私的偏愛録 其の十八 近藤聡乃『ニューヨークで考え中』

 三十数年生きてきて、積極的にやり直したいなぁと思うことはないけれど。ただ、ぼんやりとやってみればよかったと思うことは今のところ二つある。
 一つ目は、下宿目的で京都か奈良の大学に通うこと。森見登美彦作品にあの頃どっぷりはまっていたことや、今もお笑いや美術館、本屋目的で行くこともあるので、一度(何回生呼びに憧れがあるので、やはり学生のうちに)住んでみたかったなぁ、と思ったりする。
 もう一つは、海外旅行。今だにパスポートすら持っていないわたしは、二十代の、体力もあり、何事にも億劫にならないうちに行っておけばよかったと思っている(誘ってくれる、付き合ってくれる友人がいる内に、という意味でも二十代がベストだと思う)。
 そうすれば今ごろ、人をダメにするソファに寝転びながらこれを書いているわたしではなく。知らない国の片隅で、猫とたんたんとした日常を過ごしていたかもしれない。
 『ニューヨークで考え中』を読んでいると、海外生活の憧れの部分ももちろんあるけれど。生活ってこういうことなんだろうな、と改めて思ったりできる。だから、今現在の自身のなんてことない暮らしも愛おしく感じられるのだ。


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