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ガブリエル・夏 27 「ブタウサギ」

「美味しい〜〜。」

もう他に誰もいなくなった駅のホームで、レイが、鼻と鼻の下をよく動かして、空気を食べている。あっちを向いたりこっちを向いたり、時々ぴょこんぴょこんと跳ねて、2、3歩先の空気を食べ比べて、嬉しそうにもぐもぐしている。まみもはレイの首にかかっているプレッツェルを、少しちぎって、この生き物に食べさせてみた。レイウサギは、それを鼻でくんくん嗅いでから、鼻の下を上下に素早く動かして、もぐもぐ食べた。モソモソするだろうと、水も飲ませてみる。少しこぼしながら飲んで、ちょっとむせた。こんなにおもしろくて可愛いものが、目の前に生きていて動いてる。まみもは、柚と研が小さかった頃、よく同じように感動したのを思い出した。命は始め、すごくきれいで、可愛い。みんな新しく得たものでどんどんレイヤーを作って、それを見えなくしていって、そのうち持ってるかどうかもわからなくしてしまう。レイは、あのまま大きくなっていて、きれいがレイヤーで覆われていないんだなあ。 知識も、優しい気持ちも、できるようになったこともたくさん、そっちは大人かそれ以上にあるのに、どういう配置でこういう風にいられるんだろう。


「ウサギくん、行くよ。」
「どっちに?」
「もっと美味しい空気がある方。ナビゲーターは魂だ。」
「Oink Oink! (英語圏のブタの鳴き声)」
「え!ブタだったの?!」


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涙にけむる星影は
遠い空からのメッセージ
誰かがそこに置いたのか
初めにそこにあったのか
四月の花は桜色
未来の誰かにプレゼント
季節にもえる花言葉
妖精達の合言葉
ピリー ピリー
ナビゲーターは魂だ

生きている事の証明に
私の涙をビンにつめ
宇宙のどこかに置きましょう
結んでほどくメッセージ
私はきっと悲しみの
真ん中あたりで泣いている
私はきっと喜びの
真っただ中で笑うんだ
ピリー ピリー 
ナビゲーターは魂だ

あーあー この旅は 気楽な帰り道
のたれ死んだ所で
本当のふるさと
あーあー そうなのか
そういう事なのか

水平線を越えてゆけ
船出の空には風が吹く
穴ボコだらけの船底さ
錨は二度と降ろさない
どこまで続く海原よ
恐竜時代の思い出を
うたっておくれいつまでも 
忘れてしまわないように
ピリー ピリー
ナビゲーターは魂だ
ピリー ピリー
ナビゲーターは魂だ

(ナビゲーター/ ブルーハーツ)



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