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水道水の安全性とおいしさの更なる向上に向けて ~水道局環境検査職の仕事~

はじめに

 こんにちは。私は入都6年目で、現在は水道局の水質センターというところで水質検査などの仕事をしています。今回は、水道局の環境検査職の職員がどんな仕事をしているのかについてご紹介します。

水道局って?

 水道局の事業は、一言で言うと「川の水を処理して作った水道水をお客さまにお届けすること」です。
 水道水を作っているのは浄水場で、川から取り入れた水をいくつもの工程を重ねてきれいにし、安全でおいしい水道水を作る、いわば水の工場のようなところです。東京都水道局では、主に荒川や江戸川、多摩川から水を取り入れており、一日に浄水場で作っている水道水の量は、平均414万m3(R4年度時点)で、東京ドーム約3.4杯分にもなります。浄水場で作った水道水は、水道管を通して皆さまのところへお届けしています。

江戸川にある金町浄水場の取水塔

環境検査職って?

 水道局では、安全でおいしい高品質な水道水を安定してお届けするために、施設を整備・管理する土木職、設備職など様々な技術を専門とする職員が協力して働いていますが、その中で私たち環境検査職は、品質管理の役割を果たしています。
 環境検査職は、学生時代に学んだ化学や生物の知識を活かして仕事をしている人も多く、私も化学や生物を専攻していました。学生時代に研究で使用していた実験器具や分析機器に触れることもあり、当時を思い出して懐かしくなります。
 環境検査職の職員数は、都庁全体では1%程度と少ないですが、水道局では100人以上が在籍しています。

トリハロメタンなど微量な化学物質を測定する分析機器
11台の分析機器が設置された試験室

水質センターの仕事

 私が勤務している水質センターでは、水道水の安全性確認や、水質事故対応、浄水処理方法の検討などをしています。

(1)水道水の安全性確認

 水道水が満たすべき水質基準や検査方法は、法律などで決まっており、約220項目に上ります。加えて水道局では、国の基準よりも高いレベルの「おいしさに関する水質目標」を独自に設定しており、合計283項目(R5年度時点)を検査することで、水道水の安全性を確保しています。また、都内100か所以上の代表地点に自動水質計器を設置し、水道水の水質を24時間365日監視しています。

水道局で定期的に行う水質検査の内容(R5年度)
自動水質計器の定期点検により、計測精度を常に確保

(2)水質事故対応

 水道水や川の水の異常が通報された場合、現場に急行し、原因や影響範囲を調査します。状況に応じて水質試験車も現場に出動し、採取した水をその場で分析したり、水質センターに持ち帰ったりして臨機応変に対応します。
 こうして得られた結果を浄水場や他の自治体に提供することで、浄水処理に役立てられています。

通報現場や周辺の川での採水
水質事故対応の拠点となる水質試験車
水質試験車内での分析作業

(3)浄水処理方法の検討

 意外に感じるかもしれませんが、水道水の原料である川の水は日々変化します。高品質な水道水を毎日お届けするために、浄水場では刻々と変化する水質に応じて、水をきれいにするための薬品注入量などの処理条件をきめ細かく変更しています。また、近年はテロなど人為的リスクへの備えも求められており、私たち環境検査職は、浄水場でどのような条件にすればうまく処理できるのかを検討しています。

検査課生物検査担当の仕事

 水質センターでは、蛇口や浄水場、川やダムなど様々な場所の水質を検査しています。現在、私は検査課生物検査担当に所属しており、細菌検査のほか、プランクトンやウイルスなどの調査をしています。また、これらの試験に加えて、臨時の調査を行うこともあります。

水質基準の一つである一般細菌の検査
ペトリ皿(②)に試料(①)と培地(③)を入れて混ぜ、固めてから培養します(④)

 生物検査担当の仕事のなかで、個人的に一番難しいと感じているのは、水中のプランクトンを顕微鏡で観察し、数を数えるという試験です。川の中にいるプランクトンには、水道水にかびのような臭いをつけるものや、水をきれいにするためのろ過池(※)を詰まらせてしまうものなどがいます。これらがたくさんいないかを調べるのが目的です。私は生物検査担当に異動して1年目ですが、プランクトンを見分けるのは難しく、先輩方に教えてもらいながら作業しています。
(※)ろ過池:浄水処理過程で、水の中の汚れをろ過除去する施設です。

顕微鏡を用いてプランクトンを数える検査
川やダムに生息するプランクトンの顕微鏡写真

 また、川やダムで水質異常が発生した場合に、現場に行って臨時調査することもあります。普段は試験室で作業をしていることが多く、外に行ける機会はなかなかないので、新鮮ですし、水源の様子を自分の目で確認できる良い機会となっています。

藍藻調査のため多摩川で石を採取
石に付着した藍藻を試験室に持ち帰って顕微鏡で観察

一日のスケジュール

 私のある一日のスケジュールをご紹介します。

08:30 始業 メールや予定をチェック
09:00 病原微生物試験の検体前処理(微生物の濃縮や精製)
    打合せへの参加や報告書の作成など
12:00 (昼休み)
13:00 病原微生物の濃度を顕微鏡で測定(午前中の続き)
15:00 小河内貯水池(ダム)で採取した水のプランクトンを検査
16:00 データ整理・片付け
16:15 育児のため前倒しで退庁
17:15 定時

 水質試験の作業時間は短いもので30分、長いもので2日掛かります。ほかにも契約事務や報告書作成などがあるので、試験と併行してそれらの事務作業を行っています。
 また、私は子供2人のお迎えがあるので、部分休業という制度を活用し、1時間早めに退庁させてもらっています。東京都では、他にも育児をしながら働きやすい制度が整っており、周囲の方々の協力もあるので、仕事と育児の両立ができています。

環境検査職としてのやりがい

 水道水を飲んでいるよ、という声を聞くと嬉しい気持ちになります。過去に行っていた、東京都の水道水とミネラルウォーターの飲み比べでは、半分以上の人がミネラルウォーターと同じかそれ以上においしいと感じてくださり、水質を検査している者として、とても誇らしく思います。
 水道水は、日々、お客さまが口にするものなので、検査の結果が与える影響は大きいと思っています。お客さまに安心して水道水を飲んでもらえるように、私たちも常に緊張感をもって検査を行っています。数多くの検査を決まった期限内に行わなければならないといった苦労もありますが、生きていくために欠かせない飲み水の品質を守っているというやりがいもあります。
 生物検査担当では、私よりも長く水道に携わり、経験豊かな先輩方がいて、全員で協力して作業を行うので、日々学ぶことが多くあります。先輩方は、私の質問に丁寧に答えてくれますし、私が困ったときには声をかけてくれます。そういった環境で働くことができるのは、とてもありがたいことだなと、日々感じています。

さいごに

 ここまで、水道局で働く環境検査職の仕事についてご紹介しましたが、いかがでしたか。環境検査職の職員は、学生時代に培った専門的な知識を活かして、水道水の品質を守っています。
 そして、これからも、お客さまに安全でおいしい高品質な水道水を飲んでいただけるよう、日々の仕事に取り組んでいきます。

 今回の記事で、環境検査職について少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。