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育休を取るので、BtoB SaaS のレベニューマネージャーの職務と2年間の学びをまとめました

こんにちは、株式会社HERPの冨田です。

スクラム採用を実現する採用管理システム「HERP Hire」を提供しているBtoB SaaS企業でレベニューチームマネージャーをしています。
(HERPでは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4つのファンクションをもつチームをレベニューチームと呼んでいます。)

私事ではございますが、9月に第一子を授かることをきっかけに育休を取得することになりました。
今回の記事では、レベニューチームの運営に関わる業務が剥がれる良いタイミングということで、レベニューマネージャーとして何をやっていたかとトライ&エラーを通じて得た学びを共有したいと思います。

(↑この記事を書いた2019年7月時点からチームも4人から15人に増えました。感慨深い。。)

なぜ ”レベニューマネージャー” だったのか

そもそもなぜHERPではビジネスサイドのことを”収益”を意味する”レベニュー”という単語を使っているかについて説明します。

私がレベニューマネージャーをすることになった2019年7月にHERPが置かれていたのは以下のような状況でした。

・シリーズA の調達がクロージング間近で、採用に投資しながら中長期で成長できるよう組織化していきたい
・プロダクトは、競合優位性がありチャーンレートも低いターゲットセグメントが明確になりつつあり、そのセグメントに対するカバレッジを上げていきたい
・次の調達ラウンドを見据え、一定以上のMRRの成長率を求めたい

一方でビジネスサイドには以下のような課題がありました。

・営業の現場にCEO・COOが出て、”力技”での案件創出と新規受注によって成長が生み出されており、収益を継続的に向上させていくモデルがあるとは言えない状態
・事業成長の欲求自体は高いものの、週単位・月単位・Q単位といったケイデンスでの事業目標を日々のアクションにつながるKPIに分解し目標達成にコミットするという習慣が組織に根付いていない状態

上記のような背景から、解決策のひとつとしてレベニューマネージャーを設置することで、再現性をもって収益を上げる組織機能を手に入れることが当時もっともやりたかったことになります。

余談ですが、組織においてある役割を定義することが持つ影響範囲はとても大きいです。例えば”レベニュー”と名付けることは、”開発”と”レベニュー”で区別することや、”顧客の体験”よりも”収益”の優先度を上げるというメッセージを孕むことにつながります。

この現象は、ある程度ピラミッド型の組織設計をする以上大なり小なり出てくるジレンマであり、発生しないようにするよりは上手く付き合うことが大切だと考えています。

対処法として、役割ありきではなく、今の組織課題を解決するために何の役割が必要かから考えることが重要だと思っています。例えばHERPでは、再現性をもって収益を上げる組織機能がある程度育まれた今、レベニューマネージャーという存在は本当に必要なのかから議論をしています。

レベニューマネージャーの職務

本題のレベニューマネージャーの職務について書き下してみます。タイトルで”職務”と書いたものの職能やコンピテンシーなどの議論まではせずに、「期待される役割・成果」と「主な業務内容」という形でまとめてみます。

期待される役割・成果

関係者と擦り合わせたMRRの成長目標を再現性をもって達成すること
(※MRR:HERPの事業において最重要視しているビジネス指標)

主な業務内容

ターゲティング:PMFしているマーケットの状況を描写し、セグメンテーションすることで提供価値との対応を明確にする
プライシング:ターゲットへの提供価値と開発状況などを考慮してプライシングを見直す
モデル化:ターゲット顧客について顧客フェーズを定義してモデル化し、メトリクスを定義、常時計測可能な状態にする
高速改善:メトリクスを定点観測しボトルネックを特定し、解消する(ボトルネックを別の場所に移す)
説明責任:MRRの変動に関してステークホルダーに対して説明責任を果たす
採用&育成:中長期での再現性を加味して採用し、メンバーの特性と志向をもとに、役割の期待をすり合わせ、ハイパフォームする環境を用意する

2年間奮闘してみての学び

最後に、主な業務内容で書き出した各項目について、経験則的な学びをメモしていきたいと思います。

ターゲティングは、顧客の状況から考える

ターゲティングは意外と定義が甘い企業が多い印象を受ける項目です。ブレると量だけの目標と確率論の世界になり、かなり不毛で辛い戦いを強いられることになります。

また、定義する際にはよくある二軸の整理にいきなり飛びつくと上手くいかないことが多いです。選んでくれる顧客とそうでない顧客では置かれているビジネス環境の違いが必ずあるので、その共通項を抽出してからセグメンテーションすることで、プライシングやモデル化につながるターゲティングが可能になります。

参考になる書籍として、ジョブ理論がおすすめです。

プライシングは、半年に1回は見直す

プライシングは、SaaSの収益向上において非常に強力な手段です。一方で、料金体系の変更は組織として慣れていないとオペレーションへの負担が大きくなりスピードが緩むリスクがあります。

正しい値付けはなく、ターゲットや機能の進化とともの変わる前提のもと、変更にあたっての検討プロセスと変更になったときのオペレーションを確立させ、最低でも半年に1度は変更しようと思えばできる状態をつくることが重要です。「プライシングを変える」という組織ケイパビリティのあるSaaSのビジネスチームはかなり強いです。

参考記事としては下記がおすすめです。

モデル化と高速改善はセットで考える

The Model という考え方が浸透した副作用で、モデルありき分業ありきで考えてしまうバイアスが強く働いているように感じます。

私自身は、モデル化の最大の利点はレベニュープロセスにおけるボトルネックの特定が容易になる点にあると考えています。「制約条件の理論」が機能するように設計し、ボトルネックが発生している箇所には惜しみなく工数を投下して直ちに解決を図ることで、新規受注までの数字は必ず改善します。

「制約条件の理論」はSaaS界隈ではまだあまり語られていない印象ですが、下記の書籍などが参考になります。はじめて概念に触れたときは軽く感動しました。

説明責任は、チームメンバーに対して一番に果たす

レポーティングは、どの企業もされているとは思いますが経営者・株主向けに終始し、チームメンバーに果たせていないとチームパフォーマンスが下がるという経験則を得ました。

特に、SaaSのビジネスチームは分業体制が最適になることが多いため、事業の全体像をキャッチアップするコストが高く、他のファンクションや開発がどうなっているかを網羅的かつ効率的にインプットするための工夫をマネジメント側がせずして、メンバーに自律的なふるまいを期待するのは難しいと考えます。下記書籍での言及が参考になると思います。

また、ケイデンス(=リズム)も重要です。効率的に説明責任を果たし、メンバーの情報格差を是正しつつ、組織にモメンタムをもたらすことができるためです。HERPでの取り組みについて、弊社のCOO・徳永がまとめているのでぜひ参考にしてみてください。

育成は、人生に寄り添う

この2年でもっとも苦しんだテーマです。もともとワークとライフで区別したときにライフ側には踏み込まないことがリスペクトの表し方だと思っていました。この頃は代表の庄田からも「ストイックすぎて人間的じゃない一面がある」と言われるような状態でしたw

スタートアップに身を置いているメンバーはそれぞれ人生において大なり小なり覚悟をもって臨んでおり、それに心から関心を寄せて理解することを大切にするようになりました。

まだまだではありますが、事業の方向性とアラインするような配置を実現できたときには当事者意識をもって自律的に動くことができるという手応えをもつことができるようになりました。

愛は技術ですね。

マネジメントに関して困ったときに立ち戻るのは私の場合はこの記事です。

最後に

HERPは「採用2.0を実現する」という壮大なミッションを掲げています。土台となるレベニューチームの芽は着実に伸びていますが、まだまだ最上とは言えない状態です。ミッションを実現するぴっかぴかのサービスとそれを支える強くしなやかなチームが必要です。

これからさらに面白いフェーズを迎える会社ですので、少しでも興味をもってくださったら、ぜひカジュアルでお話させてください。


以上です。未熟なレベニューマネージャーの拙文にお付き合いいただきありがとうございました。少しでも参考になれば嬉しいです。
省略した説明も多々あるので細かいご質問は、TwitterのDMを開放しておりますのでお気軽にご連絡ください。
Twitter:@tomi_dada_shin



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