凍てつきの戦乙女

「この急激な 寒さは…!」

「来たんだ…! ヤツが…!」

「に…逃げろぉ~!」

「もう 遅い!」

私は 一閃を放った。

すると 兵達は『そのまま』その場に 凍結保存された。

『凍てつきの戦乙女』。

それが 私につけられた『名前』。

冷華は 容赦なく 次々と その刃を 振るった。

この『フローズン・ブランド』を 両手に 幾つもの『心』を凍てつかせてきた。

数えきれないほどだ。

「そのまま 時を止めていろ。」

恐れ戦いた者達が 引き返していくのを 確認し その矛を収める。

「いつまで 続く…」

振るえば振るうほどに 拡がっていく『戦氷』は 止まることを知らずにいた。

終わらせようとする度に 溶解していく『戦心』は 冷華を 疲弊させていく。

『止める為』に抜いたはずの刃は『動き始める為』の刃に 曲解されてしまう。

もどかしさが募れば 募るほど その威力は 増してしまう。

「もういいはずなのに…」

渇いた願いは 辺りを包んでいる『氷点下』に 塞き止められてしまう。

先程まで 草原だった 大地は みるみるうちに 雪化粧をしていた。

「枯らす為じゃないのに…」

生い茂る平原を 守りたいのに。

ただ 平穏でいたいだけなのに。

未だ その『未来』は 曇ったまま。

「会いたいよぉ…明日南…」

かつての学び仲間の 名前が 漏れてしまった。

きっと 彼女なら どうするべきかを 教えてくれる。

そんな気がして。

でも ここにはいない。

切り開くしかないのだ。

この両手と『フローズン・ブランド』で。

終わりの見えない『痛み』との戦いが 待っている。

何度 この刃で 自らを 凍てつかせようと 考えたことか。

楽になってしまえば もういい。

葛藤が押し寄せる度に 浮かぶのは やはり 明日南の笑顔だった。

「消えないんだよ…」

あの言葉が。

あの仕草が。

「私達が 課せられた『宿命』は『運命』にだって出来るよ!」

幼き日に 放った 明日南の一言が 冷華の心を繋ぎ止めている。

「会いたい…」

今なのかもしれない。

この凍てつき始めた心を 溶かす為には。

冷華の歩む足跡だけが『凍結』されていく気がしていた。

※この作品は『Feryquitous』様の『Qavsell』という楽曲を 題材にしております。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?