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【日記】 「重版出来」

夕食を食べ終わり食器を片付けていたら、デビュー作を担当してくださっている編集者から「重版が決まった!」と連絡が入った。
発売からまだ5日しかたっていないのに……。
現実の出来事だとは思えず、「えっ? えっ? えっ?」と言いながら、キッチンをうろつく。 
それでも落ち着かず、気づいたら食器棚から使っていないお椀を取り出し、味噌汁を注ごうとしていた。
動揺ここに極まれり。

お椀を戻し、ソファに座り、ゆっくりと息を吐く。
自分の手が少し震えてることを認識できるくらいには、落ち着きを取り戻す。
あらためて、スマホに表示された「重版」の2文字を見つめる。

浮かんだのは喜びよりも、心からの感謝と微かなプレッシャー。

無名の新人作家の小説を、書店の売り場に並べてもらうのがどれほど大変なことか。僕にだってわかる。
出版社の皆さんの地道で懸命な努力と、書店員の皆さんの熱い心意気が合わさらないと成し得ない。
そこに、未知なる物語に価値を見出す読み手の感性が重なった時に、初めて本が物理的にも売り上げとしても動き出す。
もはや奇跡と言っても過言ではないと思う。

だからこそ、重版はめちゃくちゃ嬉しいし、背筋が伸びる。
自分の書いた小説が、誰かのもとに届き始めている実感。
同時に、これだけ期待してもらっているからには、自分も努力し続けて、その期待に応えたいと切実に思う。

重版の時ってこんな気持ちになるんだな。
想像していたのと違っていて、やっぱり面白い。


photo 雨樹一期

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