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東京における鉄道の混雑緩和に向けた取組~「新しい日常」の定着も見据えて~

[本稿は、令和2年6月に、都庁内に配信したブログ内容です]

 みなさんは、鉄道の混雑率をご存知でしょうか?「あ~、知ってる、知ってる~」と思ったあなた!この混雑率、何%だとどのくらいの混雑かご存知でしょうか?図1を見てみましょう。混雑率の目安として150%は「広げて楽に新聞を読める…」、180%は「折りたたむなど無理をすれば新聞を読める…」、200%は「週刊誌程度なら…」、もうスマホでしょ。確かにそうですが、そこじゃないんです。4月、5月の通勤時間帯の混雑状況を思い出してください。座席に一人おきに座る光景が見られたのではないでしょうか?混雑率で言いますと約50%程度といった状況です。昨今の鉄道の混雑は、新型コロナウイルス感染症の影響により緩和されましたが、緊急事態宣言の解除後は、以前の状況に少しずつ戻りつつあります(図2)。今後、感染症の流行前の状況まで戻ることも想定され、鉄道の混雑を何とか緩和しなければならないのです。

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   この鉄道の混雑緩和に対して、都市整備局は国や鉄道事業者とともに半世紀にわたり戦ってきています。今日においては、東京には海外主要都市にも類を見ない、稠密な鉄道ネットワークが形成されていますが、都市整備局は、この鉄道ネットワークの実現に向けた関係者との協議・調整、都市計画等の手続、整備費用の助成等を行っています。加えて、ホームドアの設置費用の助成、鉄道駅の改良に向けた関係者との協議・調整など、利用者の安全性や快適性を向上するための様々な取組を行っています。今回は、都が行っている鉄道の混雑緩和に向けた取組について紹介します。


Ⅰ 東京における鉄道の混雑状況

   東京圏の主要31区間の平均混雑率は、昭和50年には221%でしたが、新線建設、複々線化、長編成化などによる輸送力の増強により、平成30年には163%まで減少してきています(図3)国の答申では、この平均混雑率を150%以下にするとともに、個別路線の混雑率を180%以下にすることを目標値としていますが、混雑率180%を超える路線は11路線残っています。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のためにも、引き続き、混雑緩和に向けた取組を進めていく必要があります。

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Ⅱ 快適通勤の実現に向けた取組

    昨年12月に公表した「『未来の東京』戦略ビジョン」では、混雑の平準化といった快適通勤の実現などに資する取組の方向性を示しました。ハード対策としては、先ほど紹介した、新線建設、複々線化、長編成化などによる輸送力の増強であり、鉄道の混雑緩和に大きな効果をもたらす一方、長い時間と多くの費用を要します。そこで、快適通勤の実現に向け、オフピーク通勤などソフト対策も含め、ハード・ソフトの両面から対策を検討し、実施に結び付けていくこととしています。

(1) 鉄道ネットワークの整備・充実
  東京が持続的に成長し全ての世代が生き生きと活躍していくためには、誰もが快適に移動できるよう、都民の足となる鉄道ネットワークの更なる充実が重要です。地下鉄8号線や多摩都市モノレールなどの路線について、関係者との協議・調整を加速し、調整が整った路線から順次事業に着手し、快適通勤などに資する鉄道ネットワークの整備・充実を計画的に進めていきます(図4)

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(2)   運行システムの改良などによる輸送力強化等 

  輸送力強化等の観点から、先端技術も活用した車両や運行システムの改良(例えば、無線式列車制御システムの導入)など、中長期的に実現可能な施策を検討し、実施に結び付けていくこととしています(図5)。鉄道事業者、学識経験者等とともに研究会を立ち上げ、最新の技術動向等を踏まえた対策とその課題、実現可能性などについて検討しています。

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(3) スムーズビズ(時差Biz)の推進
   全ての人々が生き生きと働き、活躍できる社会の実現に向け、都民や事業者の交通行動の工夫やテレワークの推進、効率的な物流など、快適な通勤環境や企業の生産性の向上を図ることが必要です。また、東京2020大会の成功には、円滑な輸送の実現と経済活動の維持との両立を図ることが重要です。このため、東京2020大会の交通混雑緩和に資する交通需要マネジメント(TDM)やテレワーク、時差Biz(※)など、「スムーズビズ」の取組を推進し、大会期間中の交通混雑の緩和はもとより、新しいワークスタイルや企業活動の東京モデルの確立を目指しています(図6)

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Ⅲ 新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取組

    今般の新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた取組として、人と人との接触機会を8割減少させるため、鉄道駅等へのポスター掲示等を通じた外出自粛の呼び掛けや、朝の通勤時間帯の鉄道利用者数の推移の情報発信などを行っています(図7)。鉄道事業者においても、列車ごとの混雑状況をリアルタイムで情報提供する取組などを行っています。
また、東京都が展開してきた「スムーズビズ」の取組は、災害時の業務継続や感染拡大防止にも役立つこととなります。感染拡大防止と経済活動の維持との両立を図る取組として、企業等にテレワークや時差出勤などの一層の活用を呼びかけているところです。

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Ⅳ ポスト・コロナも見据えた「新しい日常」の定着に向けて

    新型コロナウイルス感染症の拡大防止と経済社会活動とが両立した新たな社会の構築、すなわち、「新しい日常」の定着に向けて、今、為すべき取組を果敢に推し進めていく必要があります。社会構造の変革を促し、未来の東京を力強く切り拓いていけるよう、スムーズビズの取組の一層の推進、さらには取組の定着に向け、引き続き、企業等への呼びかけ等を行っていきます。感染拡大防止に伴う鉄道利用者数への影響を今後も注視しつつ、快適通勤の実現に向け、ハード・ソフトの両面から取組を加速していきます。


                                                                                 (都市整備局都市基盤部)