あの旗を。


土の香り、
空への憧れ、
草木の揺れ、
虫の息吹。

僕を取り囲む眩しく美しい世界は、
いつから離れていったのだろう。
いつから見えなくなったのだろう。

見えてるものは変わってない。
変わったのは僕の背丈だ。心だ。

土が離れ、
空が近づき、
草木に見慣れ、
虫を同じ生き物だと思わなくなった。

これは成長か試練か退化か。

僕を見下ろす大人の目線に、
言葉にならない闘争心と、
それに対する誇りを持っていた。

「絶対にツルッとした大人にはならない。」

そんな漠然とした誓いの旗を
胸に突き立て生きていた。

「大人は」とか。
「世の中は」とか。
「多くの人は」とか。

巨視的な立場で自分の非力さを隠そうと、
他責にしようと必死だった。

背丈が伸びるにつれて、
薄れていったあの闘争心。
同時に僕の生命力も薄れていった。

土にまみれ、
空に手を上げ、
草木と戯れ、
虫を愛でる。

大人たちを睨み付けていた時の
あの未熟さとほとばしる生命力と。

もう一度共に居たい。

折れてしまった旗竿を、
セロハンテープでぐるぐる巻きにしてさ、
ちぎれてしまった旗を、
裁縫セットで取り繕ってさ、
胸に突き立てよう。




ともですっ、最後までご覧頂き本当にありがとうございます^^