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早くも馬脚を現した長崎県新知事/長崎日々日記

選挙公約とは破られるためにある。
大半の日本人が抱いている、それこそ「最大公約数的」お約束、ではないか。
「マニフェスト」なることばが、世を席捲したこともあった。
最近は聞かない。

選挙期間中、候補者は「きれいごと」を言うものサ。え? それって単なるスローガンだし、絶対守らないといけないとか、そんなもんじゃないよね。「公約」「コウヤク」って、守れって、真顔でとやかくいうアナタね、ほんとにニポン人? 政治ってね、そんなに甘いもんじゃないんだ、大人になろうよ。ね~ッ!

とりあえず、自虐、してみました。

もちろん、これは本末転倒。冗談、マイケル・ジョーダンです(死語)。
選挙期間中に候補者が掲げた公約をもとに、わたしたちは投票します。もちろん、政党政治を基本とする日本において、所属政党あるいは、その候補者を推薦・支持する政党がどこかも、投票行動を左右する重要な要因にはなりますが、「公約」こそ、政治家が政治家たる「一丁目一番地」。

2月20日の長崎県知事選挙で、僅差をしのいで現職を破り初当選した大石賢吾氏、39歳。3月14日に始まった県議会で所信表明演説、華々しいデビューを飾りました。

そして出た、長崎新聞17日付一面カタ(二番手)記事。
「平田氏を副知事起用か 教育長は中﨑氏ら浮上」
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=877006591073812480
(ネット記事をハリコしておきます)

あれ?
大石新知事、選挙期間中、「女性副知事の登用」を公約に掲げていなかったかな? 
素知らぬ顔して、早くも横紙やぶりか。
まあ、そんなもんだよな………っていうわけにはいかない。
ここはきっちり、指摘しておかないと。
虚空に消える、はかない叫びでしかないとしても。

じゃ、長崎県知事選挙で配られた、「ステルスチラシ(ビラ)」を紹介します。

大石賢吾ステルスチラシ表 2022 03 19note用写真

これ、告示後、選挙期間中に県内に「まかれた」ものです。
確か、選挙序盤から中盤に至る時期で新聞の折り込みとして、挟まれてきました。わたしが確認している新聞媒体は「長崎新聞」です。ほかの全国紙、ブロック紙については知りません。

冒頭に「長崎県知事選挙」の明示。黄色の円で囲まれ、最もアピール力ある「39歳、医師」の文字が目に焼き付きます。
だれが見ても、大石賢吾氏への支持を訴える選挙のためのチラシとしか思えない。

でも、なぜ、大石氏の肝心の顔写真が出てないの? それはこの「ばらまかれた」紙素材が、解釈次第で限りなく違法に近いビラであるためです。政治団体が私的に出した「オリコミちらし」の体裁をとっている、とりま、そんな位置づけです。

しかし、告示日後、ですからね。かなりの際どさ、否めない。
この手の選挙運動用ビラを、投票者に向けて頒布するためには、県選挙管理委員会への届け(提出と内容確認)、許可を経る必要、あるんだそうです。世界に冠たる(笑)、「縛りのきつい、緻密さを誇る」日本の公職選挙法が候補者の前には立ちはだかり、それに悩まされない候補者はいない、と聞きます。
であるにせよ。
常識ある政治家を目指すなら、ちゅうちょする類(たぐい)のしろものかと。

次の画像です。これは、大石陣営が顔写真付きで終盤、正式に配った選挙用ビラに貼付されていた「証紙」です。

大石賢吾選挙終盤チラシ表 2022 03 19 note用写真 選管証紙

見づらいかも。すみません。まあ、こういうものを貼っておく必要があるのは、選挙にかかわる人なら、知らないわけないらしい(恥ずかしながら、わたしは今回、初めて知った)。

ネット情報を拾ったところによると、大石陣営にはスゴ腕の選挙プロディーサーがついていて、陣頭指揮をとっていたらしい。このステルスチラシもその方がイニシアチブとって、まかれたものと考えて間違いないでしょう。

これね。
単に新聞のオリコミになっただけじゃない、もう、少なくとも、長崎市内では、「大手を振って」あちこちに、この”拡大版”が掲示されていたんです。

最も目立ったのは、市内開業医の医院玄関先。
長崎県医師会が全面的に、大石候補を支援、当選に至る原動力になったから。
世の尊敬を集めるステイタス高い「医者」の方々が、このような法律違反の論議を呼びかねない掲示物を臆面もなく表に出す、その見識の是非については、市民・県民の判断に任せられた、としておきましょう。

四つの黄色いオビになっている、コピー、目に飛び込みます。
どう見ても、大石候補の公約としか、思えない。
具体的なのは二つだけ。
「女性副知事・民間人材の登用」
「知事退職金(約3,144万円)辞退」

このうち、退職金辞退は、早々に果たされる見通しです。県議会の所信表明演説で大石新知事、高らかにぶちました。ただ、これ、1期目に限っての金額。「二期目もやるけど、それを要らないと言ってるわけじゃあ~ないよ」というふうにも、受け止めました。わたしの過ぎた邪推でしょう。

女性副知事のほうは、どうしたんでしょう。まだ県議会は開会中ですし、あるいは、二人目の副知事候補として、女性が予定されている可能性、ないとは言えません。京大卒の平田氏…現教育長を副知事にするという人事は、現段階では「新聞辞令」にすぎませんから。

権力者の力の源泉、それ、人事権でしょ?
首相が決まって、すぐ次に話題になるのは、官房長官をはじめとする司令塔を誰にするか、自民党役員を刷新するかしないか、組閣人事をどうするか。

地方自治体でいうと、副知事、副市長(助役)…トップを支える人選ね。これ最重要。だから、「女性副知事の登用」は、大石県政の目玉になるはずの、何よりのシンボルたりえるんです。

それを早々に反故にしてきたというね。
脱力ということば以外の何物でもない。
本来、大石候補を知事として推し、投票した人は、その違背行為に怒るべき。オレ、大石さんに入れてないけど。
新聞辞令どおり人事案が議会に上程され、承認されるとしたら、もう「信頼できない人」認定です。

いやいや。
みなさん。
ちゃんとカラクリはあるんですよ。無問題。
これね。
大石新知事からすると「え? 公約とか、どこに書いてます?」というエクスキューズ、見事にできる仕掛けになっているんです。

このステルスビラの裏に明記された「自民党長崎県連・日本維新の会推薦の新人知事候補公約」の活字。
14項目にわったてますが、「女性副知事の登用」なんて、どこにも、ない。
表のきれ~なオビだって、「公約」とか打ってませんよね。

じゃ、これ、何?
うん。もう、わかるよね!
「フィッシング」、「釣り」です(笑)。
大石新知事が女性副知事のために尽力する、死力を尽くして県政のチェンジを果たしてくれると思って投票した、アナタ。
釣られましたね?
残念。
釣られたアナタが悪いんです。

大石新知事、選挙終盤で、公職選挙法に基づいた、証書付き(※先に写真掲載した)選挙運動用ビラでも、「まったく同じ手口」を使っているんです。
その正式ビラの表をまず紹介。
顔写真が入っただけかな。ステルス版と違うのは。
あ、失礼、プロフ自慢が出色かも。

大石賢吾選挙終盤チラシ表 2022 03 19 note用写真 (1)

続いて裏も載せますね。

大石賢吾選挙終盤チラシ表 2022 03 19 note用写真 (2)

興味ある方は、ざっと見、してください。
この正式版運動ビラの裏と、ステルス版の裏の公約列記は、全く同一です。

(おおいし、つぶやきます)
だからね。
女性副知事登用、「できたら、いいネ!!!!!」という、わたしのフェミ愛をみなさんにシェアしたわけですよ。
羽生結弦にも劣らない爽やかさ、フェアプレー愛するラガーマン。
そんな知事って、すてきと思いませんか。
(おわります)

つまらないことに目くじら立てて、眉をひそめるような人間、つまり筆者のような人間は、時代に取り残されていくのだろう。
異議あり。
政治への信頼、失くしたくない。

百歩譲ろう。
女性副知事登用に、大石新知事は奔走したのだろう。
しかし、求めに応じてくれる女性がいなかった。
やむを得ず、県職員幹部から選ぶという、無難な人事になってしまった。

それはそうかもしれない。
石木ダム建設をどうするか、果たして建設推進を続け、強制代執行をかけて、いま、そこに暮らす住民13世帯50人を追い出すのか。
その課題ひとつとっても、副知事として矢面に立たされるシーンを想像しただけで、まともな神経している女性なら、やんわりと、しかし断固として拒否するのがフツウと思うから。

自民党県連の、利権に聡い、じゃなかった、県政を真剣に考える保守本流の人たちが新人・大石候補、現職・中村候補にわかれて、激戦を繰り広げた今回の知事選。

確定投票結果
大石賢吾 39 239,415票
中村法道 71 238,874票
宮沢由彦 54   46,794票
2候補が23万票を獲得、大石候補は541票差の薄氷勝利だった。
この僅差の数字を謙虚に胸に秘め、掲げたこと、訴えたことの実現に尽くしてくれると、期待があった。本人もこの票差を「重く受け止める」という趣旨の発言を当初、していたと記憶する。

繰り返しになる。
「公約」は、破られるから「公約」なのか。
これを裏切りというのは、稚気、世間知らずのたぐいなのか。

あれほどモメたはずの県議の間で、このことに対して、大石新知事を追及する声は聞こえてこない。

もう、これもお約束だし、触れる意味さえないかと思われるのだが、新聞・テレビも、同じ。沈黙して恥じるところもない。

この副知事人事の新聞辞令は、もうかなり信ぴょう性高い情報と考えられる。
長崎新聞の独自ダネっぽい。
長崎新聞は、地の利を生かして、降版時間が最も遅く、ゆえに最後まで競り合った確定票も確実に掲載して、県紙としての責任を果たした。

ただ。
僅差541票については、触れていなかった。
これだけの激戦ならば、大石候補の当選を一面横の主見出しでとって、次に「541票差」の事実を入れたソデ見出し、事実上の主見出しにもなる、この選挙の核心部分について、特大活字で報道するのが本来の在り方だ。
この「541」という数字の見出しが、開票結果を伝える21日付、そして22日付、いずれにもなかった。

新聞制作の常識を打ち破る、紙面展開。
「541」という数字を無視したというのは、根拠なき指摘にすぎないのか。偶然? ミス? 意図的? 何のために?
大石新知事にすれば、なかったことにしたい数字かもしれない。

わたしは、この報道スタイルに沿って、今回の人事報道を俯瞰したとき、たぶん、この通りにコトは運んでいくものと推察する。議会で議論されることなく、批判するメディアもなく、事態は「粛々と」進む。

大石新知事、さっそくのお手並み、拝見いたしました。

長崎県の革新にまい進。
選挙期間中に放った数々の矢は、まさにイメージ、過去のこと。
いつまでも、こだわらない。
そのつかみどころのない、若いけども、さとったふう、一見のんきそうな表情と、平気で「ガチ押してくる」ギャップに不穏なものを感じる。

新知事、大丈夫なのか、任せて。


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