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地域プロジェクトの最前線~大崎町~【対談シリーズ②/大崎事業チーム 井上雄大】

前回からスタートした合作のメンバーとの対談シリーズ。2回目は、大崎事業チームの井上雄大さんです。合作が大崎町で具体的にどんなことをしているのかと合わせて、"合作らしさ”を感じてもらえたら嬉しいです。

※この対談シリーズは、広報チームも加わって実施。少しでも雰囲気や言葉のニュアンスも伝わればと思い、対談部分は会話形式でお届けします。


人生の大半を占める”仕事”を再考、社会をよくすることに繋げたい。

齊藤智彦(以下、齊):はじめましての方が多いので、まずは雄大さんの自己紹介をお願いします!

井上雄大(以下、井):2022年に合作に入社し、主に大崎町SDGs推進協議会の仕事に携っています。出身は長野県、大学は金沢、最初の就職は京都、転職して南相馬(福島)、今は大崎町(鹿児島)で働いています。
最初は臨床検査会社で事務系総合職として働き、その後の南相馬では移住と起業支援を行う事業に携わりました。

齊:事務系総合職から地域のお仕事への転職ですが、雄大さんはなんで“地域”の仕事に携ろうと思ったんですか?

井:実は最初から地域に興味があったわけではありません。
最初の就職活動に遡ると、そもそも「自分がやりたいことを仕事にする」という視点がなく、求められたことをやるのが仕事だから安定した職を…という思考で就職しました。

いざ働いてびっくり、「仕事ってこんなに人生の大部分を占めるのか!」と。これは自分が打ち込めることを仕事にしないと厳しいぞと(笑)
そこでようやく自分にとって仕事ってなんだろうと考え始め、なにか社会をよくすること、自分が意義を感じられることに時間を使いたいと思うようになりました。
大学で学んでいた『社会学』を通して社会問題に関心があったので、その軸で探し始めたときに出会ったのがNext Commons Labです。まちづくりや地域でプロジェクトを起こすことを事業にしている組織で、その先に描く社会像に共感して転職しました。そこで地域をフィールドにすることになったという経緯です。

大崎町での合作はここがおもしろい!

齊:なるほど。ではそんな経緯で地域に携わるようになった雄大さんは、今大崎町で何をしているのか?大崎事業チームの活動紹介をお願いします。

井:大崎事業チームでは官民連携事業のプロジェクト企画とマネジメントをしています。官=大崎町(役場)は、約25年間積み上げてきたリサイクルの歴史があり、他の自治体と異なる魅力があります。そんな町と連携したいという民=民間の事業者も多くいらっしゃるので、その間を繋いだり連携プロジェクトの支援を行ったりしています。

連携プロジェクトの難しさでもあり肝だと思うのは、ちゃんと両者の目的や想いが重なる部分でプロジェクトを起こすこと。両者がきちんと責任を果たすことではじめて、持続的ないい成果が生まれてくるので、そこに重点を置いて調整やマネジメントを行っています。

齊:ありがとうございます。では、雄大さん的イチオシ!プロジェクトを3つ教えてもらえますか?

1.国立環境研究所との合作(共同研究事業)

井:国立環境研究所との共同研究プロジェクトです。
このプロジェクトは、廃棄物処理の専門家に入ってもらい、大崎町の取り組みが環境面・社会面・経済面でどんな効果が出ているのかの調査研究を行っています。

齊:研究者との連携は僕が 1番最初にやりたかったプロジェクトなので、それを挙げてくれると嬉しいですね!
大崎町はすごくいいことやっていると思うし、世界の役に立つと思うけど、それを本気で広げていこうと思うと大崎町だけじゃできない。企業や外部の力を借りないといけないけど、そこに対して説明できるだけの材料が全然揃っていなかったんです。
本当に環境にいいのか、むしろ逆に悪いところもあるんじゃないか?これらを科学的に検証できないと広げていくには無責任だし、企業とも連携できなくなってしまう。だからエビデンスを集めたかった。

井:そうですよね。このプロジェクトがすごいなと思うのが、共同研究は結果的に国立環境研究所の研究予算の中で行われることになったことです。大崎町の取り組みがすごく特異だったからこそ、それが研究の対象になると判断され、予算を確保して調査研究を進めていただいている。
大崎町のこれまでの歴史があってこそという大崎町らしさが活きていますし、調査研究の内容が大崎町にもフィードバックされ、よりよい取り組みに活かされる。地域プロジェクトとしてすごく面白いと思っています。

齊:なるほど。そういった視点だったのですね。確かに国の機関の研究対象になっているというのは大崎町ならではですよね。
大崎町は研究フィールドとしてすごく面白いので、研究者や企業で研究開発を進めたい人たちが集まってくれば、面白い人が集まる地域になると思っていたので、そういう意味でも進めたかったプロジェクトですね。

齊:このプロジェクトでは、どんな“合作”が特徴だったと思いますか?自分たち合作株式会社がいたからできたこと、などありますか?

井:それで言うと逆にともさんに聞いてみたいことがあります。僕は契約締結後に入社したので、以前のnoteでともさんが"契約を大切にしている"とおっしゃっていた部分、最初の契約段階でどんな調整や苦労があったかを知りたいです。

齊:おお、逆質問いいですね、対談っぽいですね。
契約のところはそんなに苦労はなかったです。 国立環境研究所なので共同研究にもちろん慣れてらっしゃるので、契約自体はスムーズでした。
ただ、そこで1番工夫したポイントだったなと思うのは、 僕らだけで国立環境研究所と連携しなかったこと。コーディネーターに環境学の博士号を持ち、温暖化の研究に従事していた大岩根さんに入っていただいたことなんですよね。
なにかというと、僕らは環境系の専門家ではないので、研究者と話をしてても対等に話せない。研究結果の精度がどれぐらいのものなのか測る尺度を持ってないんです。逆に言うと、そのせいで研究者側が二の足踏まれても困るので、普段だったら僕らが通訳係になるところを、あえてさらに通訳を入れるみたいな、そんな設計にしたのは大きなポイントでした。


2.メグルカグプロジェクト

井:2つ目はメグルカグプロジェクトです。近隣地域の学校家具をアップサイクルする取り組みで、更新で廃棄が出てしまうものを我々で引き取って、リユース及びアップサイクルしてくれる方々の手に渡すプロジェクトです。

協議会の活動は、やっぱりちょっと分かりづらい部分がありまして…でもこのプロジェクトはすごくわかりやすかった。リサイクルよりもリユースの方が環境負荷は低く、資源循環やリサイクルの次のステップであるアップサイクルを進めているということを、大崎町や地域の方々に理解してもらいやすいプロジェクトになったなと思っています。

齊:そうですね。なんかこう、褒められる機会が多かった感じがしますね。

井:はい、それがすごくチームの励みにもなるので、いいプロジェクトになっているなと感じています。

昨年は、学校から廃棄となった机と椅子、それぞれ100個ずつが対象でした。募集をかけて2‐3ヶ月で全て引き渡しが完了となって、需要があることもわかりました。
そして、特に新しく開所される放課後等デイサービスで使いたいという引き合いが多かったんです。リユース品を導入してもらうことでハードにかける費用を節約し、より子どもたちへのソフト面の支援に予算やパワーを割けると思います。たまたまでしたが、そのようなところに使ってもらえたのはすごくよかったねとメンバーでも話していました。

3.大崎町SDGs推進協議会 外部評価委員会

井上:これはプロジェクトではないかもしれませんが…最近行った、外部評価委員会の設置です。大崎町SDGs推進協議会の活動に対して外部評価をお願いするもので、外部の方3名に委員となっていただき進めています。

いいなと思うポイントは2つあって、まず1つ目は、外部評価が定款で定められていて、ルール上やらざるを得ないようにしてあることです(笑)
外部評価は重要ですが、普段の業務に専念しているとなかなかやろう!と考えが至らない、やろうと思っていても日々の仕事に追われてできないことも多いと思うのですが、それがきちんと義務として定款に定められていて、やらざるを得なくて動き出しました。この仕組みはポイントだなと思います。これはどういう意図で定款に盛り込んだんですか?

齊:官民連携の組織って、自作自演みたいになっちゃうとよくないと思っていて。
役場や協議会を構成してくださっている他の組織に対して僕らが企画をして提案から運営もやるとなると、どうしても僕らに権力が集中してしまうじゃないですか。そうすると、やっぱり公平性やガバナンス、組織運営の透明性みたいなところが欠落してるような組織になってしまいがち。 ちゃんと厳しいルールを作っておかないと信用してもらえないし、自分たちが好き勝手に事業を運営するようになってはいけない、律する必要があると思うんですよね。 
そういう意味で、この協議会を作るときに、運営規約や定款にすごい注力して作りました。3ヶ月~4ヶ月ぐらいずっと司法書士とやり取りして「こういうルールを入れたい」といったコミュニケーションを取って作成しました。なかなか大変でした(苦笑)

井:そうだったんですね!
おかげで重い腰をあげて取り組めました(笑)でもそれがいい場になっているなと思うのが2つ目のポイントで、外部の目線が入ることで整理されたり、気づかされたりすることがあります。
そして、第三者から指摘や提言をもらう方が、すっと入ってくることがあるんですよね。例えば、普段同じことを協議会から役場に話してもなかなか受け入れられなかったことが、外部から言われることで効果的にそのコメントが受け入れられたり…誰が言うか?が変わると、受け取る側も捉え方が変わることを目の前でみれる機会にもなって、外部の視点を入れる、外部からのフィードバックの効果をすごく感じています。協議会の仕組みや、官民連携の座組のつくり方に関わってくる部分ですよね。

齊:この辺はまさに合作株式会社が苦労、工夫して設計した仕事ですね。
定款にあるからやらざるを得ないという部分はあると思いますが、この外部評価がちゃんと機能していると現場の第一線にいる雄大さんが感じてくださっているのは嬉しいですね。

この定款では、もし外部評価や、理事会での評価が悪かったら契約が打ち切りになると定めています。公平性、フェアネスを担保したルールにしないといけないよねということを盛り込みました。それがちゃんと機能してよかったです。
ルールに定めていなかったら、日々の慌ただしさに負けて振り返りをおろそかにしてしまいがちですが、それをちゃんとできたことは次の3年間に向けていいステップになりましたね。

井:はい、そう思います。

齊:二者間だとなかなか聞いてもらえないことも、第三者から言ってもらうと違うみたいな話もあるあるですね(笑)ちゃんと外部評価の仕組みが機能してよかったです。事業として何をやっているかだけでなく、合作の仕事としてこうやって紹介できるのはおもしろいです。

地域プロジェクトの面白さと目に見えない仕事の価値

齊:ここまでは雄大さんに具体的にどんなことをしているのか?を知ってもらう意味でベスト3を聞きました。ここからは会社全体に関わることも聞いていきたいのですが、改めて雄大さんはなんで合作株式会社に入社してくれたんですか?

井:一言で言うと、課題感を共有できたからですね。
前職でもとみさん(合作株式会社 取締役の西塔大海)と知り合っていて、合作(株)のことを知っていました。採用説明会でともさん・もとみさんのお話を改めて伺ったときに、僕が南相馬で仕事をする中で感じていた課題感を共有できた感じがしたんです。

具体的に言うと、官民連携の難しさなんですが、本当にうまくコーディネートしないと長く続かないんですよね。先ほど言った「連携プロジェクトの難しさ」の部分で、例えば連携したいと言ってくださった企業側のためだけになるようなプロジェクトにしてしまうと、地域側が疲弊したり、消費させられてしまうことがあります。逆に地域側がやりたいことだけでは、企業側がそこに予算や人を出せなくなるので続かない。その課題感はお二人も感じていらっしゃると思いましたし、それを乗り越えていくための仕組み・体制づくりをすごく考えた結果のこの協議会と合作株式会社という、事務局・受託企業の仕組みであることを聞いて、次のステップに行けそうだなと感じて入社を決めました。

齊:こうやって聞くと、改めて初心を思い出しますね。共通に感じていた課題感、 僕は特に大崎町役場に出向で入った時にものすごく感じていました。

企業と自治体の連携はうまくコーディネートしないと地域が消費されることが多い。言葉は悪いかもしれませんが、大崎町もそうなりそうだなと危機感を感じていました。僕が大崎町役場に出向で入り始めた2019年頃は大崎町の注目度が上がってきた頃で、当時の大崎町は、新しく大手企業が連絡くれるだけで嬉しいみたいな状態で。
ただ、全部が全部ではないですが、企業側は自社にとってプラスになることを優先しますから、地域を利用しようとしているだけじゃないかみたいな提案もたくさんありました。そこはちゃんと間に入って、地域を消費しようとする企業は追い返さないと、大崎町の利益になることを守らないとと強く感じましたね。

井:大崎町でもあったんですね。

齊:そうですね。双方の利益に繋がるようにしないと連携はうまくいかないけど、それって簡単にできることじゃないよなと感じていたことを思い出しますね。今ではもう大崎町は企業が来ることに慣れて、ちょっとやそっとでは驚かなくなってしまいましたけどね(笑)

井:もう1つ合作(株)に惹かれた理由があります。
官民の間をつなぐ折衝役にちゃんと予算をつけて運営していこうとしているところに惹かれました。
南相馬で活動していく中で、調整役、間に入ってコーディネートするポジションがすごく必要だと感じていましたが、 なかなかそういう部分に予算をつけづらい課題感を感じていました。 例えばデザイン業務・ライティング業務など成果物が見えやすい業務は、 行政に予算申請しても、補助事業とかでも予算項目に出てきやすいんです。外注しても理解されやすいし、説明がつきやすく、ちゃんと払われる。
でも「プロジェクトをマネジメントする」とか、統制・折衝するみたいな仕事は具体的な成果が見えづらく、予算がすごくつきづらいと感じていました。でもこれがないと回らない、絶対に必要だって思っていたところで合作(株)に出会った。
「協議会と合作(株)の仕組みは、マネジメントにちゃんとお金が回る仕組みを作っているし、 そこに担当社員がつけられるように、給与として支払える体制を会社として作っています」と説明された部分はとても印象に残っていて、すごく可能性を感じました。

齊:そうですね、実際に僕らはそういった点に創意工夫してやっていますし、雄大さんみたいに可能性を感じてもらえてありがたいですね。 
とは言っても、やっぱりご理解いただけないところには伝わらなくて。分かりにくいことをやってるから、この予算はなんだと色々言われたりすることがありますけど…しょうがない。僕らがやらなかったら結局分かりやすいことにしか予算がつかなくなっちゃいます。ここは僕らが踏ん張らないとだめですね。ついつい心が折れそうになる時もありますけど…。

いいチームをつくりながら山を登りたい。

齊:最後に、雄大さんがこれからやりたいことってなんですか?

井:シンプルに言うと、<いいチームを作りたい>ですね。
大きいことを言うと、幸せな社会、幸せだと感じる人が多い社会みたいなものが本当の究極の理想だとして、その「幸せ」に、<いいチームでいい仕事をする>が繋がってると思っていまして。

齊:うん、大事ですね。

井:具体的にこういう事業をしたい、このテーマを深めたいというのは強くないのですが、何かそのテーマに取り組む、目指していくプロセスには、関心やこだわりみたいなものがあります。そこに向かう歩み方、それを実現していく時のチームのあり方や関係性が良い状態であることに関わっていたい。自分もその一部に所属していたいし、いいチームで達成するその景色を見たいと思っています。

齊:ありがとうございます。実は雄大さんには何度も聞いている質問なんですが、いつも同じ答えが返ってくる。雄大さんはチームづくりや、プロセスをいいものにしていくことに力を注ぎたいんだなとよく分かります。
合作(株)には、具体的なものをつくる人、つくることに興味がある人と、どちらかというと整えるというか、チームづくりやマネジメントに興味がある人がいて。僕ともとみくんで言うと合わせる担当・つくる担当みたいな、それぞれのキャラクターや関係性を活かして色んなことにチャレンジできるようになってきたなと思います。 雄大さんの理想とするチームもどんどんつくってもらえると面白いですね。


対談を終えて

雄大さんとの対談では、創業者である自分と大海くんが大切にしている合作株式会社で言うところの’’合作’’の在り方や価値というものを、社員である雄大さんなりに丁寧に解釈して価値として感じてくれているということがとても嬉しく感じました。

自分たちは合作という言葉に複数の意味合いを乗せています。社名としての合作という言葉もあれば、手段・手法・在り方・コンセプトとしての合作があると思います。
自分の中での’’合作’’は’’協力’’とは異なる意味を込めています。一人じゃ出来ないから、集まって協力して何かをするというと、ある意味当たり前のことかと思われるかもしれません。でも、個人の集まりでも多様な主体の集まりでも、足し算を目指すのか乗算を目指すのかで意味合いは大きく変わると思っています。僕らは本質的に異なる主体が集まって成果を出すことは簡単ではないと思っています。1+1がちゃんと2になることすら難しいという話を良くします。1+1のつもりが、結果はなぜか1にすら満たない協働関係も多いと思っています。そこを乗算的に成果を出していくのが’’合作’’の目指している在り方です。
改めて合作という会社、合作というコンセプトが広がって行けば良いなと感じられる対談でした。ありがとうございます。

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