スピーチ原稿(3)今を生き抜く新しい知恵—鈍感力

「あんた鈍いね」「鈍感だな、あなた」そういわれたらどう思いますか? 

 嬉しくないよね。おこりますよね。

 しかし、これからは喜んでください。そういわれたら、あなたが、今を生き抜く新しい知恵、鈍感力を持っているからです。ほとんどの皆さんが、えーという顔をされている。安心してください。私の話を聞けばなぜだかわかります。それにすぐに誰でも鈍感になれますよ。

 今年(2014年)の4月に作家の渡辺淳一さんが亡くなりました。『失楽園』とか『愛の流刑地』などの不倫をテーマにした作品で有名な作家さんでした。

 その渡辺淳一さんが、月刊プレイボーイで、以前、面白いエッセイを連載されていました。それは、「今を生き抜く新しい知恵、鈍感力」というものです。

 わたしはこのエッセイにずいぶん、励まされました。なぜなら、私はそうとうな鈍感で、それがコンプレックスになっていたんです。でもそれは、新しい知恵だったんだって、安心して自信が出てきました。だって、あれだけ男女に敏感な小説をかいてきた渡辺さんが言うんですもの、鈍感は才能だと思えるようになりました。

 例えば、こんな話があります。皆さん、携帯電話を使いますよ。私も使います。音がうるさいから、マナーモードにしています。ぶるぶるでふるえるわけです。ところが、身につけていても私は、2回に1回は気がつかないんです。近くにいる人が、「なんか変ながしている?」って探すと私のポケットだったりして。鈍感でしょ。

 散髪屋さんで、眠る人いますよ。私も好きです。気持ちいいですからん。ところが、歯医者で寝る人いないでしょ。きーん、なんて音聞きながら、心配しながら、口あけますよね。私は、その状況で寝るんです。だから、歯科衛生士さんが「口あけてください」「口あけてください」てうるさく言うんです。

 また、こんなこともありました。電車の中で隣の人が読む新聞って気になるんです。ついつい、覗き込んで見ていたら、友達から、「おまえ同じ新聞もってるのに、なんでのぞくわけ?」と言われてはっとしました。鈍感でしょ。

 皆さん、あきれました?でも、これも力なんです。鈍感力なんですよ。

 では、鈍感の反対からも考えてみましょう。

 もちろん、それは敏感です。敏感なのはいいことでしょうか。もちろん、ケースバイケースです。しかし、良くないことが多いです。

 まず、健康について、敏感すぎると、絶対に良くない。ストレスをたくさんもらってしまいます。体が敏感だと、花粉症なんてなりやすいです。それに今年みたいに暑いと熱中症にもかかりやすいです。それに、敏感だと夜もじっくり寝られないなんてことになると本当に健康に良くない。

 また、仕事でもそうです。だいたいとんでもないのがお客様。お客様なんていつでも、「言いたい放題」ですよね。まともに聞いていたら、めげます。できる営業マンなんて言う人が本に書いています。「私は成功するまで訪問しました」これって、鈍感だからいけたわけでしょう。営業の格言にこんなのがあります。「ノーは営業の始まりだ」これなんか、鈍感じゃなければ言えない台詞ですよ。

 まだまだあります。人生で非常に大切なこと。それは、自分のパートナーを探すことですが、これも敏感だったら、ちょっと断られたらもう終わりになります。誰だって、そんなにすぐに「はい」って言えません。やはり、しつこく、しつこく、しつこく、鈍感に迫っていくんです。すると、「誠意を感じたわ」なんて言われるのです。もちろん、失敗したら、「ストーカー」なんて言われちゃいますけどね。

 皆さん、このようにこの世の中、鈍感じゃないと生きていけないんです。鈍感は力ですよ。才能なんです。これからの必須のスキルなのです。

 まわりを良く見てください。英語を勉強していますよね。相手の言っていることがわからないなんて悩んでいたら、勉強なんかできません。日本語を話していても、相手の話を聞いていなんですよ、現実には。

 まわりで元気のいいおじいさんおばあさんがいたら、よく見てください。間違いなく、人の話なんかきいてない。鈍感ですよ。だから、長生きです。

 では、どうするかって。私は、鈍感じゃないって?安心してください。明日から、ちょっとしたことでいいですから、やってみてください。

 例えば、通勤で、電車がきました。間に合いそうにないとなると、けっこう走るますよね。一人が走ると回りもつられる。だから、走らない。

 相手が話していることがわからなければ、気にしない、気にしない。もし、おこられたり、叱られたりしたも、こう思う。別に死ぬことはないわ。

 トーストマスターズのスピーチ? 忘れても気にしない気にしない。私もやりましたよ。ディビジョンBコンテストで。誰も覚えていないですよ。

 さあ、みなさん、これからの時代に必要なものは、英語力、対人力、そして、何よりも鈍感力です。そして、知っていましたか。トーストマスターズは鈍感な人が集まるところなんです。

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 このスピーチは、2014年に、日本語でのユーモアスピーチコンテストに出るために作成したものです。しかし、本番の日に用事が入ったので、予選出場も諦めた時に作りました。ユーモアスピーチなので、エンターテインするためのスピーチですね。どこかでまたやりたいなと思っています。そんな古いスピーチを今(2021年)にやりたいって? 鈍感でしょ!これ力ですよ!


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