見出し画像

都有施設の整備をご紹介 ~都有施設初のZEB化実証建築:東京都公文書館を中心に~

[本稿は、令和2年10月、都庁内に配信したブログ内容です] 

財務局では、各局からの委任を受け、教育・文化・スポーツ施設、医療・福祉施設、庁舎等の建設並びに既設の都有建築物の改築及び改修、設備更新等の工事を施工しています。また、これらの都有施設の整備にあたっては、「省エネ・再エネ東京仕様」を適用するなど、環境への取組を推進しています。今回は、本年4月に国分寺市に移転開館した、東京都公文書館の事例を中心にご紹介します。

画像1

Ⅰ 東京都公文書館の建築計画

■ 「森の中の知の泉」と「積層」のデザイン

 東京都公文書館は、国分寺崖線のほど近く、東を緑豊かな都立武蔵国分寺公園、北を「森の中の本の森」をコンセプトとした都立多摩図書館に隣接した、都の歴史公文書等や庁内刊行物などを保存・公開する施設です。知の集積である公文書を保存・公開する役割をもつ施設から新たな知が湧き出ることを願い「森の中の知の泉」を基本コンセプトに「積層」をデザインコードとして計画されました。

画像2

正面前景

 1階に一般利用者が利用する閲覧スペース及び事務室、2・3階に閉架の書庫、史料室及び設備スペースが設けられています。エントランスホールには、公文書館が所有する様々な情報の一端を展示する展示壁「アーカイブウォール」が設置されています。これは、多摩産杉材の積層合板をさらに積層させ、その小口を仕上げ面としたもので、国分寺崖線や知の集積を想起させる「積層」のデザインを採用しています。床材にも多摩産杉材を活用しており、壮観で温かみのある空間を形成しています。

画像3

エントランスホールの「アーカイブウォール」

■ 緑豊かな周辺環境や隣接する都立多摩図書館との連携

 外観は、緑豊かな周辺との調和に配慮するとともに、隣接する都立多摩図書館でも採用している下見板張りの溶融亜鉛めっきリン酸処理スチールパネルを採用し、施設の耐候性・耐久性を高めるとともに知の積層をイメージさせる重厚感あるデザインとしています。また、土地の記憶を伝える大きなケヤキをはじめ貴重な既存樹木を保存・活用するとともに、各種舗装材についても都立多摩図書館と同等の浸透性舗装材を採用するなど、周辺環境との調和や連続性に配慮した計画としています。

画像4

都立多摩図書館との一体的な景観
左奥:都立多摩図書館、右手前:東京都公文書館


 内部に目を移すと、木目調の模様をあしらったアーカイブウォールに沿って湾曲する天井のアルミバーと照明のセットは、一般閲覧室までの動線を誘導する設えとなっています。一般閲覧室の書架や机は、隣接する多摩図書館と連続性のあるデザインが採用されており、同じ都の施設としての統一感に配慮しています。展示室・特別展示室には、重要文化財が展示できる各種展示ケースを設け、一定の温湿度・空気環境を保つことができるようにしています。

画像5

一般閲覧室

■ 都有施設初のZEB化実証建築

 東京都公文書館は、都有施設初のZEB化実証建築です。ZEBとは、年間のエネルギー消費量が、正味でゼロ、または概ねゼロとなる建築物です。ZEBを実現するため、屋根は二重床スラブとしスラブ間に断熱材を入れ、文書庫の外周部は、高性能断熱材を取り付けたコンクリート二重壁とし、機械室兼通路として有効活用しています。いわば、建物全体を魔法瓶のような構造とすることで、侵入熱負荷を抑え、省エネ効果を高めています。このほかにも、高効率空調設備機器の導入や空調機器運転の最適化、大容量の太陽光発電設備の導入などを行っています。これらの技術を導入した結果、設計段階では、基準となるエネルギー消費量に比べ約90%の削減が行えております。

画像6

環境配慮技術の導入イメージ

 また、アーカイブウォールのディスプレイの一つには、中央監視装置からデータを受け取り、その日の電力消費量及び太陽光発電電力量をリアルタイムに表示できるようになっており、災害時には情報発信のための設備としても使えるようになっています。
 今後、データの収集・分析を行い、ZEB化の検証を行っていきます。

Ⅱ 環境への取組 ~省エネ・再エネ東京仕様~

 財務局では、エネルギー消費量、温室効果ガス排出量を削減する都の率先行動として、熱負荷の低減や最新の省エネ設備の導入等を標準化した「省エネ・再エネ東京仕様」を、平成19年(2007年)に策定しました。建物を建設する際に必要となる国の省エネ適合判定をクリアするだけでなく、東京都建築物環境計画書制度での「建築物の熱負荷の低減」や「省エネルギーシステム」など省エネ性能の評価項目において最高ランクの取得を目指し、庁舎、学校、病院などの整備に適用してきました。これまでも環境技術の進展を踏まえ、改正を3回実施し、都有建築物の一層の省エネ化と、多様な再生可能エネルギーの利用推進を図ってきました。主な技術として、建築分野では外皮の高断熱化や複層ガラスの採用、機械分野では高効率空調機や中央監視装置(エネルギー管理)、電気分野ではLED照明や太陽光発電などがあります。今後も、最新の省エネ技術等の動向を十分注視して、都有建築物の更なる環境負荷の低減を図っていきます。

画像7

省エネ・再エネ東京仕様  庁舎モデルイメージ図

Ⅲ おわりに

 財務局では、東京都公文書館のような委任工事のほか、都庁舎の改修工事も行っております。都庁舎改修では、設備更新の機会をとらえたCO2排出量削減などへの取組を進めるとともに、長周期地震動対策としての制振装置の設置などを行ってきました。都議会議会堂に続き、9月には第2本庁舎の改修工事を終えたところです。このほかにも、直近では、新型コロナ感染症対策に伴う各種工事についても取り組んでいます。財務局は、今後も、全庁的な技術管理部門として、都政の重要課題を踏まえた都有施設の整備に取り組んで参ります。

画像8