feel ALOHA①
「まだ導かれてないんだよね」
「へえ。珍しいね。」
友人とそんな会話を交わしたのが2ケ月前。お酒を飲んで別れた後、さてどうしようかと考えながら寒空の中を歩いた。いつもだったら、もう行き先はきまっている頃だった。
それなのに今年は何も浮かばない。閃かない。見上げると、まんまるには成りきれていない月が光っていた。
ねえ、あなたは答えを知っているの?
なんて問いかけてみたりして。
旅をするときは、まるでその場に呼ばれたように導かれて、行き先が決まるのが常だった。第6感が開く感じで。こんなことを言うと周りの人は意味がわからないと気持ち悪がるけれど。
会社員をしながら旅をし続けてきた。仕事を休める期間は決まっている。早くしなくちゃ。チケットとらなきゃ。でもどこへ?興味のある国はたくさんある。それこそ数え切れないくらいに。
シンガポール?ううん、惜しいけど違う。モロッコ?うん、行きたい。行きたいけど今じゃない。クロアチア?そうね、ドブロブニクの世界に浸ってもいいかもしれない。けれど、そこに答えはない。
なんでだろう、なんでこんなに呼ばれないんだろう。
いつまで経っても答えが出ないわたしが決めたことは、原点に戻ることだった。スカイスキャナーを開いて、日にちと行き先を入力する。直行便で一番安いエアライン。
いつもとは違う行き先の決め方のせいか、今年の運勢が良かったせいか、この旅では何かが起こる予感がした。
わたしだけの空、ひとりじめ。
到着まで少し、眠ろう。
無事に着いた先は常夏の島、ハワイ。年に1回は来ているから、知らない土地に初めて訪れて踏み出す一歩のワクワク感はないけれど、それでも虹色の風を思いっきり吸いこんで、裸足で砂浜を歩けば、高鳴る胸はうるさい。
単純ね、と笑う頃にはすっかり心は、ここで良かったんだと落ち着いていた。
真っ青な海がオレンジに染まりゆく中、人々はそれをバックにポーズを決めて、目を細めては微笑み合う。ざざーんと繰り返し引いては返す波の合間に遠くから聞こえてくるのは、ウクレレの音。
ああ、なんて幸せなんだろう。
海も、空も、笑いあう人々も。聞こえてくる音や、感じる空気。
全てが暖かいその場所に、わたしがいる。
2016年は、散々な年だった。我慢の1年、辛い1年。本当にしんどかった。それでもどうにかこうにか乗り越えてここにいれる。わたし、頑張ったなあ。なんて気が大きくなるのもハワイマジックのせいにして。
明日はきっともっとステキな1日になる。ゲストハウスのラナイでハワイのビール、ロングボードをあおりながらそう思った。
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