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都営三田線におけるホームドアの更新

 東京都交通局は、都営地下鉄4線への全駅ホームドア整備を進め、公営交通事業者として先導的な役割を果たしてまいりました。その中でも三田線のホームドアは、平成12年度の設置から20年以上が経ち老朽化が進んできたこと、また、列車の車両数が6両編成から8両編成へ増加することへの対応が必要となったことから、営業中の路線では全国初となるホームドアの全面更新を計画しました。ホームドア更新整備が令和4年5月に完了しましたのでご紹介します。

1 更新工事の課題

 ホームドア本体は、仕様にもよりますが約400kgと重量物で、部品数も多く複雑な構造となっています。また、旧本体の撤去、新たな本体の設置のほか、列車ドアと連動開閉するための試験調整等も含め、更新工事には一定の期間が必要になります。三田線を利用されるお客様にとって、駅のホームにはホームドアが設置されていて転落や列車との接触事故の心配がなく、安全・安心な施設となっています。しかし、更新工事中にはホームドアが使用できなくなる期間が発生しますが、その間もホーム上の安全を確保しなければなりません。
 また同時に、三田線の8両化の運用開始に向けて、全駅で8両編成に対応したホームドアを整備する必要がありました。期限内に新ホームドアを稼働させるためには、遅滞なく工事を進捗させることが重要でした。
 今回の更新工事では、この課題を解決するために以下の対策に取り組みました。

2 仮設パイプ柵の利用による工事中のホーム上の安全確保

 ホームドアの更新工事には、基礎部分のホーム床の穴開け等、ホームドアの無い状況でないと行えない作業があります。そのため、これらの作業期間は既設のホームドアを撤去しなければなりませんが、営業中のホーム上の安全をいかに確保するか検討が必要でした。
 そこで、本工事では既設ホームドアの撤去後すぐに、同じ位置に仮設のパイプ柵(写真1)を設置することとしました。このパイプ柵によって乗降箇所以外はホーム上のお客様と列車とを物理的に隔て、線路への転落や列車との接触の危険性を減らすものです。また、乗降箇所についてもホーム監視員を配置することで、お客様へ注意喚起しつつ、転落時等には早急に対応できる体制を整えました。

写真1 仮設パイプ柵

 また、パイプ柵は構造が簡単で丈夫なことから、取り外し・取り付けを容易に行うことができます。営業中は常時ホーム上にパイプ柵を設置し、終車後の作業時だけパイプ柵を取り外すことで、お客様の安全を確保しつつ、効率よく作業を進めることができました。

3 基礎ベースの再使用による作業期間の短縮

 ホームドア本体をホーム上に堅固に据え付けるため、まずは土台となる基礎ベース(写真2)を設置します。

写真2 ホームドア基礎ベース

 更新工事では、既設の基礎ベースを取り外し、更新後のホームドア設置位置に合わせて制作した基礎ベースを取り付ける必要がありますが、この基礎ベースを更新せず再使用することで、工期の大幅な短縮を図りました。
 再使用が可能になった理由は大きく2つあります。
 まず1つは、既設の基礎ベースの強度が十分であったことです。既設の基礎ベースの劣化診断を実施したところ、表面に赤錆の発生が見られるものの、再使用に十分な強度があることが分かりました。
 既設の基礎ベースを再使用することによって、工事中のホームドアが使用できない期間を約10週間短縮することができました。
 もう1つは、6両編成の列車の停止位置が変更されなかったことに加え、8両編成の列車もドア位置が同じとなる停止位置となったことです。ホーム端部の固定柵の基礎ベースについても、将来の8両化を見込んだ配置としていたので、8両編成に対応したホームドア整備に当たり基礎ベースの設置位置を変更する必要がありませんでした。

4 おわりに

 本工事は平成30年に着手し、約4年かけて東京都が管理する三田線24駅の全てのホームドアを更新しました。(写真3,4)令和4年5月14日からは、三田線における8両編成の新型車両の運行が、予定通りスタートしました。

 写真3 ホームドア(更新前)          写真4 ホームドア(更新後)

 ホームドアは安全で安定した列車の運行を実現するにあたって有効な設備です。今後も適切に維持、管理及び更新を行い、お客様の安全と安心を確保していきます。