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築コレ〜オツな若ぇの生け捕ってきやした100 一龍斎貞鏡

貞鏡さんが幼少期を過ごされた、笹塚にある公園「世田谷区立玉川上水緑道」でお話を伺いました。
 小さな頃は古典芸能に興味がなく、講談にも触れずに育って来ました。義祖父の神田伯龍に可愛がってもらっている写真もありますが、意識していませんでした。
 大学に進学し、20歳のとき初めて父が出演する「講談かぶら矢会」に行きました。そこで父の講談を初めて客席から聴き、とても格好良い姿に驚きました。また、女性の琴桜先生がとてもきれいで、華やかな世界にみえたこともあり、その場で「入門したい!!」と思いました。「飽きっぽいからだめだ」って何度も言われましたが、大学4年の1月、父に入門を許されました。
 前座としての4年間は地獄のような毎日でした。立ち振る舞いが全くわからなくて、「どうすれば先生方が気持ちよく高座に上がれるか」を必死に考えていたのですがうまくいかず、ある先輩に「貞鏡さんはこの業界に向いていない。早く辞めちゃえば?」と言われ、はばかりで悔し泣きをしたこともありました。でも「辞めたら親父の恥になる、爺ちゃんの恥になる、辞められない。頑張ろう」と日々を過ごす4年間でした。


 二ツ目に昇進すると周りが盛り立ててくださいましたが、だんだんともっと自分がしっかりしないと続かないなと考えるようになりました。そんな矢先に、NHKでコロッケさんの番組(ごきげん歌謡笑劇団)に出させて頂きまして、コロッケさんの人柄が素晴らしく、かつ芸も一流で、テレビにも出続けていらっしゃる。「こんな素敵な芸人さんになりたいな」って思いました。制作側のスタッフの方に酒席で「気取ってないでもっと素を出せば? 貞鏡さんは〝講談師の一龍斎貞鏡〟なんだからもっと自分らしくやればいいんじゃない」って言われたんです。以前は貞山の娘でいなければ、という気持ちが強かったのですが、お利口さんでいるのをやめました。そこからガラッと変わり、「貞山の娘です♡」という感じではなく、素の自分を出せるようになったんです。
 今後の目標として、地方に呼んで頂いた際にお客様に喜んで頂くべく、その土地にまつわるお話に力を入れること。所々にピアノ演奏を織り交ぜるピアノ講談に力を入れること。そして、一龍斎のお家芸である『赤穂義士伝』を本格的に勉強して参ります。

☆貞鏡さんは2014(平成26)年11月号「今月のインタビュー」に貞山先生への聞き手として登場しています。貴重なお写真もいっぱいです。


一龍斎貞鏡 1月30日生まれ。東京都渋谷区出身。武蔵大学卒業。2008年1月、八代目一龍斎貞山に入門。4月に「貞鏡」で前座。12年2月二ツ目昇進。実祖父は故・七代目貞山、義祖父は六代目神田伯龍、父は八代目貞山。東京新聞毎週水曜リレーエッセイの連載人の一人。

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