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【Tokyo Saikai Edition 002】 武田稔さん <前編>

東京西海noteの新連載『Tokyo Saikai Edition』。第二回目のゲストは、軽井沢で「232 Work&Hotel」、「カスターニエ 軽井沢ローストチキン」を運営する武田稔さん。地元だけでなく県外や海外からも多くの人が訪れる、心地良い場作りについて、想いを語っていただきました。



——「232 Work&Hotel」(以下:232)がオープンした経緯についてお聞かせください。

少し長くなるのですが、我が家は祖父の代から軽井沢で商売をしています。「232」があるこの建物は、私の父が1982年に建てたものです。当時の軽井沢ではレンタサイクルの需要があり、この一階ではレンタサイクル店、二階ではレストラン(カスターニエ)を運営していました。正直なところレンタサイクルは季節商売の側面が強く、また時代の変化を感じる中でレンタサイクル店は閉業し、一階にレストランを移しました。2012年のことです。

その後、二階はしばらく宴会スペースになりました。軽井沢エリアは人気の挙式会場が多く、その二次会の会場として利用されていました。しかし、吉日の土曜日になると一日に5件もの予約が入り、加えて通常のレストラン営業もあり、もう目まぐるしく忙しくて(笑)。このままだと自分もスタッフも疲弊してしまうと判断し、一度宴会スペースを閉じることにしました。

それから5年間、この2階は眠った状態でした。一方でレストランの営業を通じて、軽井沢には面白い方々が集まっているのは知っていたので、レストラン以外で彼らが集まるスペースを作ったら、自分も楽しそうだなと思い、コワーキングスペースの構想に至りました。


——人が集う場所を作る。そういう考えからスタートしているのですね。

はい。そこで同じ長野を拠点に暮らしを提案している「haluta」さん(以下:ハルタさん)に相談に行きました。同社も以前はコワーキングスペースの運営に関わっていた経験があり、また軽井沢にもサテライトのオフィスを探しているとのことで。それに加えて、私自身も「宿泊施設もやりたい」という気持ちが芽生えてきたこともありました。そこで、うちのリノベーションとコワーキングスペースの運営をまるっとハルタさんにお願いしようと。2020年に「232」がオープンしました。名前はユニバーサルな数字にすることで世界中の人に認知されやすいと思い、番地を引用しました。


——コワーキングスペースと宿泊スペースの空間デザインを決める際、武田さんが最もこだわった部分は何でしょうか?

それは断熱です。これは絶対に譲れませんでした。リノベーション前の建物では朝に点火したストーブが夕方になってようやく効き始めるという経験をしてきて(笑)。日本の断熱性能は、世界と比べても遅れていると肌身で感じていました。やはり快適に過ごせる環境を整えたいと。偶然にも、ハルタさんも同時期に断熱に重点を置いたリノベーションを行っていました。センスの良いデザインと断熱性能を組み合わせて。そこから話は順調に進みましたね。

——私たちが「232」に初めてお邪魔した際、コワーキングスペースでしばらく仕事をさせていただきました。集中とリラックス、それぞれの時間を満たしてくれるポイントがあり、ただ洗練されているだけでなく、空間として心地良い場所という印象を受けました。

ハルタさんが掲げていたコンセプトが、“空気をデザインする”。さまざまな視点、導線を取り入れて空間を作り上げていきましたね。また、ヴィンテージの北欧家具を中心に取り揃え、良いものを心地よく使いたいと考えました。家具も空間も引き継いで今があります。それを大切に使い続けることで、将来的には新たな価値を育んでいこうと思っています。

また、「232」では、大規模なシステムではないですが、蓄電池を常備しています。2019年の台風では、この近辺でも被害がありました。停電するとレストランの冷蔵庫にある食品が傷むことがあり、損害につながることもあります。そのため、蓄電池は重要だと感じています。万が一何かあったときには、断熱効果がある共有スペースで雨風を凌ぎ、携帯電話の充電を行うこともできる。近隣の方々が避難に使うことも想定しています。

——地域のコミュニティースペースであり、緊急の避難先としても機能すると。先ほどはハード面におけるこだわりをお聞きしましたが、人が集まれる場所として、武田さんはじめスタッフの方々がソフト面で気を遣っている点はありますか?

心地良いと思える距離感です。自分の場合、旅先や出先で人との出会いが一番心に残ります。接し方次第で、そこに流れる空気の感じ方も変わってきますから。レストランでも同様で、お客さんからのダイレクトな反応に直に触れることができるのはとてもありがたいことです。時にはそこから様々な話に発展することもあります。こうしたコミュニケーションがこの商売をしている上での最大の醍醐味ではないでしょうか。お客さんも私たちも「あ、なんか良かったなぁ…」と思える距離感を心がけていますね。


——ハードとソフトの両面で武田さんの思いが詰まった「232」で、
「HASAMI PORCELAIN」(以下:ハサミポーセリン)を使っていただくきっかけを教えてください。

コワーキングスペースで使うマグカップをずっと探していて、「これだ!」というのがなかなか見つからずにいました。そんな中で知人の家で御社の玉木さんに出会い、お仕事を聞いたら、陶磁器ブランドを運営していると。それからホームページを見せてもらって、しばらく眺めていました。そこでようやく理想のモノに出会いました。それが「ハサミポーセリン」の「マグカップ」です。


その後、御社からご案内いただいて、白い「テイスティングカップ」にプリントができると。「232」のロゴの数字を分割して、それぞれがプリントしてあったら面白いなって。だるま落としじゃないけど、これが縦に並んでる様子を想像してオーダーしました。ロゴのフォントがそれぞれ違うのは、多様な方々を象徴していて、色々な人集まってほしいなという思いからです。カップがスタッキングしている様子もそれを体現しているなと。

——文字の高さを上で揃えることに、武田さんはかなりこだわっていましたよね。


ロゴデザインと同じ様に、横に並べておいた時は頭で揃えたいなと。ホントはもう少し下に、もう2、3ミリ、頭を下にした方が良かったかな...いや、これでいいのか(笑)。今、コワーキングスペースでは、日々、みなさん思い思いにマグカップ、テイスティングカップ、ガラスのタンブラーを使ってますよ。僕は、数字では「3」が好きなのと、稔の「み」でもあって、もっぱらこのカップです(笑)。


——ありがとうございます。ハサミポーセリンのプロダクトで他に使ってみたいものはありますか?

先日、アーティスト・神山隆二さんの「ART MUG」を手に入れまして。正直にお話しますが、もともとハサミポーセリンの白磁のタイプには、ピンとこなかったんです。やっぱり、オリジナルシリーズのテクスチャーのイメージが強く、自分はそれを含めて気に入っていたところもあったので。それで実際、神山さんのマグを手にしたら、アートワークは映えるし、質感もいいし、見方がかなり変わりました。もちろん使い勝手も良くて。ゆくゆくは「マグカップ ホワイト」でプリントをお願いしたいです。(後編に続く)


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