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日本最大級、2つのケーソンを同時沈下!水害から都民の命と暮らしを守る‼ ~城北中央公園調節池(一期)工事~

 ■はじめに

 建設局では、台風や集中豪雨による水害から都民の命と暮らしを守るため、「中小河川における都の整備方針」(平成24年11月)に基づき、年超過確率1/20(区部時間最大75ミリ、多摩65ミリ)の降雨に対応することを目標として、神田川、石神井川などの中小河川において、護岸や調節池等の整備を進めています。
 整備にあたっては、時間50ミリの降雨までは河道整備を基本として、それを超える降雨については、新たな調節池等で対処することとしています。
 特に調節池の整備は下流側の洪水に対する安全性を早期に向上させるとともに、上流側への護岸整備を促進できることから、道路や公園等の公共空間を有効に活用して、積極的に整備を行っており、現在都内8か所で工事を実施しています。
 そのうち、今回は、過去に溢水被害が発生した石神井川での取り組み事例を紹介します。

■石神井川について

 石神井川は、東京都小平市花小金井南町に源を発し、西東京市や練馬区、板橋区を東に流れて北区堀船で隅田川へ合流する荒川水系の一級河川です。流域面積は73.1k㎡、延長は 25.2km であり、都内の中小河川としては比較的規模の大きい河川です。

図1 石神井川の流域図

 石神井川では過去に多くの水害が発生しています。昭和33年9月の狩野川台風では、石神井川があふれるなど都内全体で約48万棟の浸水被害が発生しました。また近年では、平成17年9月の集中豪雨や平成22年7月の集中豪雨により、浸水被害が発生しています。

写真1 過去の石神井川の水害写真(左:狩野川台風、右:平成22年7月の集中豪雨)

■城北中央公園調節池事業について

 城北中央公園調節池は、石神井川の下流域の洪水被害を軽減するために設置する貯留量約25万㎥(25mプールに換算すると約800杯分)の箱式の地下調節池であり、都立城北中央公園の地下を活用して整備しています。工事は一期と二期に分けて施工しており、現在は一期工事(貯留量約9万㎥)を実施しています。

図2 調節池の平面図
図3 調節池の断面イメージ

■一期工事について

 城北中央公園調節池は、ニューマチックケーソン工法により調節池本体をつくります。ニューマチックケーソン工法とは、地上でケーソンと呼ばれる鉄筋コンクリートの構造物をつくり、ケーソン下部に気密性の作業室を設け、空気圧により地下水の浸水を防ぎながら掘削作業を行い、地下に沈める工法です。

図4 ニューマチックケーソンの整備イメージ図

 1号ケーソン及び2号ケーソンの形状はそれぞれ幅33.4m、延長80.3m、高さ35.3mであり、10階建て相当で、延床面積5万㎡程度のビルがすっぽり収まる大きさです。この2つのケーソンを同時に沈下させる工事としては日本最大級です。 
 調節池工事は平成30年度に工事着手を行いました。令和3年6月からは本格的にケーソン本体の掘削工事を開始し、令和4年10月にケーソンの沈設が完了しました。現在は川の水を調節池内に取り込むための取水口の整備や躯体の内部構築等を行っています。

図5 調節池の断面図
写真2 ケーソン沈設状況

■ケーソン2函の同時沈下

 ケーソンが沈下時に作用する力は、死荷重、土圧、静水圧、刃口抵抗力、揚圧力及び周面摩擦力であり、偏圧のない単体沈下の場合は鉛直方向の力が釣り合うように沈下計画を検討します。しかし、図6に示すように近接したケーソンを異なる深度で沈下させる場合、後行ケーソン刃口の接地圧を上載荷重とした水平力が偏圧として先行ケーソンに作用するため、刃口に対する偏圧の影響を検証する必要があります。

図6 二函同時沈下時(深度差あり)の位置関係

 そのため、施工に先立ち、近接する2つのケーソンがそれぞれに与える影響を分析した結果、高低差1.0mまでは先行ケーソンにかかる水平方向荷重度が、許容値を下回ることが判明しました。その結果を踏まえて、ケーソンを同一深度で同時に沈下することを基本として、2つのケーソンの高低差の許容値を1.0m以下に制限することとしました。施工にあたっては、周面摩擦力や刃口反力などを常に計測して、地中の影響を監視しながら慎重に工事を進めました。

■ICT施工(無人化施工)

 今回、ケーソン下部の掘削は最大で水深35m相当の高気圧下で行いました。人が入っての作業となれば、時間的な制約があることに加え、高気圧障害を発症する危険性もあります。そこで地上から深さ約15m以深からは、無人化施工に切り替えました。地上に設けた建屋(地上制御室)からパソコン上でショベルの位置やケーソン躯体の傾斜状態などを監視しながら、専門の作業員が、天井走行式ケーソンショベルの遠隔操作を行うことにより、掘削作業を無人化し、安全性の向上に努めました。

写真3 地上制御室の様子
写真4 遠隔操作の様子

■今後について

 今後は、一期工事完成後、直ちに取水開始ができるように、調節池の運用に必要な管理棟、排水ポンプ、電気設備などの工事を実施していきます。
 これらの工事完了後、令和7年度を目標に一期分の供用を開始し、早期に調節池の事業効果を発揮していきます。その後、引き続き二期工事に着手し、安全に配慮して、事業完了を目指して着実に整備を進めていきます。

写真5 調節池内部の状況