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スイス企業に転職が決まった話

はじめに

スイス・ジュネーブに本社があるSonarSourceに転職が決まりました。
自分がこの会社を受けた際、スイスでエンジニアをしている人の情報をほとんど見つけることができなかったこともあり、自分が持っている情報を積極的にオープンにして行きたいと思い筆を取りました。
また、私は自身もさまざまな方に助けられて転職が決まったので、自分と同様の思いを持つ方の手助けになりたいと思っています。
詳しくは以下のpodcastでも話しています。

転職先について

2006年創業で、SonarCloudやオープンソースのSonarQubeといったClean Codeを実現するための解析ツールを開発している会社です。
スイス以外にもアメリカやフランスにオフィスがあります。2022年に$412M(600億円相当)の資金調達をしています。

SonarCloud Demo

なぜスイスか

結論から言うとスイスに行くことになったのは偶然でした。

私は大学生の頃にバックパッカーや留学を経験してから、日本と違う世界を体験するのが楽しく、海外に住みたいと思うようになりました。

卒業後文系ながらソフトウェアエンジニアのパスを歩み始めたものの、本当にエンジニアでやっていけるのだろうか、と新卒3年目くらいまでは悩んでいました。
そんな中で2020年にtakusembaさんの海外で就職した話という記事に出会いました。
これを読んで、エンジニアの海外での可能性の大きさと、自分自身の努力が全く足りていないことに気づき、2年以内にソフトウェアエンジニアとして海外で働くことを決意し邁進しました。(2022年内の渡航が目標でしたが、紆余曲折あって1年多くかかりました。)

私のキャリアの経緯について詳しくはCo-HostをしているLondon Tech Talkでもお話ししています。

当初は英語圏を希望しており、直近1年ではオーストラリアやイギリスへの渡航を狙っていました。また、タイに1年交換留学したこともあり違う世界を体験したいと思っていたので、アジア圏は候補に入れていませんでした。

今回は縁あってスイスのSonarSourceからオファーを頂き、スイスがとても住みやすい国であることもわかったので、オファーを受けることに決めました。

海外転職ルート

海外転職をすると決めてから、どうやっていくかを考えました。
主に以下の5つのルートがあると考えていました。

  1. 海外企業に直接アプライする

  2. 海外の日系企業にアプライする

  3. 日本の外資企業にジョインして海外支部や本社への異動・転籍する

  4. 日本の日系企業にジョインして駐在・転籍を狙う

  5. 海外の学校(資格学校・大学院など)を経由してそのまま就職する

他にも「海外で起業する」などさまざまな選択肢があると思います。
私個人としてはそれぞれの方法を一通り試してみました。

1. 海外企業に直接アプライする

takusembaさんのNote記事ではまさにこのやり方で転職をされていたので、真っ先にこの方法を検討しました。
コネがほとんどなかったので、まずLinkedInでイギリス等の企業に気になる企業に5-10社程度応募してみましたが、返信は全くありませんでした。今思うと、その会社のリクルーターやエンジニアを見つけてフォローアップの連絡を入れるなどして印象付けをしてもよかったかなと思います。

その他にもテック会@ヨーロッパのDiscord チャンネルに参加して、就職情報を漁りました。結果的に落ちてしましましたが、あるイギリスの企業のリファラルをしていただくこともできました。とても優しいコミュニティです。

カナダやヨーロッパ諸国のテック関連のビザが出やすい国は日本からでもオファーを比較的得やすそうですが、一方でかなり数を打つ必要が出てくるはずなのでめげない心が必要になりそうです。

また、ワーホリビザが出る国では、ワーホリ等を利用して現地に渡ってから就職活動することで確度を高めることができそうです。私は一時期オーストラリアでのワーホリ→転職活動を検討していました。
アメリカにも興味がありましたが、現地での学位がない限りビザが出にくそうだったのですぐに諦めました。

2. 海外の日系企業にアプライする

日本人が企業した海外発のTech企業も増えてきており、一般的な海外の企業よりは敷居が低いと思います。
知る限りではTreasure Data、Launchable, Autifyなどがその一例です。他にもあれば教えてほしいです。

私はHOMMAというアメリカのスタートアップで業務委託として副業で働かせてもらっていました。本ジョインにはなりませんでしたが、エンジニアとしてとてもいい経験ができました。

3. 日本の外資企業にジョインして海外支部や本社への異動・転籍する

ここ一年はテック不況の影響で枠が少なく私はあまりトライできませんでした。
ただ、現在外資で働いていない方にとっては海外の仕事文化に慣れる経験もでき、その後につながりやすいのではないでしょうか。

4. 日本の日系企業にジョインして駐在・転籍を狙う

日本人が海外で働くための古からの王道ルートですが、景気や業績によって海外ブランチが縮小する可能性もあるので一筋縄ではいかないと思います。
私は海外展開をしている/狙っている日本のTech企業をいくつか受けました。
例を挙げるとメルカリ、Ubie、Woven Planet、Zealsなどです。

日本にいる外国人やバイリンガル向けの求人サイト、Japan Devでそうした求人を見つけやすいと思います。

3,4の方法は一度日本での就職を経由するので不確実性が高くなります。
アメリカのL1ビザを狙う場合はフルタイムで日本で一年以上働く必要があるなどの制約があると聞きました。

5. 海外の学校(資格学校・大学院など)を経由してそのまま就職する

アメリカなどの国でビザを取るためにはアメリカの学位が重要と言われています。
私もジョージア工科大学などのオンライン大学院の受験を検討しましたが、なるべく早く海外で働きたかったので今から2年以上大学で勉強・研究する覚悟ができませんでした。
自分の友人のTeppei Iwaokaがまさにこれをやっているので興味がある人は彼に話を聞いてみてください。
ジョージア工科大のCS修士に合格するまで(出願準備編)]

転職活動の準備

海外転職活動自体は足掛け1年ほどやっていました。
Ken Wagatsumaさんにメンターとして全面的にサポートいただけたことがかなり大きかったです。
その中でも有効だった対策について紹介したいと思います。

1. レジュメ

バンクーバーのえんじに屋で紹介されていたThe Resume That Got Me Into Google and Bloomberg (software engineer resume tips)のテンプレートを利用しました。

(ちなみにバンクーバーのえんじに屋は自分の海外転職モチベーションを大きく高めてくれたpodcastの一つです。)

さらにそのレジュメをKenさんにレビューしてもらい、主に以下のようなコメントをいただきました。

  • アピールポイントにならない部分は削ぎ落とす(自分の場合は大学情報など)

  • 具体的な数値を書く(e.g. ビルド時間を○分短縮した、Xms処理を早くした)

詳しくはLondon Tech Talkの以下の回を聞いていただきたいです。

結果として、面接官に少なくとも3度はレジュメを褒められました。(お世辞かも)

資格

エンジニアとして最低限の知識の保証となるCS学位を持っていないのでいくつか資格を取得して補うことにしました。(Kenさん、アドバイスありがとうございます。)
私はSREとしてKubernetesの構築・運用が強みの一つだったので、CKAとCKADを取得し、レジュメに記載しました。
後述しますが、英語力の証明としてIELTSも受験しました。

2. LinkedIn

LinkedInプロフィールは海外リクルータの目に留まるようすべて英語で書きました。こなれた英語を書く自信がなかったので、LinkedInで見つけた別のSREの方々のプロフィールをいくつか参考にしました。
僕はできませんでしたが、推薦文を書いてもらったり、自分のスキルにEndorsementをつけてもらうのもタレントサーチに引っかかる上で有効だと妻(外資企業でTech Recruitingに関わっている)が言っていました。

結果として日本国内の外資や英語公用語企業に強いリクルータの方や、欧米企業のリクルータ3社から連絡をいただきました。内定を承諾したSonarもLinkedIn経由でリクルータから連絡が来たことが全ての始まりでした。

3. 面接対策

コーディング試験対策

前職でのコーディング機会があまり多くなかったこともあり、私の苦手分野でした。
HackerrankでEasy ~ Mediumの問題を10問程度解いた上で、Kenさんに2回ほど模擬コーディングインタビューをしていただき、フィードバックを受けました。
Hash MapやLinked ListなどのClassを自分で実装してみては、というアドバイスを受け、Pythonで実装する練習をしたのがかなり効果的だったと思います。

システムデザインインタビュー対策

王道ですがAlex XuさんのSystem Design Interviewを読みました。

いかに効果的な質問をしてシステム要件を確定していけるかが鍵になる、という点が目から鱗でした。やはりここでもコミュニケーションが重要ですね。

コミュニケーション

対面式のコーディング試験では技術力のみならず面接官とのコミュニケーションも評価のポイントになります。
わからない場合は「これわからないけど、どうやるか知ってる?」と面接官に聞いたり、黙り込まずに自分の考えを口にしてみることも大事だとKenさんとの模擬面接から学びました。面接官にとっても一緒に働いて楽しい人に入って欲しいので、楽しんで臨むのがなにより大切です。

Kenさんとの模擬インタビューがなければ絶対に通っていなかったので、もし模擬インタビューをしてくれそうな人がいたら頼むといいと思います。私でよければ相手をしますので、ご連絡ください。

4. 英語力

スイスのような非英語圏であっても私のような外国人を受け入れる企業は英語が社内公用語になることが多いはずです。面接でのコミュニケーションを円滑に進める上でも英語力は重要です。
当初イギリスやオーストラリアを目指していたので、私は今年1月に後々ビザ申請に必要になるIELTS Generalを受験し、Overall 7.5が取れました。
おそらく始める前の実力は6年前に受けた際の5.5と同じレベルだったと思うので、Overallで2程度上がったことになります。
以下に自分が1年半ほど続けた学習方法を紹介します。

リスニング・スピーキング

英語のPodcastをほぼ毎日聞き、できるときはディクテーションしていました。ディクテーションはリスニングとスピーキング向上に有効であると様々なところで言われていることもあり効果は大きかったと思います。なるべく話者の話し方やトーンをコピーするようにしました。
駅まで歩く道や洗濯物を干す際など隙間時間で聞き、ディクテーションするようにしました。歩きながらディクテーションするのを人に聞かれると恥ずかしいですが、人生の時間は限られているので背に腹は変えられません。
一度だと十分に理解できないので、同じPodcastを2~3回聞くことが多いです。
以下自分がよく聞いているPodcastです。

独り言で考えていることを英語にして話すことも効果的だと思います。
また最近は発音矯正のためにELSA Speakingを使い始めました。

リーディング

英語に慣れるために情報を仕入れる際はできるだけ英語で仕入れるようにしていました。
例えばAWSの公式ドキュメントを読む際や、エラーメッセージ等を調べる際にも英語で調べるようにしました。スマホやPCの設定も全て英語にしています。
最初は時間がかかりましたが、今では慣れてきて機械翻訳された日本語よりは英語の方がわかりやすいと感じます。

ライティング

前職の職場がほぼ外国人だったので、ドキュメントは全て英語で書いたのがいい練習になっていました。特にレビューは受けていないのでライティング力が上がったか微妙ですが、Grammerlyなどでのスペルチェックは多少効果があったと思います。今ではChatGPTがあるのでAIに丸ごと書いてもらうことも可能ですね。

転職活動の総括

転職活動は各社のプラクティスを垣間見る機会にもなり、大変でしたが学びが多く楽しかったです。在日本企業は10社程度受けていましたが、海外企業の面接は数社のみでオファーをもらえたので、かなり上手くことが進んだ方だと思います。

今後の展望

8月に第一子が生まれた中での渡航になるので大変なことも多いと思いますが、次のチャレンジがとても楽しみです。スイスは物価が高いこともあり、ひとまずは生活の安定が最優先になりそうです。引き続き頑張ります。

この場を借りてKenさんには改めて感謝を述べさせていただきたいです。本当にありがとうございました!
次は僕もどなたかのサポートをする立場になれたら嬉しいなと思います。気になることがあればお声がけください。


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