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東京2020大会に向けての新規恒久施設の紹介!               ☆世界最高水準の水泳場、東京アクアティクスセンター!          ☆国内初の人工コース、カヌー・スラロームセンター!

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[本稿は、令和2年8月、都庁内に配信したブログ内容です] 

オリンピック・パラリンピック準備局では、東京2020大会に向けて新規恒久施設等8会場を、整備してきました。
2014年の招致決定以降、延べ250人ほどの技術職(財務・港湾・建設の執行委任局含む)が、これまで経験したことのない規模や性能が求められる競技会場の整備に、都の技術職として培ったノウハウを惜しみなくつぎ込みながら幾多の困難を乗り越え、全ての新規恒久施設等の工事を無事に完了することができました。

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そこで今回は、8会場あるうち、サッカー場2面分以上の大屋根を地上で組み立ててから持ち上げる国内最大級の大屋根リフトアップ施工を施すなど、都としては最大規模の会場整備工事となった、世界最高水準の水泳場「東京アクアティクスセンター」と、毎秒4㎥の水を汲み上げるポンプ4基、激流(ホワイトウォーター)を生み出すことが出来る障害ブロック約3000個設置し、葛西臨海公園の隣接地に整備される国内初の人工コース、「カヌー・スラロームセンター」についてご紹介いたします。


《「東京アクアティクスセンター」整備の概要》

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東京アクアティクスセンター

東京アクアティクスセンター新設工事
~世界最高水準の水泳場を目指して~

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東京アクアティクスセンターメインプール(手前)、ダイビングプール(奥) 

令和2年2月、東京2020大会で世界中のスイマーが熱い泳ぎを披露する舞台、東京アクアティクスセンターが、江東区辰巳に竣工しました。観客席15,000席(仮設席含む)、3つのプール、更衣室などを有する、世界最高水準のプールです。工事費500億円超、本体工事期間2年11か月、延べ約47万人の作業員をかけた、都としては最大規模の会場整備工事です。
3つのプール(競泳等のメインプールとサブプール、飛込のダイビングプール)は、いずれも高い施工精度や設備水準を達成し、国際基準プールの公認を取得しています。
館内にも、世界最高水準の水泳場を目指した設備が随所に備わっています。飛込選手が室内練習に用いる、スポンジ状のブロックフォームを詰めた飛板付きのピットやトランポリンなどを備えた国内でも珍しい恒設の国際基準ドライランドや、アーティスティックスイミングの臨場感を演出するための、適切な音響設備の選定や内装への吸音材の採用などによる高い音響性能の実現などです。音響システムには、空気中と水中で音速が異なることを考慮に入れ、水中スピーカーと館内スピーカーの出力時刻を最大数秒ずらせるディレイ機能も備わっています。充実した競技環境のもとで、アスリートが最高のパフォーマンスを発揮することを期待します。
加えて、誰もが利用しやすい施設となるようアクセシビリティの確保や、再生可能エネルギーと省エネルギー設備の導入による環境への配慮にも積極的に取り組んだ施設となっています。

◆最高峰の施工技術をもって大規模工事に挑む
~屋根リフトアップ工法~

 このような大規模かつ高い性能が求められる施設の工事でしたが、施工上の特筆すべき特徴としては、メインアリーナ大屋根の施工にリフトアップ工法を採用したことが挙げられます。約2万㎡(サッカー場2面分以上)、約7,000t(東京タワー約2塔分)の大屋根を油圧ジャッキとPC鋼線により3段階で吊り上げる、国内最大級のリフトアップ工事となります。

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平成30年5月時点(リフトアップ前)

Point1:リフトアップ1回目(平成30年5月上旬)
・4.5mの高さの仮受けベント上で地組した屋根鉄骨を約1.7m吊り上げ、大屋根の荷重を仮受けベントから四隅の柱へと移行しました。
・吊り上げると鉄骨トラスの自重で中央部に最大約50cmの撓みが生じることを考慮し、逆に予めむくりをつけて地組し、大屋根を水平に保持しました。

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支柱とリフトアップ装置図

(提供:大林・東光・エルゴ・東熱異業種特定建設共同企業体)

Point2:リフトアップ2回目(平成30年7月上旬)
・高所作業車で側面等の仕上げ工事を行った後、大型映像装置等を大屋根から吊り下げる作業スペースを確保するために、約5m吊り上げました。

Point3:リフトアップ3回目(平成30年7月24日)
・完成した大屋根を上空まで約14m吊り上げました。
・大会2年前の節目に実施した吊り上げの模様は、報道陣にも公開して様々なメディアで発信され、大会機運の醸成にも一役担うことができました。
・その後、荷重を受ける四隅の支柱に積層ゴム支承等を取り付け、約0.5m下げて支柱頂部に定着させ施工完了としました。

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平成30年7月時点(リフトアップ3回目後)

屋根リフトアップ工法により、高所作業を大幅に減らすことができ、作業員の安全性及び作業性が向上するとともに、工期の短縮、品質の確保が可能となりました。
※ リフトアップを含めた工事の様子は、東京動画でもご覧いただくことができます!
https://tokyodouga.jp/u74qxyzu3ni.html

東京アクアティクスセンターは、東京2020大会後には、観客席を5,000席にするなどの改修が予定されています。
その後、日本水泳の中心となる世界最高水準の水泳場として、国際大会を含めて年間100大会の開催を目標として世界を目指すアスリートを育成するとともに、子供から高齢者まで、スポーツや健康増進に取り組むことができる場として運営されていくこととなっています。

《「カヌー・スラロームセンター」整備の概要》

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カヌー・スラロームセンター

~カヌー・スラロームセンターの概略について~

カヌー・スラロームセンターは、東京 2020 大会のカヌー(スラローム)の会場として、都立葛西臨海公園の隣接都有地に新しく整備された国内初の人工スラロームコースです。

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位置図

~カヌースラロームとはどんな競技なのか~

艇に乗ったクルーが激流コースで、パドルを漕いで吊るされたゲートを通過しながら一定距離間のタイムを競い合います。
全長約200mのコースに設けられた18~25個のゲートを番号順に通過しながらタイムを競い、その内6~7個のゲートは下流から上流に向かって通過していきます。

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競技イメージ図

〈コースレイアウト・施設について〉
カヌー・スラロームセンターのコースレイアウトについては、競技団体の規定する技術要件や協議に基づいて、各コースを配置しています。それではカヌー・スラロームセンターに、どのようなコース・施設があるかご紹介いたします。

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施設位置図

競技コース

競技コースは、コースを直線状に配置することにより、省スペース化を図るとともに、競技者の利き手の違いによる競技条件の差が生じないようにしています。
競技コース内に設置される障害ブロックは、水理模型実験や水流シミュレーションにより最適な位置に設置され、水路の拡幅部や底面に設けられた段差とあいまって、競技団体の技術要件を満たす「ホワイトウォーター」(複雑なうねりや渦のある人工の激流)を生み出しており、選手からも高い評価を得ています。

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障害ブロック(排水時)

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障害ブロック(給水時)

② ウォーミングアップコース、フィニッシュプール

競技コースに続き、ウォーミングアップコース、フィニッシュプールの順に配置しています。
ウォーミングアップコースは、大会後、初心者向けの体験教室やレクリエーション、水難救助訓練などの様々な利用を想定し、平たん部に配置しています。また、小型ポンプでこれらの利用に適した水流を生み出す方式とするとともに、競技コース、ウォーミングアップコース、フィニッシュプールを一連で配置することで、コース全体のコンパクト化を図っています。

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ウォーミングアップコース

③ ポンプ施設、スタートプール
スタートプールとフィニッシュプールには4.5mの高低差があることから、スタートプールに1基あたり毎秒4m3の水を汲み上げることが可能なポンプを4基設置し、競技コースにおける激流を生み出します。東京2020大会時は、4基のポンプのうち3基を稼働させ、毎秒12m3の水を競技コースに流下させ、1基は予備として故障等のトラブルに備えています。

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ラフタークレーンによるポンプ吊上げ状況

④ 管理棟、ろ過施設
管理棟の1階に艇庫、更衣室・トイレ、事務室等、2階に屋外デッキ、トレーニング室、会議室等を配置し、大会時には競技運営用として、大会後は都民が多目的に利用できる施設としています。
また、カヌー・スラロームセンターで使用する約18,000m3の水道水は、時間の経過により自然環境等の影響を受け水質が劣化することから、3台のろ過設備により安定的・継続的に水質を維持しています。

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管理棟

~施設特性に応じた対策~
カヌー・スラロームセンターの緩い砂層や粘性土層等の軟弱地盤に対応するため、スタートプール(ポンプやろ過施設を含む)や管理棟等においては、強固な杭基礎構造とした一方、その他競技コースやフィニッシュプールなどの施設は、地盤変形や損傷に対して修繕等で機能を維持・回復できる経済的な構造とするとともに、競技コースの一部においては、プレロード工法を採用し、構造物施工後の沈下の抑制を図っています。
  

カヌー・スラロームセンターは、国内初の人工スラロームコースを活用した様々な水上スポーツ・レジャーを楽しめる施設として、カヌー・スラロームをはじめとした様々なカヌー競技の国際大会、国内大会を積極的に誘致・開催するほか、安定した競技環境のもとで、水上競技の選手強化拠点として、強化練習会や日常的な練習の場を提供していきます。
また、カヌー教室等の水上スポーツ体験やラフティング等の水上レジャーの機会を提供するとともに、隣接する葛西臨海公園・葛西海浜公園と連携し、賑わいを創出していきます。

※ 工事の様子は、東京動画でもご覧いただくことができます!
https://tokyodouga.jp/triqqjylsa4.html

東京2020大会、さらに大会後も見据え、多くの皆様により快適にご利用いただけるよう、オリンピック・パラリンピック準備局では、今後も引き続き業務を推進していきます。
皆様、大会時は選手だけでなく施設にも注目し、大会後は施設の利用を心からお待ちしております!