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都市で生きることの面白さ

大学の下宿で京都の郊外に引っ越してから、むしろ人口の多い都市で生きることの面白さを感じます。それは都会の中の方が規則やルールを突破することを楽しめるからなのかもしれません。大雑把な括りですが「田舎」の方にはそういったものは少なく感じます。川に入ってもいいし、疲れたら道で座ったり寝転んでいても何ら不思議がない。一方で「都会」には排除ベンチや遊歩道など余白がなく、何にでも使える場所というのが少なくなっています。しかしむしろそのような制約の上であえて都市で遊ぶことに面白みを感じます。

ほとんど人がいない公園で身内の演奏会をしてみる

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2020年2月25日に友人たちとそのまた友人たちを招いて、地元の公園で勝手に楽器の練習という名の演奏会をやってみました。合計8名で、布団と机を持っていき擬似コタツとし、お菓子や飲み物を囲みながらだらだらと楽器を演奏したり聞いたりするという会です。

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初対面の人たちとコタツを囲んだあとにカルテットの演奏を聞くという流れでなかなか奇妙な体験でした、途中で何度も散歩中の方から注目されましたが寛容な方が多かったのか幸いにも通報されるなどはありませんでした。


Tactical urbanism(戦術的都市設計)

このような都市の余白を見つけ出し新しい使い方を投じてみる試みは、デザインにおいてTactical urbanism(戦術的都市設計)というアメリカ発の考え方として実践されています。

日本では行政が水辺を有効活用する為のミズベリングというプロジェクトや


民間においてもソトノバやRADなどによって都市の中で新しい空間を設ける実験的なアプローチが行われています。Tactical urbanismは市民参加型の都市計画実践であり、従来のトップダウン型での市民の課題や問題を解決する計画をStrategy(戦略)的な開発手法だとすれば、Tactical(戦略)にボトムアップ型で解決を目指すというところが根本的に違う部分です。このようなムーブメントは行政や政府が市民目線での課題を認識できず齟齬が生まれたこと、また時代背景とともに市民からの要望が多様化した為要請されたと考えられます。しかし公共空間にものを設置するとなるとやはり役所や権限を持つ人の認可が必要な部分があるので官民の連携が重要になるわけですので、実際そういった行政との会に参加できるのも一部の市民に偏ることもあるわけです。また運営や実装そのものへの参加を促すとしても当事者意識やプロジェクトへの興味の部分で全員の足並みを揃えることは非常に困難であることは十分に想像できます。このような背景から日本においての実践はまだまだ小規模であったり、市民への参加の促しが難しい部分があります。

個人が戦術的に生きていくことの可能性

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こういった現在行われているTactical urbanism的デザインの手法と自分のプロジェクトの違いは、行政の規定したものを飛び越えて市民側から勝手に新しいことを初めてしまうというグレーな部分です。この個人レベルでの実践に僕は日本においてのTactical urbanismの可能性を感じます。何か問題や、やりたいことがあったときに既存の枠組みを勝手に拡張したり、誤読することで都市の中を戦術的に生きていくこと。それを周囲の人からの反応さえも楽しみながら社会との折衷点を見つけるような姿勢がとれれば、各所でより散発的に面白い物事が発生するのではないでしょうか。これは何か問題が起きたときに体制に責任を押し付けず、自らの手で課題や欲求を解消しようとするデザイナーのマインドとほぼ同じことです、そう思って街の中を歩くとまだまだ使える余白や遊びが山ほどあるように感じられます。ただただ規制が増えて子供が遊ぶことすらも難しくなった都市の中では、公園などでも禁止事項や規則が増えていくことでできなくなることが増えています。その流れに対して諦めるのではなくむしろそのルールに乗っかって遊ぶ方法を模索する方が挑戦的で様々な可能性があるように感じられませんでしょうか。初めに紹介した音楽会のプロジェクトも目の前の課題解決を目指したものではありませんが都市で音楽を行うことがスタジオや施設を借りること、ひいては金銭をかけなければ音楽を体験することができないことへの批判も含まれているのかもしれないです。このプロジェクトは今後も継続的に行うのでその中で起きた変化も記せていければ良いかなと思います。

参考資料

The Global Phenomenon of Tactical Urbanism as an Indicator of New Forms of Citizenship / Cara Courage


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