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私は間違っていた!

ユマニチュードを学んで、自分は間違いを何年も続けていたと知った。

例えば入浴を嫌がる入居者がいて、毎回断られ続けて数週間...今日こそは入れねば!という時がある。

本人が嫌がっても、諦めない強い意志で突き進む。
脱衣所に連れて行き「やめて〜」と言われても「じゃあ、お着替えだけでも」とか言って脱衣させて、目をつり上がらせて怒っている入居者を「数週間も入浴しない不潔な人」として認識し、「こんなに汚いのだから、本人が嫌がっても入浴させるのが正しい事。」と自分を奮い立たせる。

それは仕方ない事で、清潔にするのが世のため本人のためと思い込んでいた。

ユマニチュードの教えは「尊厳」優先。
嫌がったら「諦める勇気」を持つように教えられる。
もしくは技術を駆使して、本人にいい気分で入浴して頂く。

まずは「出会いの場面」から作り込んでいく。ノックして直ぐにはドアを開けない。ノックの音に相手が気付くのを待つ。つまり、相手にも出会いの準備をしてもらう。

(中略)
ベッドサイドまで辿りついたら、目を合わせて手を握ってとびきりの笑顔でこう言うのだ。

「〇〇さん、こんにちは。富谷といいます。〇〇さんに会いに来ました。」

「お会いできて本当に嬉しいです。」

「よかったら一緒にお話ししませんか?」または
「お天気がいいので、一緒にお散歩しましょう」

ゆっくりと低めのトーン、落ち着いた口調で伝える。

ユマニチュードの対応はまだ先があるが、とにかくこの声かけが効くのだ。普段は仏頂面の男性が、私の顔をじっと見てくれるだけでなく、表情が和らぎ口調も穏やかになる。

ただし入浴嫌いな人には「入浴」という単語は出さない。気分転換を促すような雰囲気で、居室から連れ出す。会話は止めず、目を合わせて、体に触れながら、

「お顔の色がイイですね。とてもお元気そうです。」
「ここから綺麗なお花が見えるんですよ。〇〇さんに見せてあげたかったんです。」

あなたを大切に思っている、と言う事を言語化して伝える。これを続けて、安心して入浴できるように気分上々になってくれる事を目指す。もちろん入浴中も声かけを続け、触れて、目を合わせる。

尊厳を傷つけずにケアをすると言うのはこういう事か、と私は目から鱗が落ちた。

嫌な気分にさせるくらいなら、中止するという選択。それは私にはなかった。
私だけでなく、多くの看護師は尊厳よりも清潔優先に考えている。尊厳を大切にする技術など習ってこなかったのだ。

尊厳は技術で伝える事ができる。そしてそれは何よりも優先される事。
ああ、知る事が出来て良かった。
有難いことに、私はもっと看護の仕事が好きになりそうだ。

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