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12.南極の石

南極大陸って、なんとなく「冒険」や「探検」のイメージがある。ユーラシア大陸、アフリカ大陸、北アメリカ大陸、南アメリカ大陸、オーストラリア大陸、そして南極大陸。6つの大陸のうち、唯一まだ未開拓な土地。人を寄せ付けず、誰のものでもない場所。

南極観測船『宗谷』が好きで、船の科学館によく見に行く。週末に訪れると、元乗組員だったボランティアガイドの方がいらっしゃって、当時のリアルなお話を伺ったこともある。私が子供の頃に、『南極物語』という映画があって、極寒の地に残された犬たちの物語が心を打った。ちなみに、越冬して生き残った「タロ」と「ジロ」のうち、「ジロ」は上野の国立科学博物館に剥製として、渋谷の「ハチ公」とともに並んでいる。

南極は、一般の観光客を寄せ付けない未開の極地というイメージだったが、実はツアーもあったりして、チリ経由からチャーター機で訪れるなど、近年観光客も増えているようだ。

南極の石

さて、日比谷公園にある南極の石である。案内板がなければ、ただの石としてスルーしてしまいそうになるが。しっかり立派な日比谷公園の展示物である。

案内板には、こう書かれている。

この石は、南極昭和基地から4kmの地点にある東オングル島の慎太郎山(標高40m)で、日本の南極観測隊が採取しました。重さは150kgの片麻岩です。南極観測船「ふじ」が持ち帰り、昭和41年4月14日。この公園に設置されました。

日比谷公園の案内板より

まず、南極はどこの国のものでもない。南極条例により、特定の国の領土はないということが決められている。そのうえで、南極には様々な国の観測基地が設置されている。古いものは、1904年に開設されたアルゼンチンのオルカダス基地、1911年のオーストラリア マックォーリー基地、チリ海軍によるカピタン・アルツロ・プラット基地やヘネラル・ベルナルド・ヒギンス基地もそれぞれ1947年と1948年につくられた。通年で使われている基地や、あるいは夏だけのもの。無人の基地や、現在使われていないものも含め、南極には30か国、60以上の観測基地が存在する。日本からは、昭和基地(1957年開設)、みずほ基地(1970年開設)、あすか基地(1985年開設)、ドームふじ基地(1995年開設)が設置され、国立極地研究所による南極観測が行われている。

今回紹介する日比谷公園の石は、東オングル島の昭和基地から南方へ4kmの地点にある、慎太郎山と呼ばれる場所から持ってきたもの。慎太郎山の正確な位置がわからなかったのだが、海岸沿いに昭和基地があるので、宗谷海岸とプリンス・オラフ キストから内陸寄りに少し離れた場所ということだろうか。重さ150kgの片麻岩、つまり麻糸が絡み合うような特徴的な縞模様をした岩石である。一般的には、石英や長石をベースに、雲母類や角閃石類、ざくろ石類などが混ざっている岩石で、片麻状構造をしているものを片麻岩と呼ぶ。

この石を持ち帰った南極観測船「ふじ」は、「宗谷」に続く二代目の観測船で、1965年(昭和40年)から1983年(昭和58年)までの18年間、南極地域観測隊輸送に従事した。

南極観測は、1962年(昭和37年)の宗谷による第6次観測隊以降一時中断していたが、1963年(昭和38年)8月20日の閣議決定「南極地域観測の再開について」に基づき再開されることとなり、二代目の南極観測船「ふじ」が建造された。1965年(昭和40年)3月18日に進水式が行われ、同年11月に第7次観測隊が南極に向けて出発。翌1966年(昭和41年)1月に昭和基地に接岸した。日比谷公園に「南極の石」が設置されたのが昭和41年4月だから、持ち帰ってきたのはこの第7次観測隊だっただろう。この第7次以降毎年観測隊が派遣され、冬の間も越冬隊員が南極にいる。2023年現在、第64次南極観測が実施され、第65次の準備が進められている。

参考資料

都立日比谷公園(Hibiya Park, Tokyo) 園長の採れたて情報
https://twitter.com/ParksHibiya/status/1666690771607584768
南極観測|国立極地研究所
https://www.nipr.ac.jp/antarctic/


「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。