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世界初!QRコードによるホームドア開閉連動技術の開発

~相互直通運転に対応した浅草線ホームドアの整備~

 [本稿は、令和2年11月、都庁内に配信したブログ内容です]

 交通局では、ホームでのお客様の転落、列車と接触などの事故を防止するため、都営地下鉄全線へのホームドア整備を進めています。
 私どもが保有する地下鉄4路線のうち、ホームドアが未整備である都営浅草線については、令和5年度までに交通局が管理する全ての駅へのホームドア整備を完了することを目指しています。
 令和2年11月現在、新橋駅、大門駅、三田駅、泉岳寺駅の4駅についてホームドアの運用を開始しており、都営浅草線のホームドア制御については、交通局と株式会社デンソーウェーブで共同開発したQRコードを用いたドア開閉連動技術を地下鉄で初めて採用しておりますのでご紹介します。

1.都営浅草線へのホームドア設置の課題

都営浅草線は、複数の鉄道事業者による相互直通運転を行っており、車両の編成数や扉の数が異なる様々な列車が運行されています。このため、ホームドアの設置に際して車両ドアとホームドアを連動させるための無線装置などを乗入れる全ての車両に搭載することは、多くの経費と時間がかかってしまいます。ドアを開閉連動する装置を搭載しない場合、車両ドアとホームドアの両方の開閉操作を別々に行わなければならず、各駅の停車時間が増加します。これによる輸送力の低下が懸念されます。
 そこで、車両の改修を必要としない、QRコードを用いたドア開閉連動技術を採用し、これらの課題を解決しました。

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2.QRコードを用いたドア開閉連動システム

 今回考案したシステムは、ホーム上部に設置した読み取り装置で、車両ドアに貼り付けたQRコードのコード内データと横方向の動きを読み取り、車両ドアとホームドアとの開閉連動を行うものです。QRコード内データに、車両ドア数や編成車両数などの情報を入れることで、各列車のドアに合った位置のホームドアを開閉することが可能となります。

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3.新たなQRコード

 QRコードは、株式会社デンソーウェーブが発明した二次元コードで、決済システムなど身の回りの生活環境から工場や流通といったビジネスに至るまで幅広い範囲で用いられています。しかし、地下鉄や屋外といった駅ホーム環境においての実績がないため、実証試験の実施と機能のブラッシュアップを検討しました。
 今回地下駅のみである浅草線内だけでなく、他社線でも適用可能なシステムとするために太陽光や降雨の影響を考慮し、QRラベル素材の変更や雨粒とQRコードのドットの大きさを比較調整しています。さらに、通常QRコードは30%まで欠けたり汚れたりしても読み取れるのに対し、50%まで欠けたり汚れたりしても読み取れることができる新型QRコード(tQR)を株式会社デンソーウェーブが開発しました。この開発により、明暗どちらか面積の大きい方に明るさの焦点を合わせることでコード内データを読み取ることが可能となり、影の影響も回避することができます。
 平成29年にこのtQRコードを用いてホームドア1開口を実際にホームに仮設して、1か月間営業列車でホームドアの開閉試験を実施しました。約4500本の列車において100%連動開閉ができたため、本格的な導入を決定しました

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4. 施工状況と今後の展開について

 浅草線のホームドアについて、令和元年10月新橋駅の運用開始を始め、令和2年3月までに大門駅、三田駅、泉岳寺駅を加えた4駅について運用を開始しています。
 現在、残る15駅について準備工事に着手しており、令和5年度までに交通局が管理する全ての駅でのホームドア整備完了を目指しています。
 この開閉制御技術については、既にいくつかの鉄道事業者において導入しており、今後の導入を検討している鉄道事業者もあると聞いています。この技術開発が、浅草線だけでなく、同じような課題を持つ鉄道路線へのホームドア普及の一助となれば幸いです。
 お時間があれば、都営浅草線4駅に足を運んでいただき、最新の技術によるホームドアの開閉をぜひご覧ください。

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※QRコード及びtQRは(株)デンソーウェーブの登録商標です。