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短編小説:仕事と興味の交差点

就職してから4年が経った。新卒で働き始めた頃は、新しい自分を見つける喜びと、広がる可能性に胸を躍らせていた。今はもう職場にも慣れ、オフィスで「今日は雨か」などと物思いに更けている。

ぼくの会社はいわゆる大手企業だ。所属している営業部門だけでなく、SE、製造、販売、研究開発、マーケティングなどなど、さまざまな職種が存在する。事業領域も宇宙、防衛、医療、都市、自治体、国など多様だ。
ふと、大学の規模感と少し似ているな、と思った。異なる学部・専攻領域がシナジーを生み、新たな知識やアイデアが生まれることは大学でもある。

「やっぱり、別の学部に進んでおけばよかったのかな?」

大学生の時に、ほかの学部にも興味を抱くことはよくある。ぼくもその一人だった。政治学部に入学し、政治を学んでいくうちに、法律にも興味を抱いたことがある。隣の芝生が青く見えただけかもしれない。もし法学部に入学していたら、どうなっていただろうか。いや、政治学部で学んだからこそ法にも興味が湧いたんだ。最初から法学部の選択肢はなかっただろうな。

今更どうしようもないことを考えていると、同期からチャットがきた。
「まだこれない?」
今日は同期とランチの予定があった。時計は12時を過ぎている。遅刻していた。急いでカフェテリアに行くと、亮太と朝子がすでに席についている。ぼくも食事を買って席に着いた。二人はなにやらキャリアについて話をしている。

亮太:都市開発プロジェクトのプロモーションに興味あるんよね。
朝子:いいじゃん。亮太、今もマーケティング本部だから今まで覚えたこととか応用できそうだね~。
亮太:今までは会社全体の発信って感じだったけど、これからはもっと具体的な事業の発信だから、勉強しないとだけどね。朝子はこの先どうすんの?
朝子:今のままでいいかな。しばらくは医療業界で営業を続けていくつもりだよ。
亮太:そうなんだ~。まあ朝子は医療に興味あって、この会社に来たんだもんね。
朝子:そうそう。営業続けて医療業界の課題感が見えてたら、将来的には事業開発の仕事もやってみたいかも。ほかの業界は、、、今のところは興味ないかな。
亮太:まあ焦らなくていいでしょ。うちは業種広いし、チャレンジしたくなったら色々選択肢はあるじゃん。
朝子:まあね。

大学時代に政治学部で学ぶことで法にも興味を持った自分と、仕事を通じて興味を育くんでいった同期を重ね合わせた。大学とは異なり、社会人生活は長く続いていく。いまは目の前の仕事に没頭しているが、将来新たな興味が湧く可能性もある。そのときは、自分の成長と可能性を広げていける道へと、一歩一歩進んでいこうと思った。

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