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株式市場の本当の話 (日経プレミアシリーズ) 新書 – 2021/3/9

日経新聞の記者だった前田昌孝さんが書いた本。

彼の書いたコラムは非常に面白く暇つぶしには非常に良い。時折、とても参考になるインサイトがある。

本書では、第1章で、「バフェット流は正解か?」と題して、バフェットのイメージである、CFのしっかり生み出す会社をしっかりと取捨選択して、永久にホールドする、というのは本当の姿ではない、と言っている。

代わりに、実体は、それらの候補を選択購入し、ダメ(パフォーマンスが振るわない)だったら投げ売ることをうまくやっている投資家である、ということを、Form-13F(四半期ごとに、公開会社やファンドが所有する株式をSECに報告しなければならないフォーム)を分析して述べている。

つまり、当たらなければ投げ売る、見切りの早さが、バフェットの強みであることを述べている。

余談だが、バフェットは日本の総合商社株をバスケット買いしたが、ここから考えていくと、減配した住商あたりは真っ先に売られそうである。一方、彼の投資スタイルを分析していると思われる三井、三菱は自社株買いを発表しており、売られないようにする姿勢が見えるので、少なくとも、今のところは大丈夫そうだ。

第2章では、投資信託の事実について迫る。学術研究の示すところでは、インデックス買いが勧められる(アクティブ投信は、信託報酬分、マーケットを下回る)が、中には、インデックスを継続して上回る(信託報酬を払う価値のある)ファンドも想像以上に良くある、ということを示している。加えて、アクティブ投信が、ベンチマークとしてすべき対象を、本来配当込みのTOPIXとしなければならないところ、大手の証券会社でも配当抜きのTOPIXにして、投資家を欺いている実例が述べられている。

第3章では、公的年金の事実に迫る。国民の年金であるGPIFの成績について、落第点をつけるとともに、貸株停止について、市場機能を理解していないとして、厳しく論評している。GPIFが貸株を辞めて、我々の年金のリターンが落ちていることを国民のどれだけが理解しているのだろうか、ほとんどが理解していないだろう。

第4章、第5章、第6章、第7章で、長期投資のリターン、ESG投資、東芝で発生した議決権問題(株主総会の運営)について述べている。新聞のコラムの寄せ集めなので、散文的だが勉強になった。

前田さん自体は、株式投資をやっていない(記者なので内規で出来ない)ようだが、市場機能(空売りはいずれ買いに回る。日銀が市場で株式を買うと市場機能がマヒする)を活用して、活力ある資本市場を築こう、という立場の人で非常に面白いコラムだった。

著者の他の本も読んでみようと思えた。


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