している事業のうち、廃棄物埋立処分場から発生するメタンガスを使用したガス発電設備の紹介をさせていただきました。CO2排出のさらなる削減に貢献し、持続可能な社会を実現するため、今後もメタンガスの排出抑制・有効利用に取り組んでまいります。

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写真 ガス有効利用施設の全景