見出し画像

"性の役割と永遠の命"テロメア、テロメラーゼ、がん細胞などについて

前回の記事では、
・100歳以上の人は9万2139人
・世界長寿ランキング1位~10位まで
・命の研究者たち
・遺伝と寿命 ヘイフリック限界
・ヘイフリック限界の回数
・最も長寿な生物

などを記事にしました。

今回も引き続きジェロントロジー(生物学、医学、自然科学、社会科学を統合した研究)などのお話をしていきます。

細胞の寿命を決める"テロメア"

前回は、ウサギのヘイフリック限界が20回とか、人間のヘイフリック限界は50回などと記載をしました。

では、どのようにしてヘイフリック限界の回数が決まるのでしょうか?

ヘイフリック限界の回数を決めているのは、下の図にある"テロメア"という構造です。これは染色体の安定性にすごく重要だと言われています。

National Human Genome Research Instituteより引用

生物が細胞分裂をする際、DNAをコピーします。その時に酵素がDNAの先っぽにくっついて、そこからコピーをするのですが、酵素がくっついたDNAの先っぽはダメになってしまうので、繰り返しコピーをするには先っぽをチョキっと切る必要があります。

そうしてどんどんDNAの先っぽを切っていくと、最終的に短くなってコピーができなくなります。それが細胞の寿命であり、その回数がヘイフリック限界なのです。

寿命を伸ばす"テロメラーゼ"

身体の色々な細胞のもとになる幹細胞は、普通の細胞と比べて、細胞分裂をしてもテロメアをちょびっと伸ばす酵素"テロメラーゼ"を活性化させることがあります。

テロメラーゼが活性化している人は、そうでない人と比べれば、ちょっとは長生きするかもしれません。

しかし、テロメラーゼがつねに活性化してしまうと、細胞が分裂してもDNAが短くなってまた伸びますから、いつまでたってもヘイフリック限界がこないという状況になります。

そういう細胞の一番典型的なものが、皆さんがよくご存知の"がん細胞"です。

もちろん、がん細胞の研究も近年飛躍的に進歩していて、がんを良くする方法なども、これから執筆していこうと思います。

永遠の細胞"HeLa細胞"

先述の"がん細胞"は、分裂をしてもどんどんテロメアを伸ばすので、いつまでたっても分裂が止まりません。つまり不死の細胞です。

不死の細胞は、死ねない、寿命のない細胞です。

おそらく世界で一番有名な"がん細胞"は、HeLa細胞(ヒーラさいぼう)と言う、子宮頸がんの細胞から培養された細胞で、世界中の医学や生物学の研究所で実験的に使われました。

HeLa細胞の有名な功績を挙げると、ポリオワクチンの開発などに大いに貢献しています。

HeLa細胞には色々とエピソードがありますのでご紹介すると、この細胞は1951年に31歳でこの世を去ったヘンリエッタ・ラックスさんの子宮頸がんの細胞を培養したもので、彼女の名前(Henrietta Lacks)のHeLaからその名が付きました。

ところがこのHeLa細胞は、彼女から無断で採取されたもので、遺族も知らなかったことから医療倫理に反すると批判を受け、1996年頃から、彼女や遺族を顕彰する行事を数年にわたって毎年おこなったり、医学などでHeLa細胞を使う際に色々な協定ができました。

他にも彼女とHeLa細胞を賞賛するような出来事はたくさんあり、ヘンリエッタ・ラックスさんとHeLa細胞を取り上げたドキュメンタリー映画"Modern Times: The Way of All Flesh"が、サンフランシスコ国際映画祭で最優秀科学・自然ドキュメンタリー賞を受賞しています。

nの細胞と2nの細胞

テロメラーゼがずっと活性化しているような細胞は死ぬことがありませんが、そうでなくても不死の細胞があります。それは、バクテリア(細菌)です。

細菌は毒に当たったり、物理的に押し潰されたりしない限りは基本的にいくら分裂しても死にません。そういう意味で細菌は、あらかじめ決まった寿命がなく、ラッキーであればどんどん分裂していきます。それを"nの細胞"と言います。

nの細胞を持っているのは、細菌やアメーバのような原生動物です。

人間の生殖細胞は卵子(n)と精子(n)が合わさって"2nの細胞"をつくりますから、多細胞生物の個体には寿命がくるのです。ただし、生殖細胞は減数分裂をして次世代へと引き継ぐことができれば、死なないと言うことができます。

つまり、私たちの身体はほぼ必ず死ぬけれど、自分の子供の子供の子供………たちは、ずっと生きていくということです。

ゾウリムシのオートガミー

ゾウリムシは、昔は分裂しているから死なない"nの細胞"と思われていましたが、実際は"2nの細胞"で、約300回の細胞分裂が限界です。

しかしゾウリムシは、自分にとって環境がわるくなると、自分で1個の細胞から分裂して、またくっつけて2nにすることが分かっています。

自分の体の中でnの細胞をつくって、それを合体させて2nの細胞にするということは、寿命をリセットできるということなのです。

性の役割

性の起源や役割というと、一般的には多様性(ダイバーシティ)を増やして絶滅を防ぐとか、Googleで「性の役割」と調べると、ジェンダーロールなど、ものすごい内容の答えが返ってきました。

「性の役割」と検索しても、「性役割」と検索されてしまいました

最新の研究では、どうやら性の役割は「生命をリセットして新しくすることなのではないか?」と考えている研究者もいらっしゃるようで、それはどういうことかと言うと、生物が細胞分裂をするとDNAに損傷が溜まっていくのですが、減数分裂(子供をつくる)の時に、その損傷を直すということが分かっています。

ですから減数分裂をした後のDNAは、かなりきれいな状態になって寿命がリセットされるわけです。

例えば、20歳の男女の子供と、40歳の男女との子供の寿命は、前者の方が長いとか、後者の方が短いというのはありませんよね。

私たちは生きている中で、自然に愛し合って、子供ができて、と当たり前にやっていますが、それは"新しく寿命をリセットしている"ということなのです。

ただし、人という形ができてから、後天的に寿命をリセットすることは、今のところかなり難しいと言えそうです。

ご質問やお悩みなどありましたら、いつでもご連絡下さい。ご覧いただきありがとうございました。

サポートは、さらに良い記事を執筆できるように研究費として活用いたします☺️✨️ いつもありがとうございます💖