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『極上の孤独』下重暁子著、幻冬舎新書

 この本のタイトルの「極上の」というのがいい。その言葉に誘われて本を読んだ。それに考えさせられたのは、自分をしっかりと見つめ、いつでも本当の自分でいる重要性だった。そのためには、下重は「独りの時間」が必要だと主張する。

 しかし今の世の中は一人でいるのは簡単ではない。時間を見つけては、FACEBOOKやLINEをチェックする。オンラインゲームをしたり、携帯でテレビを見る。単に一人でいればいいわけではない。インターネットに繋がったり、テレビやDVDなどを見ないで過ごすのである。

 下重暁子は単なる「一人」ではなく「独り」であることの意味を説く。「孤」の時間を持ち、自分としっかりと向き合い自分のことを考える。さらには、そんな行為を習慣にするのが重要だという。

 私は持てていない。しかし持ちたい。時間があると知らず知らずのうちに誰かとの「繋がり」を求めている。その態度を改めて、「独り」の時間を作りたいと考えた。どうすればいいのか。

まず問いかけてみよう

 そのためには下重暁子はこう言う。

「そうした『孤』の時間を持つことができているか、自分に問いかけてみよう。その上で少しでも、その時間を増やしていく。その努力なしには決して『個』は育たないし、魅力的にもなれない」(p27、第1章なぜ私は孤独を好むのか)

 そして、孤独上手になるための「一人練習帖」と彼女が呼んでいることを勧めてくれる。これは「一人の時間をいかに持つか、増やしていくかという勉強」(p28)だと言う。まず「テレビもラジオもスマホも消して、15分でもいい、10分でもいいから一人きりで自分に向き合って過ごそう」(p28、同上)と。それで周りを観察することから始めると良いと言うのだ。

 例えば「窓の外を見る。黄色くなった銀杏の葉が、風に吹かれて散っている。またたく間に道路に積もって、その葉を蹴散らしながら学生らしき一団が石段を降りてくる。銀杏の枝に葉のように張りついているのは鳥だ。青い色をしている。五、六羽はいるだろうか。あんな野鳥は見かけない。どこかで飼われていたのが逃げ出したのだろうか。少し大きめのサイズと、丸く大きな頭は間違いなくインコだ。都会では逃げ出した鳥たちが野生化して暮らしている。 そんな、とりとめもないことを考える時間から始めよう。心を遊ばせる。自分の頭で考える。私にとっては、もっとも贅沢な時間である。テレビを見ていたのでは気づかない。スマホでメールや電話していたのでは、決してえられぬ一時。それを豊かだと感じることが出来るだろうか」(p29、同上)

 このくだりを読むだけで容易に想像できる。これまで気づいていない、注意さえ向けていなかったものの中に、おっと驚くような事柄を見つけるに違いないだろう。そして、それは「豊かな」ことだ。

孤独は人を成長させる

 人は弱い。特に自分の考えがしっかりと固まっていないときに、周りから批判や意見を聞くと大きな影響を受ける。下重は、そんなとき、人に相談するものではないという。

「どうでもいいことなら相談するのもコミュニケーションの一つだが、大事なことは他人になど相談すべきではないというのが私のスタンスだ。最終的に決めるのは自分なのだから、まず自分で考え、意見を固める。その後で人に話すことがあるが、それはあくまで自分の考えの確認のためのである」(p43、同上)

 独りになって考える。そして考えを固める。そこに責任が出てくる。誰の人生でもない自分の人生なのだから。相談に乗ってくれる人はどんなに善意であっても、責任までとってくれはしない。だからこそ、自分で考えてやれという。

「やりたいことがあったら自分で方法を考え、実行に移すのだ。有名人だから、女優だから何でも出来るわけではない。誰もが自分がいる場所で戦っている。誰かが助けてくれるのを待っていたり、環境が変わるのを期待してはいけない。自分で出来る方法を、自分で考える。そのためにも独りの時間が大事である」(p101、第3章中年からの孤独をどう過ごすか)

 このくだりの前に、女優の野際陽子さんがピアノをほしいが、とても買える余裕がないときに、五百円貯金を思いつき、地道に貯金をしたという。そして最後にはグランドピアノを買った例をあげている。

 ここには、成功する黄金律が語られている。やりたいことを「自分でできる方法を自分で考えてやる」。そしてそのために独りにならないといけないという。

極上の孤独は成功への方法 

 私は「独り」になっていないなあと考えながら、窓の外を見てみた。私は横浜の日吉というところに住んでいる。そこは慶應義塾の日吉キャンパスがあることで有名だ。私の書斎からは、理工学部の学舎が見られる。そのまわりの木々の葉の色が変わってきている。秋から冬になっているのが歯の色から見てとれる。色は緑からかなり茶色になっている。まわりに見ていくと、日頃目にも止まらないものにも気づく。私はちょっと豊かになった気がした。こんなことからはじめていきたい。

 1日の中で、5分でもいいので、スマホもパソコンも、タブレットも意識しないで考える時間から作っていきたいと思った。私たちは、間違いなく、時間泥棒に相当な時間を盗まれている。だからといって、モモが活躍してくれるのを待ったり、期待しないで、自分でできる方法を考えてやるだけしかない。

 作家の森博嗣が夢を実現する方法は簡単だと、「ただ、毎日、その夢の実現のために何かをやり続けること」だと言っている。それは誰もが見ていなくて、誰も気づかなくても、やり続けるのだと、という話だった。ここでも「独り」で行動することが夢につながると言っている。

JUST DO IT ALONE! 

「極上の孤独」になれることは、成功の方法にちがいない。


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