頭に聴診器をあてられなくてよかった
統合失調症って、精神疾患のなかでも、妄想や幻覚とか謎なことが大きくて、ほんとうに目に見えなすぎて分からないからこそ、奇妙きてれつで不憫な患者像が作られてしまった最たるものの一つなんじゃないかなあと、当事者になってますます思うようになって、複雑な気持ちになるのです。
精神科医の大御所的存在(といわれている)に中井久夫さんという方がいるのですが、中井さんには「頭の中から声がするんです」と訴える患者の頭に聴診器をあてて診察した、という有名エピソードが残されているそうです。
残されてる、そうです……というのは、中井久夫さんをけっこう崇拝していると思われる精神科医の方が、そのうんちくエピソードを自分と重ねて誇らしげに語っているのをSNS上で目にしたからです。
わたしは二重の意味で、むなくそわるい気分になりました。
当事者として、患者をばかにするにもほどがあると思いました。少なくとも、患者を「対等」な「人」として扱っていないと思いました。
聴診器をあてられた患者は、頭に当てられて、それで気がすんだんでしょうか、どうだったんでしょうか。そのことについてはいっさい情報がないので、わかりません。少なくとも、中井さんはそんな自分に満足されたのでしょうが……。
同時に、自分の主治医がこんな人じゃなくてよかったと思いました。わたしの主治医は、声がすることを言っても、頭に聴診器をあててこないし、同じ人間として、耳を傾けてくれます。よかった。
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