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【エッセイ】ただ、終わりを信頼すること。

好きだったバンドが解散を発表した。雨が降る夜の事だった。

物事の終わりというのは大抵突然来る。祖父が他界した時も、彼女に振られた時もそうだった。

いや、本当は終わりの予兆はあったのかもしれない。祖父が亡くなる前も、祖父が体調を崩していることを母から聞いていたし、別れる直前の彼女のLINEは少し素っ気なかった気もする。でも、当時の僕はそうした予兆をあまり気に留めていなかった。そうした事実は些細なものだと思っていた。だから、突然終わりがきたように見えたのかもしれない。人間とは、えてして都合の悪い未来を考えられない生き物だ。

今回もそうだ。そのバンドはメジャーデビューを昨年果たしていて、ドラマへの楽曲提供もしていた。若くて勢いのあるバンドだと思っていた。だから解散なんてするはずないと思っていたし、もしくはそれすらも考えていなかったのかもしれない。

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