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東京都下水道局 実はすごい!マンホールの技術!!

 東京の下水道管は、23区だけで東京とシドニーを往復する距離に相当する約1万6千㎞の長さがあり、道路の下など地下に張り巡らされていますが、私たちが普段の生活で下水道管を目にすることはほとんどありません。しかし地上部にあるマンホールは、都内で何と約49万個(下水道管約30mに1箇所)もあることから、私たちの普段の生活で見かけることが多いと思います。本記事では下水道局のマンホールに関する様々な取組を紹介します。

◇マンホールの概要
マンホールの構造
 図1はマンホールの断面図です。地下に埋められたマンホール本体と地面にあるマンホール蓋によって構成され、地下で下水を流している下水道管につながっています。下水道管の向きや、埋設深さが変わる場所、複数の下水道管が集まる場所、などに設置されており、維持管理(点検、調査、清掃、修理等)を行う人などが出入りするために必要な施設です。

図1,2,3,4

様々なマンホール蓋
 同じに見えるマンホール蓋ですが、様々な工夫がされています。写真1(左)は1964年に開催された東京五輪でテロ防止のため、マンホール蓋と枠の隙間を固着した箇所です。現在の標準的なマンホール蓋(写真1(右))には、鍵穴のようなロック機構が付いているので、専用の道具がないと開けられないようになっています。他にもいろいろな形のマンホール蓋があります。

写真1,2

 また、集中豪雨によって下水道管内の水位が一気に上昇した場合に、マンホール蓋を吹き飛ばないように、集まった空気を地上に逃がすことが出来る格子状の蓋を設置している箇所もあります。

図4

東京都マンホールのデザイン
 図5は東京都のマンホール蓋と蔵前水の館に設置しているカラーマンホール蓋です。カラーにすると良くわかりますが、都の花「ソメイヨシノ」、都の木「イチョウ」、都民の鳥「ユリカモメ」がデザインされています。

図5

◇新しいマンホールの技術
従来のマンホールよりすべりにくい!!耐スリップ性能向上マンホール蓋
〇耐スリップ性能向上マンホール蓋とは
 23区ではマンホール蓋によるスリップ事故が少なからず発生しており、よりすべりにくいマンホール蓋の設置要望が都民等からよせられていました。そのため、新たに開発したのが耐スリップ性能向上マンホール蓋です。この蓋は、表面に突起を付け、通行車両や歩行者がよりすべらないように工夫したものです。材質や強度等はこれまでのマンホール蓋と変えずに、すべり抵抗性の向上に加え、既存の下地模様(桜、イチョウ、カモメ)のデザインを活かせるように配慮して3年かけて開発しました(図-6)。

図6

〇耐スリップ性能を向上させるにあたって
 開発の手順は図-7のとおりです。マンホールの表面に配置する突起の形や大きさ、配置間隔などを決めるため、他企業等の耐スリップ性能マンホール蓋の実績をもとに、突起サンプル(供試体)を13パターン作成し、開発目標値を満たした突起を選定して、マンホールの試作品を製作しました(写真3)。また、既存の下地模様のデザインの視認性を確保することも開発目標のひとつであったため、下地模様の厚さや縁取りなどの改良を加えることで、既存のデザインの視認性を確保しつつ、耐スリップ性能を向上させたマンホール蓋を開発することができました(写真4)。今年度より、23区内の道路に設置を進めています。

図7,写真3,4

水位情報を容易に取得!!多機能型マンホール
 「多機能型マンホール蓋」は、インターネットを介して、下水道管内の水位データや硫化水素濃度データをリアルタイムに取得できる技術です。
 マンホール蓋の裏面に通信装置とバッテリーを格納し、表面にはアンテナを埋め込んであります。得られた水位データは浸水対策や雨天時浸入水対策※1の一助に、硫化水素濃度データは悪臭問題の解決に役立つことを期待して開発しました。
 電線などを引かずに蓋を取り替えるだけなので道路を掘らずに設置することができ、水位計で1分毎に計測したデータを10分毎にまとめて送信する場合、バッテリーは1年間以上交換が不要です。

写真5,図8,9

 現在、「多機能型マンホール蓋」は、雨天時浸入水対策として多摩地域の市町村境などに設置されています。特殊なマンホール蓋ではありますが、ほかのマンホールと同様、ひっそりと街中の風景に溶け込みながら、24時間365日、水位データを取得しています。 ふと気が付くと、みなさんの足元に設置されているかも知れません!?

※1雨天時浸入水とは?
 生活排水等を流下させる分流式下水道の汚水管に雨水が浸入すること。原因として、下水道管のつなぎ目やヒビ割れから雨水や地下水が浸入していること、雨水管が誤って汚水管に接続していることなどが考えられる。

写真6

◇デザインマンホール蓋
 各地の観光名所やアニメキャラクターなどが描かれた“デザインマンホール蓋“は全国各地に点在しており、デザインマンホール蓋をPRするマンホールカードも発行されるなど、いま話題を集めています。

 東京都内にも数多くのデザインマンホール蓋が存在しており、東京都下水道局では都内に設置されたデザインマンホール蓋を局ホームページで紹介しています。
 ユニークなデザインとともに、デザインの由来や設置場所など、都内各地に設置されたマンホール蓋の数々を楽しめますので、ぜひご覧ください。

ホームページのURLはこちら↓
https://www.gesui.metro.tokyo.lg.jp/business/b1/designmanhole/index.html

◇マンホールの耐震対策
 首都直下地震などが発生したときに備え、下水道機能を確保するとともに緊急輸送道路などの交通機能を確保するため、マンホールとの接続部の耐震化、マンホールの浮上抑制対策、マンホールへの土砂流入防止対策を行っています。

マンホールとの接続部の耐震化
 平成7年に発生した阪神淡路大震災において、下水道管とマンホールの接続部分の破損により、下水道が使用できなくなる事態が多くみられたことを契機に対策を始めました。非開削により施工を行い、避難所など震災時に人が集まる施設や災害復旧拠点における対策を優先して進めており、令和2年度末までに4,315か所が完了しています。

写真7,図9

マンホールの浮上抑制対策
 平成16年に発生した新潟県中越地震において、地盤の液状化によって引き起こされるマンホールの浮上が緊急車両の通行に支障をきたし、被災者の救済活動に影響を与えるという問題が発生したため、その対策を実施しています。交通機能を確保するために、液状化の危険性が高い地域の緊急輸送道路などを対象にマンホールの浮上抑制対策を実施し、令和2年度末までに対象道路の1,250km全てを完了し、現在は一時滞在施設※1や災害拠点連携病院※2などを対象に追加しました。

※1帰宅が可能になるまで待機する場所がない帰宅困難者を一時的に受け入れる施設
※2災害時において主に中等症者や容態の安定した重症者の治療等を行う病院

写真8,図10

マンホールへの土砂流入防止対策
 東日本大震災では、周辺地盤の液状化によりマンホール内に土砂が堆積して下水道の流下機能が阻害されたことにより、トイレの使用制限が生じるなど大きな影響が出ました。土砂堆積の要因となったマンホールの側塊の目地ずれを抑制する「人孔側塊目地ずれ抑制シート工法(非開削工法)」を令和4年度から導入する予定です。

写真9,図11