ホイアンの街で思うこと。やっぱりわたし。
たしかに現実なのだけど。写真で見たこの景色は、ほんとうに存在したんだなあと、まるでひとごとのように眺めていた。
何が有名で、何が美味しいのか、物価や、過ごしやすい宿などの情報だけは、世界一周をしている方のブログから知っていたけれど、写真にうつるその風景を、どうしても自分の目で確かめたくて、気がつけばチケット購入ボタンを押していた。
ーベトナムはバイクの量が多くってうるさいらしい。
うんうん、噂どおり、みんな器用に乗りこなすんだね。
ービールが30円で飲めるらしい。
いやいや、それはさすがに……。わ、30円だ。
ー雑貨がカラフルでとっても可愛いの。
ほんとうだ、日本でも使えるデザインだね。
ー街全体が世界遺産で、夜にはランタンが輝くんだよ。
毎日?
ーーそう、まいにち。
どこを見ても、360°あたたかい灯りがゆれていて、ああ、きれいだなとポツリつぶやけば、すこしだけ胸の奥がチクチクした気がした。
写真でみた景色のなかに、立っている。間違いなく、自分の足で飛行機に乗り、バスを乗り継いで、この場所を地図で何度もなんども確認して歩いてきたのだから、夢でないことも、ましてや魔法にかけられているわけでもないことは、よく分かっていた。
今や、Wi-Fiがあれば、いつでもどこにいたって、つながれる。世界と、日本と。Twitterをひらけば、日本語がながれてくるし、インスタグラムには見知った顔がならぶ。
その事実は、日本をわすれるなよ、という呪文のようにまとわりつくけれど、でも、時にひどく安心することも本当で。
ひとりでいることは傷つかないけれど、やっぱりわたし。
うん、そうね、そろそろ無視できないかもしれない。
カフェで、語ることなく読書にふけるカップル。
窓辺で笑顔を見せあうマダムたち。
大きなカメラを構えるお父さんと、ポーズを決める女の子。
「誰か」と旅をすること。
無理だとおもって見ないフリをしていた。見ないフリをするから、余計にこころは引きつって、どうしようもない寂しさを連れてくる。だったらいっその事、認めてしまえばいいのだ。いや、もう認めざるを得ないのかもしれない。
そう。わたしは旅がしたい。
ひとりでなく、隣に誰かがいてくれたら、とてもいい。
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