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復興デジタルアーカイブの公開~関東大震災100年の取組~

 今年は1923年(大正12年)に発生した関東大震災から100年の節目の年です。東京都では、この機会を捉え、「TOKYO強靭化プロジェクト」の一環として各局で連携し、都民の防災意識向上を図っています。
 東京都都市整備局では、コンテンツの制作からイベントまで、様々な取組を展開していますが、今回は、市街地整備部企画課防災調整担当が7月21日(金)に公開した「復興デジタルアーカイブ」をご紹介します。

GIS(地理情報システム) の活用

 関東大震災の被害や震災後の復興など、当時の様子を分かりやすく都民に伝えるためには、視覚に訴えかけることが必要です。そこで国立映画アーカイブや江戸東京博物館、東京都復興記念館等から、当時の貴重な写真や動画などの資料を多数お借りしました。1,000点を超える資料の中から、「復興まちづくり」の視点で選別し、デジタルアーカイブを構築して発信していこう。そう決めたは良いものの、どのように構築するかが大きな課題でした。

「新橋駅(復興前)」 出典:東京都復興記念館所蔵資料
「銀座の街並み(復興後)」 出典:東京都復興記念館所蔵資料

 一般的なデジタルアーカイブというと、資料をジャンルごとに分けて、リストやサムネイルの一覧で、閲覧や検索ができる構成を思い浮かべます。例えば図書館等が所蔵資料を整理して公開するなら、この形が適していると考えられます。しかし、多くの都民に興味を持っていただくため、地図を鳥瞰的に眺めながら自由に操作し、写真や動画を見ることができるような仕組みにしたいと考えました。
 そこで着目したのが、GIS(地理情報システム)です。地図上の写真・動画が撮影された地点にプロットし、そこをクリックすると、ポップアップで表示される。このような仕組みで多数の資料をGIS上に落とし込み、アーカイブを構築することにしました。

「復興デジタルアーカイブ」の構成

 今回の「復興デジタルアーカイブ」の構成について、特徴的な部分をいくつかご紹介します。

3時代の三層構成

 震災当時の被災状況や復興、そして東京都が今まさに取り組んでいる防災都市づくりについて、一連のものとして伝えていくため、「大震災の被害編」「復興まちづくり編」「防災都市づくり編(現代)」という3時代の三層構成としました。また、3時代の同一地点の写真である「ヒストリー」を掲載するなど、この三層構成を生かした内容も盛り込んでいます。加えて、時代に合わせた図面や航空写真を地図上に落とし込み、より臨場感をもって、「復興デジタルアーカイブ」に入り込めるような工夫を行いました。

「京橋のヒストリー」の画像

レイヤーの活用

 GISの特徴として、位置情報を持たせるという機能がありますが、もうひとつの特徴的な機能としてレイヤーがあります。今回はこのレイヤーも活用し、例えば「大震災の被害編」では「火災延焼範囲」を、「防災都市づくり編(現代)」では「木造住宅密集地域」や「緊急輸送道路」などを地図上に表示することができるようにしました。閲覧者が任意にオンオフできるため、他の情報と重なり合うことなく、必要な情報だけを見やすく表示できます。これにより、一地点の情報だけでなく、各時代の面的な情報も盛り込むことができました。

「防災都市づくり編(現代)」のレイヤー「緊急輸送道路」

解説プレート

 GISの機能を十分に生かした構成とした一方で、それぞれの時代のエピソードなどについては、「解説プレート」という形で、画面右側に常時、項目が表示されるようにし、「さらに詳しく知りたい」という方へのニーズにも対応できるような創意を加えました。

解説プレート画像の一例

おわりに

 このようにGISの特性を最大限生かし、都民に向けて分かりやすく視覚的かつ、没入感を得られるような「復興デジタルアーカイブ」としました。また、構築のみに留まらず、イベントでPRを行うなど、アクセス数アップへの取組も推進した結果、総アクセス数は、11,000件を超え(令和5年9月26日現在)、多くの方にご覧いただいています。下段のリンクからアクセスできますので、ぜひご覧ください。

その他の取組

 東京都都市整備局では、今回ご紹介した「復興デジタルアーカイブ」の他にも、関東大震災の甚大な被害や震災後の後藤新平らの未来を見据えた復興まちづくりなどを分かりやすく伝える復興まちづくり動画「関東大震災100年~100年先も安心を目指して~」を公開するなど、様々な取組みを展開しています。詳しくは特設ホームページをご覧ください。
 9月1日は過ぎましたが、関東大震災100年の年はまだ続きます。引き続き、様々な施策を通じて、都民の防災意識向上を図っていきます。

東京都都市整備局関東大震災100年特設ホームページ
「復興まちづくり ~100年先も安心を目指して~」

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/tokyo-fukkou/index.html