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トクサネシティの”白い岩”を3か月探し続けた

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ポケモンが好きだ。

見た目がかわいい。音楽もかわいい。何よりストーリーがシンプルで子どもが困らないところも良い。

四天王の勝てそうもない場面でセーブしちゃっても、負けてさえしまえばポケモンセンターに戻れる。詰まない。

すごく親切だ。

僕は1995年生まれ(ポケモンの赤・緑版の発売は1996年)で、幼稚園くらいから身の回りはポケモンに溢れていた。同世代に「人生で最初に映画館で観た映画は?」と聞いたら、ほとんどが「ミュウツーの逆襲」と答えるはずだ。

そんなポケモン大好きなだった僕だが、ブラック/ホワイトというシリーズを最後に、しばらくゲームから離れてしまった。志望大学に落ちた僕は、滑り止めの大学で威張ろうと勉強ばっかしていた。それで、ゲームの時間は減った。

大学を卒業してもポケモンはやらなかった。しばらくやらないうちに見たことないポケモンが増えて、フェアリータイプなるものまで現れているらしい。なんとなく一度疎遠になった友人に連絡が取りづらいように、僕はポケモンソフトに、触れられなかった。


ブラック/ホワイト版 発売から10年が経った。


2020年9月。ポケモンのこれまでの歴史と魅力のエッセンスを抽出した最強のミュージックビデオ『GOTCHA』が公開された。

魂が突き動いた。

僕の薄っぺらい青春時代が何かの間違いで映画化されるなら、BUMP OF CHICKENに曲を書き下ろして欲しい。そう思うくらい大好なバンプが主題歌を歌っているこのMVは、何回再生してもシビれる。

とんでもない衝撃だった。そして同時に、

『僕は、こんなにもポケモンが好きだったんだ。この想い、なにかで表現したい』

そんな、どこまでも些細でくだらない夢が、生まれた。

☆☆☆

それから。ポケモンへの愛がくすぶってきた僕は、ポケモンの話題をなんとなく追うようになった。

高校生くらいの時に読んだポケモン都市伝説を読んだり、ポケモンの鳴き声を再生して「なつかしい~~」なんて言ったりしてた。

そんな怠惰なネットサーフィンを続けていると、ある定説を見かけた。

ポケットモンスターのマップは、現実の地図を模したものである

「へぇ~~~?」なんて言いながら適当に情報を追っていくと、すんごいことをしている人を発見した。

この御方、ポケモンの各地方をJRを使って周るなら?という視点で、現実の日本地図に置き換えているのだ。

例えば、ポケモン初代の舞台となるカントー地方を、先ほどの方が制作したマップと比較してみると、確かにそっくりなことが分かる。

カントー比較

←関東地区 / カントー地方→
(画像出典) もやもやドガース ポケモン世界紀行

噂を知っていたとしても、ここまで現実の地図に照らし合わせるのは相当な手間暇が掛かっただろう。先人の努力に敬礼。

この方についてもう少し調べてみると、どうやらこの「ほぼJRで周るタウンマップ」を作った当時から、 「生㌔P」という名前でポケモンファンの中では一目置かれる存在だったらしい。

それはそうと、自分がプレイしていたゲームが日本の地図だったなんて。ワクワクが止まらない。「そうそう! グレンタウンって”なみのり”で行く島だったよな~~」とか言って、楽しく眺めていた。

郷愁に駆られながら、特に大好きだったルビー/サファイアというシリーズのホウエン地方の地図を見てみる。

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この時、僕の視点はある場所に釘付けになった。

僕の住んでいる種子島に、トクサネシティと書かれている。

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スマホを持つ手に力が入る。その手から、冷や汗がにじむ。

トクサネシティ、トクサネシティ。何があっただろうか。思い出せない。

慌ててトクサネシティと検索する。

そこには、種子島にある”それ”と同じように、島の端っこに立派な宇宙センターがそびえ立っていた。

…………。


驚くべき事に、僕は今、トクサネシティに住んでるのだ。宮城県出身、トクサネシティ在住。格好良い。自分の経歴にコンプレックスのある人は、直ちにポケモンの舞台となった町へ移住すればいい。そして堂々と現住所に、「マサラタウン」と書いてやればいい。

そんな妄想をしながら、僕は密かに抱いた夢への道筋が見えた気がした。そうだ、種子島に居ることでしかできない方法で、「ポケモンへの愛」を表現しよう。

霧に隠れていた夢が、少し、顔を出した。

☆☆☆

一週間、「種子島に住む僕にしかできないこと」を考え続けた。だが、そうは言っても原作を覚えていない要素が多すぎるので、ゲームをもう一度プレイすることにした。流石に僕が小学生時代にプレイしたソフトは見つからなかったそうで、実家の兄からリメイク版の「アルファサファイア」を送ってもらった。10年ぶりのポケモンだ。

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懐かしい。懐かしすぎる。

3DSでプレイするリメイク版は、かつてよりずっと進歩しているはずなのに、その大切な部分は何も変わっていなかった。相変わらず弾んだ音楽もポケモンも可愛い。僕はこれまでの空白を埋めるように、夜中までゲームをし続けた。

そうして、プレイ時間30時間にして、ようやく種子島が舞台であるというトクサネシティに辿り着いた。

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トクサネシティを上から見たマップはこんな感じだ。平坦で左右に長く、右端の方は小高くなっており、そこに宇宙センターが位置している。

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トクサネシティの上面図 (画像出典) ポケモン王国攻略館


そのまま、Google earthで種子島の航空写真を表示する。トクサネシティと並べてみると、ぎゅっと左右を縮めるようにデフォルメはされているものの、かなり類似していた。
(種子島においても、宇宙センターはゲームと同じ位置関係にある)

手作り種子島比較


こちらは上空から見たトクサネシティ。右上の端に見えるのが作中の宇宙センターだ。

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やっぱり、トクサネシティは、種子島なんだ。

興奮を抑えきれず、トクサネシティのあちこちを走り回る。片っ端から話しかけたり調べたりする。

そんなトクサネシティ探索に興じていると、宇宙センターのすぐそばで、”あるモノ”に出会った。

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なんだこれ。

ざわざわざわ。

背筋に氷水を掛けられたようなものが走った。長袖を捲ると、両の腕には鳥肌が立っている。

あった。この岩、確かにあった。

一瞬で心が、頭が、タイムスリップする。横長のゲームボーイアドバンスを握ってプレイしていたあの日まで景色が遡る。

間違いない。原作にもこの岩はあった。

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そしてゲームをプレイしたことがある人にはすぐ伝わると思うが、この白い岩、とんでもないシロモノなのだ。

この岩を調べると「白い岩だ!」というテキストが表示されるものの、それ以外なにも起こらない。子ども心に、まだ何かフラグを立てていないのではないか?なんらかの条件を満たせば幻のポケモンが現れるのではないか?と邪推し、あらゆる噂が学校じゅうに席巻するくらいに思わせぶりなギミックだ。(実際には何の仕掛けもない!)

脳汁が湧き出た。いま脳をCT検査して断面を見たら、海馬の部分が燃えるように活性化しているだろう。

そして、改めてプレイすると分かるが、18年経った今でも、この白い岩の意味は、全く分からない

ドクン。

心臓が高く鳴る。その音が、喉元で響く。

この白い岩の謎を、舞台である種子島を巡って解き明かしたらーーー?


霧は晴れた。この「白い岩」を探し出す。これが僕の、ポケモン愛を表現する方法だ。

☆☆☆

夢の形を捉えはしたが、ここからどうしたらいいだろうか。

ヒントは、白い岩。

そして、この白い岩を憑りつかれたように魅入っているこの女の子だ。

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猟奇的な雰囲気すら漂わせている彼女に、おそるおそる話しかける。

すると、激しく有力な情報が得られた。

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ロケットが無事に飛ぶように……?

落ち着いて、ここまでの情報を整理しよう。

① 白い岩は宇宙センターの傍にある
② 白い岩はロケットが無事に飛ぶように願って置かれた
③ 白い岩は柵で四方を囲まれている(※リメイク版のみ。原作版に柵はない)

※③ 原作版に柵はなかった

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見た目と状況証拠、そして岩の虜になった証人から得られた情報だ。これらを頼りに、トクサネシティの舞台となった種子島で”白い岩”もしくはそのモデルとなったものを発見する。これが、僕の挑戦だ。


観光協会へ尋ねる

調査を開始する。まず第一に、そもそも僕が種子島へ移住してから1年も経っていない。もしかしたら知らないだけで、あの白い石は有名な観光スポットなのかもしれない。

その可能性を確かめるため、まずは種子島観光協会へ尋ねた。


「もしもし?種子島で有名な白い岩ってあります?」

「は?」

……声のトーンだけで、完全に何を言ってるんだこいつは?という意思を感じた。それも仕方あるまい。だって情報は、「トクサネシティの白い岩」だけなんだから。

電話で分からないならホームページで。種子島観光協会では、島の観光スポットを58箇所紹介している。念のためこちらをひとつひとつ覗いてみたが、例の「白い岩」に繋がるようなトピックはなかった。

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観光地でないとすると、なんなんだろう。無闇に聞き込みをしていたら、種子島という小さなコミュニティの中で、あっという間に僕は二次元と三次元を区別できない変質者になってしまう。何らかの捜査方針が必要だ。

そこで頼れるのは、やはりインターネッツ。巨人の肩の上に立とう。きっと何かヒントがあるはずだ。


しかし、こんな狂人チックな試みをやっている人間なんて、当然居なかった。

何か似ていることでもいい。ポケモンが好きで好きで仕方ない人ならば、ここまで検証してしまう無謀な人間に知恵を貸してくれるかもしれない。

「……あっ!」

一人の心当たりが閃き、ダメもとで連絡をしてみる。


そう、いるじゃないか。この記事で既に紹介した酔狂なポケモンファンが。


僕は迷わず、”ほぼJRで周るタウンマップ”を作った「生㌔P」へメッセージを送った。


生㌔Pに尋ねる

奇跡的に、僕が発見した生㌔Pさん(以下、生㌔P)の連絡先は生きていたようで、メールの返信が来た。そして生㌔P、僕の些細なポケモン愛が通じたのか、「白い岩が現実にあるか確かめたい」という泥酔者の戯れ言さながらの文章にも関らず、協力を快諾してくれた。なんと器の大きい。ポケモン好きに悪い人はいない。

ちなみに、僕は連絡をしてから知ったのだが、生㌔Pはポケモン愛がゆえに、ポケモンの性別ごとの「高さ」の違いを説明したり。

各ポケモンのネーミング・デザインモチーフの考察をしたり

大昔の攻略本の設定とポケモン図鑑の文章を照らし合わせてどこまで設定が活きているか検証したりしている。

要するに、僕の「白い岩を探したい」なんて検証は朝飯前。それよりも遥かに手間暇のかかる検証をこなした実績のある方と理解して良いだろう。


前提①:ポケモンのマップは本当に日本を舞台にしているのか?

生㌔Pは前提として、「ポケモンのマップが現実世界をモチーフとしているという根拠」のひとつとして、次の情報を提供してくれた。

「Pokémon GO」が初めて発表された会見において、原作ゲームの発売元である株式会社ポケモンの石原社長は、次のように触れている。

一方ポケモンは,北海道や関東,ニューヨークやパリといった,現実世界をモチーフとした場所を冒険の舞台としてきた
引用元はこちら

このことから、ゲームの舞台が現実世界をモチーフとしていることは断言できるだろう。

前提②:ホウエン地方の舞台は九州なのか

次に、ポケットモンスタールビー/サファイアの舞台であるホウエン地方が九州をモチーフとしているという点について。これも、生㌔Pがエビデンスを示してくれた。

ゲームのサウンドトラックCDのブックレットで、ルビー・サファイア制作当時ディレクターだった株式会社ゲームフリーク(原作ゲームの開発元)の増田順一さんがこう述べているとのこと。

(略)~ ゲーム画面が横長になったので、より遊びやすいように、九州をモデルにした地形を横にしてつくったのが、ホウエン地方です。
引用元は下画像

こちらがブックレットの資料。生㌔P、あなたは一体何者なんだ?

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前提③:トクサネシティの舞台は種子島なのか?

前提①と②から、ポケモンの舞台は日本で、しかもルビー/サファイアについては九州がモチーフであることが分かった。しかし、「トクサネシティの舞台は種子島である」という言及は、公式サイドによって断定されたことはないらしい。

つまり、①九州地方で、②本土から離れた島で、③宇宙センターがある。これらのトクサネシティの特徴が重なった唯一の場所が種子島であるから、モデルは種子島だろう、というのが導ける根拠の限界ということになる。


白い岩の探索について

トクサネシティのモチーフが種子島で確からしいという前提の確認後、本題の「白い岩をどうやって探すか?」というアプローチについて生㌔Pに相談してみた。

僕は「種子島の地図」と「トクサネシティの地図」を透過して重ね合わせて、本来”白い岩”があるはずの場所へ行けば見つかるのではないか?という愚直な想像していたのだが、当然ゲームではマップはデフォルメされている。そのため、正確に位置を割り出すことは困難であると指摘されてしまった。

実際にgoogle mapの航空写真とトクサネシティの画像を重ね合わせてみても、たしかにぴったり重なるはずもなく、これで「この場所にあるはずなのに、白い岩は見当たりませんでした」では煮え切らないだろう。

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また、原作版のトクサネシティのマップとリメイク版とのそれでも、ゲームデザインが優先されるため、当然テイストが異なってくる。これらのことから、マップの位置から白い岩の位置を割り出すのは不可能、というのが結論だった。

新旧トクサネシティ

←原作版トクサネシティ / リメイク版トクサネシティ→

こうして、「ゲーム上のマップから割り出して探す」という手段は断たれた。生㌔Pの助言により、場所ではなく、「開発者がトクサネシティに白い岩を置いた意味」から探るという方法を検討することにした。

意味から探る……意味から……。

ここで白い岩の手がかりを再掲しよう。

① 白い岩は宇宙センターの傍にある
② 白い岩はロケットが無事に飛ぶように願って置かれた
③ 白い岩は柵で四方を囲まれている(※リメイク版のみ。原作版に柵はない)

意味付けから探るとすると、やはり、あそこに行くしかないだろう。

そうして僕は、日本中の宇宙好きの憧れである、あの場所へ向かう。


種子島宇宙センターで探す

意味付けから探るなら、ここを調査する以外にないだろう。日本のロケットの殆どがここから打ち上げられ、国際宇宙ステーションへの物資補給、人工衛星の発射など数々の重要なミッションを遂げている「種子島宇宙センター」だ。

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件の感染症の影響で、館内の見学は完全予約制のうえ60分まで。このわずかな時間で何か白い岩のヒントを見つけようと、血眼になって宇宙センター内を探索した。

巨大な人工衛星や、

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各国のロケット、

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表面が白く見える惑星の模型など、

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あらゆる場所に「白い岩」もしくは、ロケット発射の成功を願って置かれた石に関する記述がないかを探したが、何も見つからなかった。どうしようもなくもどかしいまま、60分が過ぎ去った。


宇宙センター職員へ尋ねる

肩を落として出口へ向かう。万が一だが、見逃していたという可能性もある。ここまで来て見逃していましたでは、未来の僕が絶対に許さない。

また、あの白い岩に憑りつかれていた少女の話をちゃんと聞くと、こんな風に言っていたことを思い出す。

この 岩 って 宇宙センターの みんなに とって だいじな 岩なの
ロケットが 無事に 飛ぶように 願って ここに 置いたんだって!

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そう、宇宙センターのみんなにとって、大事な岩なのだ。

それも、原作版でも同じ事を言ってるじゃないか。

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だから、宇宙センターの展示にあろうがなかろうが知ったことではない。要は職員や宇宙センターに携わる人間にとって重要な岩があれば、それが白い岩なのだ。


決意した僕は、ダメ元で出口に構えるナイスミドルな男性職員へ質問をする

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「あの……つかぬ事をお尋ねしますが……」

「はい、なんなりと」

「ロケットが無事に飛ぶように祈って置かれた白い岩ってご存じですか?」

「は?」

撃沈した(観光協会ぶり2度目)。

もう、こうなると、なんの手がかりもない。

ここで諦めてもよかった。でも、なぜか僕の心がそうさせなかった。

大した努力もしてこなかった僕が、今だけ、この瞬間だけ、世界の誰よりもたった一つの岩のことだけを考えている。島中を、奔走している。


この努力は、途切れさせてはいけない。


これは僕の旅だ。何者でもない僕が、ポケモンというコンテンツによって、地球一くだらない夢を見ている。

この些細でくだらない夢の終わりは、僕が納得いく形でなければダメなんだ。


己の足で探す

熱い心とは裏腹に、頭は冷静だった。車に戻って冷たいジンジャーエールで頭を切り替える。再々掲となるが、白い岩の手がかりを示す。

① 白い岩は宇宙センターの傍にある
② 白い岩はロケットが無事に飛ぶように願って置かれた
③ 白い岩は柵で四方を囲まれている(※リメイク版のみ。原作版に柵はない)

このうち、宇宙センターの職員は全く知らなかったと考えると、あとは、②と③の手がかりから考えられないだろうか。

②を熟慮すると、ロケットが無事に飛ぶように……と置かれたということは、ロケット打ち上げを目視できる場所、もしくはそれに匹敵する場所ではないか?と考えらえる。そして、③に書くような特徴をしている岩があれば、それが”白い岩”だ!

宇宙センターを飛び出して、僕は島中を巡った。

宝満神社

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初めに来たのは神社だ。ここは宇宙センターが位置する南種子町(みなみたねちょう)にある神社。ロケット打ち上げを目視できる場所ではないが、「祈る」という性質から何らかの手がかりがあると考えた。

……と!神社の境内に向かう途中に視界の端に止まるものがあった。

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しろい いわ だ!

想像しているサイズに近い。その辺の岩や石の中で、こいつだけが白い。これは、意図的にこの場所へ置かれた可能性がある。

慌てて近寄る。白い。白いのだが……。

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柵もなく、特になんらかの説明書きもない

良く解釈すれば、ゲームの中でも白い岩の傍に説明書きの看板はない。よって、忠実に再現されていると言い張ればそうなのかもしれないが……。

誰かに、何かに、「これはロケットの無事を祈って置かれたんだ!」と言い切られなければ、これを白い岩だと断定することはできないと思った。そもそも、トクサネシティに神社はない。「祈りそうな場所だから」という主観に支配された理由では、決めつけられないだろう。

境内へ向かえば誰かいるかと思ったが、参拝客も神主も見当たらなかった。

こうして、宝満神社には、”白い岩らしきもの”があることが分かった。


恵美之江展望公園

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次に、手がかり②から想像出来る通り、「ロケットの打ち上げを目視できる場所」を巡っていく。ただ、この定義はもの凄く曖昧だ。種子島へ移住してきて僕も知ったのだが、山に遮られたりしなければ、島内のどこでもロケットが飛んでいくのは見える。なんなら、鹿児島県の本土からも見える。

場所が広がってしまっては元も子もない。「ロケットを目視するための場所」と定義を狭め、島内にある有名な展望スポットに狙いを定めることにする。

そこでやってきたのが、この恵美之江(えびのえ)展望公園。海を挟んだ先に見える建物が、発射場だ。

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町役場によって備え付けられた一番良い席は、ふるさと納税の返礼品になっている。なんというお値段。

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しかし、この展望公演にも、石碑や説明書きなどはなかった。

あきらめない。次へ向かう。

長谷公園

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次もロケット打ち上げを見られる有名なスポット、長谷公園へ。しかし、この日はあいにく天気が悪いうえに、申込制の花火大会があるという理由で中をゆっくり撮影できなかった。

係員の目を逃れながら公園内を調査したが、白い岩につながる情報はなかった。

花火大会に関わる沢山の人が集まり始める。皆が曇り空に不安の声を漏らすなか、僕だけが孤独に白い岩を思い、憂いていた。

宇宙ヶ丘公園

知りうる最後の展望スポット、宇宙ヶ丘公園へ。池や広場があるメインの公園。その道路を挟んだ反対側に、それは、あった

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四方を囲まれた柵。白い岩ではないが、ロケットを型取った碑。これは……これは……!

白い岩だろう!!!

これまでの痛み、苦労、努力、迷い。せき止めていたダムから放流されるように、色んなものが込み上げて来た。

ちっぽけな島の、ちっぽけな公園。こんなところで僕は、今にも男泣きしそうになりながら石碑に歩みを進める。

石碑の左手に見えるのは、JAXAが管理するレーダー。そしてこの石碑の真後ろが、ちょうど打ち上げ場。何も遮るものはない。まさに、打ちあがる最中のロケットの無事を祈るのに、ベストな場所だ。

感動しながら、その石碑の説明書きを見る。

そこには、悪い意味で予想を裏切ることが、書かれていた。

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天皇陛下が種子島をロケットの島としてお心にお留めになったことを心から感謝申し上げ、後世に伝える為に建立するものです。

なん、と。

……違かったのか。ここまで来て、こんなに似ていて、届かなかったのか。

この石碑の前で僕は、また振り出しに戻されてしまったのだ。

加えて、石碑の建立は平成24年。つまり、2012年だ。

原作のルビーサファイア版の発売は2002年。この石碑が建つ前に既にゲームには”白い岩”が登場していることから、直接的な関係は期待できないだろう。

ここまでの調査結果。時系列に説明をするとしたら、こんな感じだろう。

△…推測. ◎…事実
△2002年以前:なんらかの理由で”白い岩”の設置を開発元が目論む
◎2002年:ポケモンルビーサファイア発売 ”白い岩(柵なし)”の登場
◎2012年:宇宙ヶ丘公園にて記念碑が建立
△2012~2014年:開発元が建立した記念碑を知り、類似した柵の設置を決意
◎2014年:リメイク版が発売 ”白い岩(柵あり)”の登場

結局、肝心の2002年以前にあったであろう、開発元が「白い岩を置こう!」と思い至った理由にはたどり着けなかった。

あてもなく放浪する

種子島を彷徨う。始めに生㌔Pによって却下されていたマップのおおよその位置から探す方法を、曖昧に、惰性に繰り返す毎日。

こんなモニュメントにも。

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こんな畑にも。

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こんな海辺にも。

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どこにも、それらしき物はない。しつこいくらい贅沢な大自然を、もう勘弁してくれと言わんばかりに堪能する日々

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見つからない。見つかりっこない。

そんな日々を2カ月ほど続けて、ようやく僕は旅の終わりを意識し始めた。


旅の終着点

僕の足は、再びあの場所へ向かっていた。

そう、宇宙センター。

僕が、できることは、ココで、あれをやるだけ。

早々に入場。迷いのない足取りで二階へ。目的地は、「マイ人工衛星」ゲーム。


僕ができることは。

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僕に出来ることは、、

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僕に出来ることは……!!!

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せめて人工衛星ルビーよ。宇宙から僕へ、白い岩の場所を教えてくれ。

おれも、こっち(地上)で、探し続けるからさ。

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