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Canva を学校で利用するときに、同意は必要?

↓ の記事でも案内したように、Canva から Teacher Canvassador として認定していただけました。

「コミュニティモデレーター」という枠で選出されているのは、公式の教育者向けの Facebook グループの運営に関わってきたことなどが評価されたのだと思っています。これからも、できることをやっていこうと思っています! ということで、啓蒙活動のような記事を…


寄せられた質問

同じタイミングで「ローカルリーダー」として選出された的場功基さんから、以下のような質問をいただきました。
このやり取りは、他の方にも共有しておいた方がいいと思えたので、note で記事にして残しておきます。

今まで色々な方に聞いてきたことでグレーな部分があります。そこがもう少しはっきり理解したいなと思っています。

① 保護者同意についてです。 以前、オンライン研修会で「SSO」を使えば、保護者同意はいらないということを言われている方がいました。 教育委員会として、Googleアカウントをいろいろなところで紐づけるよ的な同意をとっていれば、それで良いという方もいました。 同意は口頭でも良いという方もいました。 利用規約には保護者同意が必要と書いていますが、結局のところ、「保護者同意をとらなくても良い」というパターンってあるのでしょうか?

② Mojo AIなど、Canva内のアプリ(別で連携をとるもの)の子供たちの使用制限ってどうなんでしょうか? また、マジックライトは制限があるとして、そのほかのText to Imageなど.... AIについても、聞く人によって回答が違って...利用規約も曖昧なところがあって、イマイチ理解しきれていないのが事実です。 まずは、よく質問にあがっていて、曖昧になっているこの2つについて、もし教えていただけるようでしたら、可能なら範囲でお願いします(T . T)

的場功基さんからの質問

以降は、的場先生とのやり取りの内容を再構成したものです。

注意事項

  • 以降の説明については、わたし個人の考えであって最終的な判断は、それぞれの組織(自治体、教育委員会、学校など)によって行ってください。

  • 参照しているそれぞれの利用規約や表記などは、記事を作成した 2023/09/17 時点のものです。

①保護者同意は必要なのか?

わたしの認識としては、保護者への同意はどのような形式なのかは別にして必要だと思っています。それは、利用する Canva が以下ののいずれであろうともです…

  • Canva for Education(教員個人による申請)

  • Canva for Education(組織による申請)

  • Canva Free(個人としての利用)

そして、実際に Canva 側がこの辺りをどのように考えているのかは、Canva のホームページ中で、以下のように記載されています。

利用規約を確認すると…

上記の URL は

Canva の利用規約

という感じで、日本語に言語設定された Canva のアカウントでログインしていても、日本語設定された Web ブラウザでアクセスしていても、英語で表示されます。

ここで逃げずに、ブラウザの翻訳機能を使って読み進めます。今回のような、児童生徒の利用について確認するときには、「歳」というキーワードで検索すると、児童生徒について留意しなければならない部分が見つけやすいです。

「歳」をキーワードに検索

上図のように、「2. サービスの利用について a.年齢要件」において、以下のように規定されています。

お子様は、本規約に拘束されることに同意した親、保護者、またはその他の権限のある大人 (教師など) によって直接使用が許可されない限り、サービスにアクセスしたり使用したりすることはできません。本規約の目的上、子供とは 13 歳 (または子供の居住国で個人データの処理に同意するために必要な最低法定年齢) 未満の人物を指します。

Terms of Use を日本語に翻訳したもの「2. サービスの利用について a.年齢要件」

あまり他のサービスでは見かけませんが、「その他の権限がある大人(教師など)」による同意でも構わない旨が含まれているので、この部分だけを見ている分には、保護者ではなく教師が使うことを許可していれば使ってもいいように見受けられます。

保護者の同意は必須?

この部分の記述の解釈によっては、

  • 13歳以上の中学生や高校生であれば、保護者の同意は不要

  • 保護者の同意がなくても、教師が許可していれば OK

とも読み取れますが、どのように判断するのかは、それぞれの組織の考え方次第だと思います。

少なくとも、この利用規約は「教員個人による申請」と「組織による申請」によって違うものではないため、 『「SSO」を使えば、保護者同意はいらない』 ということではないと思います。
SSO という言葉をどのように判断するのかにもよりますが、SSO によって同意が不要になるわけではなく、組織(学校や自治体)として、Canva の利用は問題がないと判断したかどうかだと思います。

また、そのように判断した場合であっても、相応のリテラシーや危機意識を持った保護者は、わが子が使用するアプリ/サービスについて確認し、前述の Canva の利用規約にたどり着くかもしれません。
その時に、組織と保護者の間でトラブルにならないよう、Canva の利用を子ども達の利用を許可したことを、組織から保護者へ周知・案内しておく方がいいんじゃないか、と思います。

②Mojo AIなどは?

次の質問については、前項の利用規約を「Text」で検索すると、「6. Magic Studio アプリの使用」という部分が見つかります。

Terms of Use を日本語に翻訳したもの「6. Magic Studio アプリの使用」

Canva 内の AI 搭載機能については、別の利用規約を定めるとあります。

AI についての追加の規約

上記の規約を確認すると、冒頭に

これらの規約は、 Text to Image 、Magic Write™ 、Magic Edit 、Magic Design 、およびTranslate ( AI Products )を含むがこれらに限定されない、Canva 内での AI を利用した製品およびツールの使用に適用されます。当社は、これらの規約を随時更新する権利を留保します。

AI Product Terms を日本語に翻訳したもの

と書かれています。また、下図のように OpenAI を利用していることも書かれていますが、この部分には児童生徒についての記述は見当たらないように思えます。

AI Product Terms を日本語に翻訳したもの

サードパーティ製のアプリ?

また、利用規約では「11. サードパーティのサービス」というのも規定されています。ここでの規定で重要なのは、

Terms of Use を日本語に翻訳したもの「11. サードパーティのサービス」
※「アプリ」でキーワード検索

サードパーティ サービスの使用には、そのサードパーティ サービスに適用される利用規約が適用されます。Canvaは、サードパーティサービスに関していかなる表明も保証も行わず、サードパーティサービスの使用から生じるすべての責任を明示的に否認します。

Terms of Use を日本語に翻訳したもの「11. サードパーティのサービス」

と、サードパーティ製のアプリについては、Canva の保証外であるというところです。

これはどういうことかというと、左側サイドバーに表示されている「アプリ」から実行するアプリについては、別の利用規約によって規定されるので、Canva の利用規約の範囲外ということです。

左側サイドバーに表示されている「アプリ」

実際に、質問にあった「Mojo AI」をアプリから利用しようとすると、下部に注意書きが表示されています。

「Mojo AI」のアプリを開こうとすると、下部に注意書きが!

ここでは、利用規約とプライバシーポリシーが「Mojo AI」を提供しているサードパーティのサイトにリンクされています。

Canva の利用規約と同様に、利用規約を「歳」をキーワードに検索すると、「2.サービス利用者の権利と責任 アカウント、アカウントの登録と削除」に以下のように規定されています。

Mojo AI の利用規約を日本語に翻訳したもの
「2.サービス利用者の権利と責任 アカウント、アカウントの登録と削除」

本サービスにアクセスすることにより、お客様は 13 歳以上であり、お住まいの国におけるデジタル同意の最低年齢要件を満たしていることを認めたものとみなされます。お客様の国でサービスにアクセスできる年齢に達しているが、当社の規約に法的に同意できる年齢に達していない場合は、お客様の親または保護者がお客様に代わって当社の規約に同意する必要があります。

Mojo AI の利用規約を日本語に翻訳したもの
「2.サービス利用者の権利と責任 アカウント、アカウントの登録と削除」

ここでは、Canva の利用規約とは異なり、「その他の権限がある大人(教師など)」といったものは含まれていません。それ故に、保護者の同意は必要と考えられます。

Text to Image は?

Text to Image についても、「Mojo AI」のようなサードパーティ製のアプリと同様に利用規約へのリンクが表示されます。作成者が「Canvaさん」となっているので、自社製アプリ(あまり、ファーストパーティと呼称しているのは聞きません)ですが、同じように表示されます。

Text to Image もサードパーティ製のアプリと同様に利用規約へのリンクが表示

Text to Image の利用規約は、前述の AI 製品についての追加の規約へのリンクとなっています。

既にアプリの利用を開始してしまっている場合でも、アプリの画面右上の三点リーダーをクリックして、「アプリの詳細」をクリックすれば、前述の確認画面が表示されます。

右上の三点リーダーから「アプリの詳細」

Text to Image については、「AI 製品規約」には年齢的な規定は見当たらないのですが、「対象年齢は13歳以上です」と書かれています。

対象年齢は 13歳以上?

他の方に聞いていると、Text to Image の説明に以前はこんな制限がなかったという人がいらっしゃいますが、「AI 製品規約」の冒頭にあるように規約を変更できる権限を留保する、あるので Canva 側で規約の変更が行えるだけに、規約そのものには変更が行われていないものの、説明書きが追加されたのだと思います。
まぁ、OpenAI の ChatGPT が 13歳未満を対象にしていないのが影響しているんでしょうね。

Google のサードパーティの扱い

このようなサードパーティ製のアプリについては、Google Workspace for Education でも同じように扱われていることが、以下 URL のヘルプ記事で説明されています。

Google は、保護者への同意を Google としては求めておらず、それぞれの組織のセキュリティポリシーに準じると規定しています。また、サードパーティ製のサービスについては、それぞれのサービスの利用規約に基づいた判断が必要になる点も同様です。

上記のヘルプ記事で「学校が保護者の同意を得るためのお知らせ用テンプレート」が例示されています。

このテンプレートでは、保護者への同意を求める際に、利用しようとしているアプリ・サービスを列挙し、案内するようにしています。

「Google Workspace for Education」の利用についての同意を求めても、具体的に「Google Workspace for Education」がどこまでを指しているのかをちゃんと理解している人は少ないのではないでしょうか?
Google が提供するサービスなので、YouTube や Google マップも含まれていると考える人も多いかと思いますが、厳密には「コアサービス」と「追加サービス」に分けられています。

保護者に同意を得る場合には、この Google のテンプレートのように、どこまでのアプリ・サービスを利用するのかを明示した上で、同意を得るべきなのだと思います。

まとめ

Canva の利用規約について、わたしなりにどのように解釈しているかなどをまとめてみました。最終的には、組織の判断になると思いますが、それぞれのアプリ・サービスの利用規約で、どのような内容が規定されているのかはチェックしておくべきだと思います。

ポイントとしては…

  • Canva そのものの利用については、学校側の判断で OK になるという解釈もあるように見受けられますが、追加のサードパーティ製アプリを利用することも考慮すると、保護者への同意は必須になってくるんじゃないか?

  • 日本語に翻訳したものを「歳」をキーワードに検索するだけでも、児童生徒に対する制限が見つかる。

  • サードパーティ製アプリはさらに追加される可能性もあるので、どのような形態で同意を得るのか、その同意を得る対象のアプリやサービスに追加があった場合にはどのように対応するのか、も検討しておいた方がいいだろう。

  • Canva も以下 URL のように必要に応じて利用規約を改定している。一度チェックして OK ではない場合もあるので注意が必要。
    Policy Archives(ポリシーアーカイブ)
    https://www.canva.com/policies/policy-archives/

といった感じです。いろんなサービスが簡単に利用できるようになっているのは便利なのですが、利用規約を丁寧に確認しないと、利用規約に違反することになるかもしれない点に注意してください。

ちなみに…
組織として Canva for Education を利用していたとしても、児童生徒がサードパーティ製のアプリの利用を制限する機能は、現時点では提供されていません。

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