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私の演劇の記憶-FRAGMENT- ししどともこ

『FRAGMENT』の主人公が俳優であることにちなんで、実際に俳優である出演者一人一人の、演劇に関する「記憶」を深掘りするインタビュー企画、「私の演劇の記憶-FRAGMENT-」。
俳優として生きている人の考えを「断片」を集めていくと、
自ずと『FRAGMENT』という作品につながっていくのかもしれません。

三人目は雨宮美智役、ししどともこさんにお話をお聞きします。


ししどさんの演劇にまつわる記憶のお話をお伺いしたいのですが、初めて見た演劇はなんでしょう?

初めて見た演劇ですか? うーん、、、小学校の学芸会ですかね(笑)?初めて演劇に関わったのもそこです。でもその時は私、木琴やりますって言って舞台上には出てないです。学生時代もクリエイティブなことに興味はあったんですけど、舞台役者であったりを仕事にしたいとかはあんまり考えてなかったですね。むしろ人前に出るのがすごい苦手でした。

そうなんですね。ではこちらも原体験として、ししどさんが今まで見てきた演劇の中で、最も印象的だったものはなんでしょうか?

一番覚えているのは、らくだ工務店の『火葬』(作・演出 石曽根有也)です。確か下北沢OFF・OFFシアターで見たんですけど。中学校の体育倉庫で、先生たちが閉じ込められちゃって、話し始めるっていうストーリーで、最初の方はシチュエーションコメディみたいな感じで軽快に進んでいったかなって思ったら、途中からいじめられている生徒の話になっていってっていう。で、なんで印象に残っているのかっていうと、途中から「あ、いじめられてる生徒、死んでるんじゃないかなぁ」っていうのがわかっていくんですけど、私、それまで展開とか結末が分かりすぎると、ちょっとつまんないなぁって思うことが多かったんです。でもそのお話では、結末がわかってきたのにまだ終わらないでほしいって思ったんですよ。結末がわかってても、こんな面白いお話があるのかって衝撃的でした。あの時なんで台本買わなかったんだろうって、後悔しています。

それほど衝撃的だったんですね。なぜもう結末がわかっているのに、それを迎えて欲しくないって思ったのでしょう?

私が演じる時もそうなんですけど、台本があって展開はもう決まってるじゃないですか。演劇には、絶対に決まっている結末があって、必ずそれを迎えるわけなんですけど、なんて言うか決まっているからこそ、変えたいっていうか、なんか自分が、この役がそれをどうにかできるんじゃないかっていう、おごりじゃないですけどそういうのが自分にはあって、それを感じたんじゃないかなって思います。

俳優さんたちがそれぞれの役として舞台上で生きていて、本当に葛藤していて、そういうものに触れたということですね?

それがすごく近い感覚だと思います。OFF・OFFシアターの空間と舞台の設定である体育館倉庫っていうのもちょうどぴったり重なっていたし、それぞれの役の先生たちにもそれぞれ思って感じていることがあって、それを肌で感じて、その場で生きている人たちの、なんて言うか渦みたいなのに巻き込まれて本当にその場で彼らの話を聞いている気分になりました。

それを見た頃にはすでに俳優として活動されていたということですが、では、ししどさんが俳優を始めるきっかけになったことは何かあるのでしょうか?

それは、、、ないかもしれない、、、(笑)。これ飲み屋で聞かれて一番困る質問なんですよ(笑)。最初に言ったように最初は全然舞台役者になろうなんて考えてなくて、裏方のお手伝いとして関わり始めました。それで何にも知らないなって思って、ちゃんと舞台のこと学ぼうと扉座の研究所に入って。一年いろんな人に関わって、卒業公演を終えて、いつの間にか俳優楽しいってなって、それで続けてますね。色々端折ったけど(笑)。今はもちろんやりたくてやってるんですけどね。

最初は裏方志望だったんですね。

だから今も舞台上に立つのも恥ずかしいくらいで(笑)。

そうなんですね(笑)。そんなししどさんから見て俳優をやってて楽しいこと、嬉しいことはどんなところにあるんでしょう?

これは少し違うのかもしれないけど。親が自分の芝居観てくれた時に、なんか生き生きしてるねって言ってくれて。普通に働いていたこともあったんですけど、私、人付き合いが得意ではないんではなくて、顔の血色が悪かったらしいです(笑)。そうそう、思い出した。演劇やってると、台詞があるから、それを喋ると会話ができるんですよ!すごいなって思って!

はぁ(笑)。

私人付き合いが得意じゃないけれど、台詞があれば2時間会話が続くんですよ!それが演劇やってる理由の一つかもしれない(笑)。

逆に舞台上に立って役として生きることで、生き生きできるんですね?

そうかもしれない。

ではイヤな役を演じている時はどうなんでしょう? それでも生き生きするんでしょうか?

私ここ最近人に嫌がられる役が多くて。なんか舞台上で私が話すたびに客席からため息が聞こえるみたいな。でもイヤな役ってやればやるほど、その役を愛せるのは自分しかいなくて。もし私が客席で客観的に見たら、あの役イヤだなって思うかもしれないけど、演じていてイヤだなって思うことはないかなぁ。

では、少し『FRAGMENT』に話を移して、ししどさんが演じている雨宮美智に関してはどんな印象でしょうか?

なんか私と違う悩み方をしていて、ある種羨ましいなって思うかもしれない。私はいろんなことをすぐに決めないと先に進めないんですけど、美智さんは堅実そう。でも全然飲み屋であったら仲良くなれると思う(笑)。

主人公の白戸に関してはどうでしょう?

分かる分かるって思う。そうだよねって。彼くらいの歳、35歳くらいの自分を思い返して、彼みたいな過程を通ってきたなっていう部分もあって。もちろん違う部分があるけど。

この作品はどんな作品になるでしょう?

私の、これまで東京夜光さんの舞台を見ての印象なんですけど、劇場で見た方がいい舞台だなって思っていて。で、今回もそうなんじゃないかなって。『FRAGMENT』の中のセリフとかで、みんな思ってるけどわざわざ言葉には出さないよねって感じることがあって、それはぜひ劇場っていう空間で聞いて、見て、時間を共有してほしいなって思います。それぞれの役と一緒に考えてもらえる作品になるんではないかなと思っていますね。それはある意味で、私の原体験とも重なる演劇観、劇場という空間の特性なのかもしれないですね。


以上がインタビュー本編になります。
劇団東京夜光『FRAGMENT』、吉祥寺シアターにて上演いたします!

劇団東京夜光 公演
「FRAGMENT」
作・演出:川名幸宏
2023年、戦争が起きたら、俳優はどう生きるか。
その記憶は、誰の真実か—
2022年の本多劇場公演から1年半。
劇団東京夜光は”劇団とはいったい?”に勝手に向き合いながら1年間の創作を積み重ね、
劇場のある吉祥寺の1944年と2023年を繋いでみます。

1944年、B29東京空襲の最初の標的となったその場所に、2023年、あまりにも先が見えない 30 代俳優の男女ふたり。 広大な原っぱのベンチに座って、男の雑なプロポーズを皮切りに始まる痴話喧嘩。
その刹那、航空機の轟音。
地下壕に逃げ込んだ人々は、戦中の少女の日記を見つけ、“少女の記憶の真実”をとりとめもなく探しはじめる。
【出演】
丸⼭港都
草野峻平
笹本志穂(以上劇団東京夜光)

永⽥紗茅(柿喰う客)
阿久津京介(もあダむ)
堀⼝紗奈(劇団4ドル50セント)
⾓⽥萌果(劇団⻘年座) 
⽥中博⼠(東京タンバリン)
都倉有加(C-PLUS)
ししどともこ
中⼭⿇聖
【チケット料金】
一般前売=5,000円 U-25前売=3,500円
一般当日=5,500円 U-25当日=4,000円
アルテ友の会会員=4,500円(武蔵野文化生涯学習事業団でのみ取り扱い)
*全席指定・税込*U-25は当日引換券のみでの販売。当日受付にて要証明書提示《チケット取扱》
▼ローソンチケット▼
https://l-tike.com/play/mevent/?mid=438867
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【お問い合わせ】
劇団東京夜光
info@tokyoyako.com




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