見出し画像

    銭瓶町ポンプ所の再構築   ー連鎖型都市再生プロジェクトの活用ー

~ はじめに ~
 写真のビルは、令和4年3月に竣工した「銭瓶町ビルディング」です。銭瓶町ビルディングは、東京駅北側の常盤橋街区に位置し、下水道局が土地・建物を単独所有しています。同ビルには、再構築された銭瓶町ポンプ所のほか、中部下水道事務所などが設置されています。
 今回は、下水道局単独では困難であった銭瓶町ポンプ所の再構築について、「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」に参画し、民間事業者等と連携したことにより実現に至った事例を紹介します。

1 銭瓶町ポンプ所の変遷
 銭瓶町ポンプ所は、都心の千代田、中央両区の大部分並びに文京、新宿両区の一部の汚水排除を担う重要なポンプ所であり、昭和6年に建設されました。
 東京オリンピックを控えた昭和38年、銭瓶町ポンプ所のある常盤橋街区は、日本初の特定街区として再開発されることとなりました。その際、銭瓶町ポンプ所については、排水区域の人口増加や建物の高層化に伴う下水量の増大に対応するために揚水能力を増強するとともに、施設の上部空間を有効活用するために民間との共有建物(日本ビルヂング)と合築し、昭和41年7月に二代目の銭瓶町ポンプ所が稼働しました。

2 銭瓶町ポンプ所が抱えていた課題
 昭和から平成にかけて稼働してきた二代目の銭瓶町ポンプ所は、施設の老朽化が著しくなり、将来にわたって安定的に下水を揚水するためには再構築が必要となっていました。しかし、銭瓶町ポンプ所の再構築には、合築されている民間との共有建物への影響や、再構築期間中の代替施設を整備するための種地の確保などの課題があり、下水道局単独での実施は困難でした。

3 大手町連鎖型都市再生プロジェクトへの参画
 東京駅の北側に位置する大手町一帯では、多くの建物で老朽化が進んでおり、業務活動を中断することなく建替えを進めることが求められていました。そこで、合同庁舎跡地を種地とし、老朽化した建物を連鎖的に建替える「大手町連鎖型都市再生プロジェクト」が検討されました。本プロジェクトは、土地区画整理事業と市街地再開発事業を活用してまちを更新するプロジェクトで、土地区画整理事業は平成18年度にスタートしました。
 下水道局では、銭瓶町ポンプ所が抱える課題に加え、民間との共有建物の老朽化、複雑な常盤橋街区の権利関係等の課題に対応するため、一地権者として、平成24年度に本プロジェクトに参画することとしました。都市計画決定等の手続きを経て、平成28年度に、常盤橋街区において市街地再開発事業がスタートしました。

写真ー1 大手町連鎖型都市再生プロジェクト

4 銭瓶町ポンプ所移設に係る各事業の役割分担
(1)土地区画整理事業の役割
 銭瓶町ポンプ所等の用地は、土地区画整理事業の換地により従前の日本  ビルヂングの隣接地に確保され、銭瓶町ポンプ所の移転は、同事業から機能補償を受けることになりました。
(2)市街地再開発事業の役割
 銭瓶町ポンプ所及び銭瓶町ビルディングは、下水道法16条に基づく承認工事として、再開発事業者の設計・施工により整備されました。下水道局は公共下水道管理者として、設計指導や施工確認等を行いました。
(3)下水道事業の役割
 下水道関連の付帯施設は、下水道事業として下水道局が整備を担うこととしました。例えば、新たに整備する雨水貯留施設は、降雨初期の特に汚れた下水を貯留することで、雨天時に日本橋川へ放流される汚濁負荷量を削減し良好な水環境を創出します。後述の民間建物(B棟 Torch Tower)に合わせて施工され、令和9年度に完成する予定です。

図ー1 銭瓶町ポンプ所の移設前後

5 立体都市計画制度及び容積移転について
 下水道事業として新たに整備する雨水貯留施設の上部は、常盤橋街区全体での一体的な高度利用を図るため、立体都市計画制度を活用し、民間建物と合築することとしました。また、常盤橋街区における容積率は、特区提案による都市再生特別地区の指定等により1860%となっています。しかしながら、銭瓶町ビルディングにおいて必要な容積率は500%であったため、余剰容積を街区内の他の建物に移転させました。その結果、民間建物(B棟Torch Tower)は、日本一の高さ(約390m)を誇るビルとして、東京の新たなランドマークとなる予定です。

図ー2 常盤橋街区竣工イメージ

6 事業の費用負担と事業完了後の収益
 銭瓶町ポンプ所の移設は、土地区画整理事業の補償対象となるため、移設に要する費用の一部は土地区画整理事業の負担となります。下水道局は同事業の地権者として、一定の負担を行うものの、単独で整備するよりも安価に整備することができました。
 また、市街地再開発事業の権利変換により、従前の土地・建物の資産を銭瓶町ビルディングの土地・建物の資産に変換しています。このことにより、下水道局は、実質的に支出をすることなく⁽¹⁾、銭瓶町ビルディングの土地取得及び建設を行うことができました。
 さらに、権利変換の余剰資産で民間建物(B棟Torch Tower)の一部にオフィスフロアの権利を取得し、このフロアを民間に貸しつけることにより、安定的に収入を得ることが可能となっています。
⁽¹⁾下水道事業で整備した下水熱利用施設、雨水貯留施設等に係る費用を除く

7 にぎわい創出と下水道事業のPR
 銭瓶町ビルディング1階入口に設置した多目的スペース「ぜにがめプレイス」では、地域のまちづくりを行っているNPO法人大丸有エリアマネジメント協会と連携して、下水道事業の情報発信や常盤橋街区のにぎわい創出の取り組みを行っています。下水道事業の情報発信としては、店内モニターでのPR映像の放映やカラーマンホール蓋の展示、マンホールカードの配布などを行っています。また、にぎわい創出の取り組みとしては、学生が自らの地元都道府県をPRする47都道府県地域産品セレクトショップを営業しています。

写真ー2 ぜにがめプレイス

~ おわりに ~
 今後も東京都下水道局では、地域の皆様のご意見や地域特性などを踏まえるとともに、幅広い観点からまちづくりへ貢献するため、下水道施設の有効な活用に取り組んでいきます。