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「句読点を打つ」ことを考える。|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から、「句読点を打つ」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

2022年7月には、7本の動画を公開しましたが、今回の続編と合わせて14本の動画シリーズとなりました。この記事で取り上げる「句読点を打つ」について、ことば本では以下のように書かれています。

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句読点を打つ:メリハリをつけながら動く 

「締め切り」はプロジェクトの動きにドライブをかけてくれる大事な要素。対外的な締め切りがなくても、チーム内で設定しよう。日々の活動に、締め切りという「句読点」を打ちながら進んでいくことも、持続的な活動の土壌をつくることにつながる

明確な締め切りのない業務にも自ら終止符を打ってみる。イベントは本番がきたら終わるが、日々の事務局業務はずっと続いていく。四半期ごとに区切って、振り返りの場を設定したり、年度ごとにいったんまとめるなどリズムをつけていくことが有効だ。

また、怒涛のようにイベントが集中するときは、その分しっかり休んでリフレッシュするなど、メリハリをつけながら仕事に取り組もう。そうでないと、疲労がどんどんたまっていくのはもちろんのこと、惰性で動いてしまう危険性がある。忙しくがんばった結果がプロジェクトの仕上がりにダイレクトに反映することもあり、ついつい休む間も忘れて夢中になることもあるが、倒れてしまったら事務局にとっては大打撃。「休むのも仕事」と考え、しっかりオフの時間をつくろう。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、29頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロード、もしくは郵送(送料のみ/着払い)にてお読みいただけます。

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「句読点を打つ」。これは比喩ですが、プロジェクト運営においては「メリハリをつける」、とか「システム、リズムをつくる」という意味をイメージしています。

なぜ、句読点を打つことが必要なのか? それは、プロジェクトを持続的なものにしていくためです。プロジェクトの目的に立ち返りながら、やるべきことの優先度や〆切を決めたり、日々の業務の中にプロジェクトの記録や振り返りができるシステムを組み込んだり。プロジェクトの現在地を見直し、メンバー間で共有・議論できる時間を意識的につくることで、少し先を見据えたプロジェクト運営ができるのではないでしょうか。

句読点の例①話すべき話題を考えて会議を設計する

メンバーで集まると、各プログラムの進捗共有から関連情報のおすすめ、新しいアイディア…など話はつきません。どの話も大切ですが、ついつい進捗共有だけで会議が終わってしまった、なんてことも。そのために、会議のなかで話題ごとに時間を区切ったり、話題によって別日に設定するなど、いつまでに何を話さないといけないかをスケジューリングしながら進めていくのもおすすめです。

▲あるプロジェクトでは、企画のブレストや中長期計画を立てる「企画会議」、運営面の振り返りを行う「事務局会議」、東京アートポイント計画のスタッフと行う「PO会議」などをそれぞれ定例化しています。

句読点の例②日々の記録をリズム化する

「としまアートステーション構想」というプロジェクトでは、「普段の活動に記録の要素を組み込むことで 、身構えずに取り組める記録の仕方」を意識し、記録の取り方を工夫していました。活動名 、日付 、時間を記載したイベントのPOP を、イベント終了後にそのままファイリングして実施内容のログとしたり、Facebookで実施レポートを投稿したら、それを出力してファイリングしたり…と、「○○をしたら○○をする」というリズムをつくっていました。

▼発行物『思考と技術と対話の学校 基礎プログラム2 [技術編] 2016 アートプロジェクトの現場で使える27の技術』にて、事例を紹介しています。

また、「HAPPY TURN/神津島」では、拠点開室時に日報をつけています。日報をつけるハードルを下げるためにフォーマットを改善していき、1日ごとに1シート、紙に記録するスタイルで運用しているそうです。

句読点の例③ドキュメントづくりを通して、プロジェクトを振り返る

2009年度から2020年度まで中央線沿線で展開していたプロジェクト「TERATOTERA」は、毎年度末に1冊ドキュメントをつくり続けてきました。さらに、2020年度は、12年目の総まとめとしてのドキュメント制作に着手。制作にあたっては、歴代のボランティアスタッフがオンライン上で対話を重ね、過去一年度ごとに振り返り会を実施。情報量が多く、まとめるのに悩んだ一方、振り返りをきっかけに離れていたメンバーが参加してくれた、という、プロジェクトの価値や影響を感じさせるエピソードもあったそうです。

また、東京アートポイント計画では、事業10周年企画として開催した展覧会の立ち上がりから実施に至るまでの試行錯誤を、企画の統括をしたスタッフの視点で振り返ったドキュメントの発行も行いました。

プログラムとして「振り返り」を積極的に組み込むことは、日々の実践の成果や想いをプロジェクト内外の人々と共有し、成果を深める機会ともなりうる。多様な人々と現場をつくり上げるアートプロジェクトの運営だからこそ、ともに日々の歩みを振り返ることが、次の一歩を深めることへつながるのである。

『東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する
「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』
p.74「振り返り」

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思いやアイディアが溢れていても、ずっと走り続けていては、活動自体も、関わる人たちも、息切れしてしまいます。せっかく生まれたプロジェクトの種をじっくり育てていくために、ときどき足を止めて一呼吸して、自分たちのプロジェクトを見直す時間が必要なのではないか、と思います。

岡野恵未子

▼ Tokyo Art Research Lab「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば」の再生リストは、以下のリンク先からご覧いただけます。